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6 討伐大会編
0-0 精霊の国の守護者たち
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ここは精霊の国。
精霊の加護厚いエルメンティア王国。
この国の人は皆、自分たちの国のことをそう呼んで称えている。
摂理の神エルムの加護たっぷりの国なわけで、エルムが司る自然の力、竜や精霊の力に満ち溢れているのは当たり前。
精霊魔法を扱える人も全王国民の約七割と、うじゃうじゃいるからなんだけど。
精霊の加護が厚いんじゃなくて、あくまでも摂理の神エルムの加護が厚いだけ。
それでもって精霊魔法を扱える人がうじゃうじゃいるだけ。
それなのに、うちの王国は精霊に愛されているのよ、と自慢げに「精霊の加護厚い……」なんて言うようだ。
そんな精霊の国の守護者といえば、もちろん『竜種』。
人間だけど精霊力を持ち、頑丈で頑健、腕力も強く、基本的な能力は常人を凌駕する。いわば超人とも呼べる存在、それが『竜種』だ。
摂理の神エルムの加護を受け、エルメンティアだけでなく世界を守護する役割を持つ彼らは、本能に素直で、欲望に忠実。
上位竜種が持つ権能も人間の欲を表現したような物騒なものが多い。
そのうえ、伴侶に対する執念は常軌を逸しており、一度、目をつけられたら逃げられないそうな。
私、クロスフィア・クロエル・ドラグニールも、目をつけられて、気がついたときには逃亡不可能な状態にまで陥っていたひとり。
破壊の赤種として覚醒する前から、目をつけられて、気がついたら伴侶の本契約も婚姻署名もすべて済んだ後だった。ありえない。
夫は上位竜種最強と呼ばれている黒竜のラウゼルト・ドラグニール。
第六師団の師団長を勤めている熊のような大男。ちょっと強面だけどキリリとして格好いい。そして中身は、誰もが知る立派な変質者。それが私の夫だ。
その変質者を正常範囲内に押しとどめるのが竜種の伴侶の仕事、と聞かされて、おもわず納得してしまった。
正直なところ、伴侶の本契約で縛られようが、破壊の赤種が持つ権能の方が強いので、契約を破壊することはできる。
実行しようとは、これっぽっちも思わないけど。
なんだかんだ言っても、私は夫を大切に思っているし、ずっといっしょにいたいと思っている。
言葉にするのは恥ずかしい。でも、言葉にしないと伝わらない。
向こうは、毎日全力で好きと愛してるを伝えてくれるので、私も真似をして少しずつ伝える努力を行っている。
なにより夫は、私が赤種であってもそうでなくても、技能なしだろうがなんだろうが、心から愛してくれているのだ。
破壊の力を怖がって精霊が一切寄り付かない性質の私に、唯一、べったりとくっついているのが、精霊の力を持つ人間だなんて。少し前には考えられないことだった。
そもそも精霊魔術の技能を持たない、技能なしである私が愛されて幸せに暮らしていること事態、奇跡だと思う。
こんなことを言えば、赤種の一番目で、私の話し相手のテラが、年齢に似合わない渋い顔をして、言うだろう。
「惚気はほどほどにしろ、バカ夫婦」
私が夫と喧嘩でもしようものなら、世界が滅びるから仲良くしてろって言うくせに。
まぁ、こんなラブラブ全開で変質者な夫だけれど、上位竜種なのには変わりなく。他の上位竜種三人と力を合わせて、世界を守っている。とても頼りがいのある夫だ。
夫以外の竜種を誉めると、夫がムッとするので、言及はできないけど。他の上位竜種もそれぞれが、それぞれの場所で力を発揮していた。
国境を守る金竜、浄化の力を持つ銀竜、精霊魔法に長けた紫竜、上位竜種最強の力を持つ黒竜。そして、上位竜種を影に日向に支える普通竜種たち。
エルメンティアの人々が、穏やかに健やかに暮らせるように。
エルメンティアに集う精霊が、自由に気ままに存在できるように。
竜種たちは今日もまた、世界の平穏を守っているのだ。
さらにその竜種の存在そのものが、エルメンティアの人々に安心を与えていた。畏怖される赤種とは反対に。
畏怖される破壊の赤種、蔑まれる技能なし、そんな私にも安らぎを与えてくれる夫は、今日もエルメンティアのために、全力を尽くしている。
ここは精霊の国。
精霊の加護厚いエルメンティア王国。
竜種に守られ、平穏と安寧を満喫できる。技能なしへの偏見はあっても、暮らしやすさは周辺国随一。
だからこそ、エルムへの感謝と尊敬を忘れない、そんな国。
精霊の加護厚いエルメンティア王国。
この国の人は皆、自分たちの国のことをそう呼んで称えている。
摂理の神エルムの加護たっぷりの国なわけで、エルムが司る自然の力、竜や精霊の力に満ち溢れているのは当たり前。
精霊魔法を扱える人も全王国民の約七割と、うじゃうじゃいるからなんだけど。
精霊の加護が厚いんじゃなくて、あくまでも摂理の神エルムの加護が厚いだけ。
それでもって精霊魔法を扱える人がうじゃうじゃいるだけ。
それなのに、うちの王国は精霊に愛されているのよ、と自慢げに「精霊の加護厚い……」なんて言うようだ。
そんな精霊の国の守護者といえば、もちろん『竜種』。
人間だけど精霊力を持ち、頑丈で頑健、腕力も強く、基本的な能力は常人を凌駕する。いわば超人とも呼べる存在、それが『竜種』だ。
摂理の神エルムの加護を受け、エルメンティアだけでなく世界を守護する役割を持つ彼らは、本能に素直で、欲望に忠実。
上位竜種が持つ権能も人間の欲を表現したような物騒なものが多い。
そのうえ、伴侶に対する執念は常軌を逸しており、一度、目をつけられたら逃げられないそうな。
私、クロスフィア・クロエル・ドラグニールも、目をつけられて、気がついたときには逃亡不可能な状態にまで陥っていたひとり。
破壊の赤種として覚醒する前から、目をつけられて、気がついたら伴侶の本契約も婚姻署名もすべて済んだ後だった。ありえない。
夫は上位竜種最強と呼ばれている黒竜のラウゼルト・ドラグニール。
第六師団の師団長を勤めている熊のような大男。ちょっと強面だけどキリリとして格好いい。そして中身は、誰もが知る立派な変質者。それが私の夫だ。
その変質者を正常範囲内に押しとどめるのが竜種の伴侶の仕事、と聞かされて、おもわず納得してしまった。
正直なところ、伴侶の本契約で縛られようが、破壊の赤種が持つ権能の方が強いので、契約を破壊することはできる。
実行しようとは、これっぽっちも思わないけど。
なんだかんだ言っても、私は夫を大切に思っているし、ずっといっしょにいたいと思っている。
言葉にするのは恥ずかしい。でも、言葉にしないと伝わらない。
向こうは、毎日全力で好きと愛してるを伝えてくれるので、私も真似をして少しずつ伝える努力を行っている。
なにより夫は、私が赤種であってもそうでなくても、技能なしだろうがなんだろうが、心から愛してくれているのだ。
破壊の力を怖がって精霊が一切寄り付かない性質の私に、唯一、べったりとくっついているのが、精霊の力を持つ人間だなんて。少し前には考えられないことだった。
そもそも精霊魔術の技能を持たない、技能なしである私が愛されて幸せに暮らしていること事態、奇跡だと思う。
こんなことを言えば、赤種の一番目で、私の話し相手のテラが、年齢に似合わない渋い顔をして、言うだろう。
「惚気はほどほどにしろ、バカ夫婦」
私が夫と喧嘩でもしようものなら、世界が滅びるから仲良くしてろって言うくせに。
まぁ、こんなラブラブ全開で変質者な夫だけれど、上位竜種なのには変わりなく。他の上位竜種三人と力を合わせて、世界を守っている。とても頼りがいのある夫だ。
夫以外の竜種を誉めると、夫がムッとするので、言及はできないけど。他の上位竜種もそれぞれが、それぞれの場所で力を発揮していた。
国境を守る金竜、浄化の力を持つ銀竜、精霊魔法に長けた紫竜、上位竜種最強の力を持つ黒竜。そして、上位竜種を影に日向に支える普通竜種たち。
エルメンティアの人々が、穏やかに健やかに暮らせるように。
エルメンティアに集う精霊が、自由に気ままに存在できるように。
竜種たちは今日もまた、世界の平穏を守っているのだ。
さらにその竜種の存在そのものが、エルメンティアの人々に安心を与えていた。畏怖される赤種とは反対に。
畏怖される破壊の赤種、蔑まれる技能なし、そんな私にも安らぎを与えてくれる夫は、今日もエルメンティアのために、全力を尽くしている。
ここは精霊の国。
精霊の加護厚いエルメンティア王国。
竜種に守られ、平穏と安寧を満喫できる。技能なしへの偏見はあっても、暮らしやすさは周辺国随一。
だからこそ、エルムへの感謝と尊敬を忘れない、そんな国。
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