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4 騎士と破壊のお姫さま編
5-0 お姫さまはすべて薙ぎ倒す
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「最後に、家族運です」
「家族運?」
占い師の告げた言葉を聞いて、私は、はて?と思った。そして、思ったことが言葉になる。
「さっき、夫婦運と子宝運は聞いたけど? 他にもまだあるってこと?」
「家族としての夫や、夫以外もすべて含めてです」
あぁ、夫婦や子どもだけじゃなく、両親や兄弟姉妹、親族なんかも含めてってことか。
私にはラウ以外に家族なんていないから、そういう家族もあるってことに気が回らなかったわ。
それに。
確か、ラウにも家族はいない。
ラウの両親はラウの力に耐えきれなかったと聞いた。だから、私はラウのたったひとりの家族になる。
そんなことがあるからこそ、ラウはより一層、私に執着するんだ。二度と家族を失わないようにと。
私はチラッと肩越しにラウを見上げた。
ラウの表情はいつもと変わらない。
「ァア? 俺もフィアも自分たち以外の家族はいないぞ」
表情は変わらないけど、イライラしたような口調。
自分たち以外に家族がいないのは事実だけど、そんなことを思い起こしても、楽しいことなんて何一つない。
イライラ感が増すだけだ、今のラウのように。
イラつくラウに対して、占い師は冷静に応じる。荒ぶる心を宥めるように。記憶を呼び起こすように。
占い師の目の前の水盤も、小刻みに震えて小さな波紋をいくつも生み出していた。
そこに手を当て、すっと沈ませると、大きな波紋を残し、残りの小さなものはすべて消えた。
「親や兄弟のような存在はいますよね」
「…………まぁ、そうだな」
心当たりがあったようで、ラウのイライラが止まった。
ラウは訓練所に入るまでは、金竜さんにお世話になっていた。ラウにとって金竜さんは親みたいなものなんだろう。
よく会話の中でも、金竜さんの話が出てくる。金竜が言っていた、金竜に教わったと。
ラウの話からすると、竜種の常識とやらをラウは金竜さんから一から教え込まれたようだけど。
教えられた内容というのが、とんでもないものばかりで唖然としてしまう。
ラウの親が金竜さんだとすると、私の場合はテラかな。デュク様もそうかな。見た目は子どもと猫だけどね。
「そういった関係もすべて含めての家族運です」
「それで?」
私が結論を催促すると、占い師はふと、首を傾げた。
「あなたの家族は複雑ですね」
「複雑」
「古い家族と別れ、新しい家族と出会います」
古い家族か。
グランフレイムの家族は、もう、家族とも思えないので、元家族って言い方をしている。
「古い家族と言いましたが、元の、前の、昔の、過去の、どの言い方でもいいです」
「どの言い方でもいいの?」
「はい。すでに今のあなたから切り離されていて、家族というより他人のように感じるのではないですか?」
「あ」
その通りだった。元家族と言うのもなんだか、しっくり、こなくなってきて。ただの他人のように感じていた。
私の感覚、どうなっちゃったんだろうと思っているところだったんだ。
そうか。切り離されているんだ。
もう、何も繋がっていないんだ。
私は下を向いた。何かが胸の中にじわっと広がる。
「古い家族とは誤解や擦れ違いが多かったようですが、すでにあなたからは切り離されています。気にするのは止めましょう」
「うん、そうだね」
気にしても、もう、どうにもならないよね。と、気持ちを切り替えたところで、占い師が気になる言葉を発した。
「新しい家族は隠し事が多いようです」
「隠し事!」
何それ!
新しい家族って、ラウとテラだよね!
デュク様も入るかな?
ラウもテラもデュク様も、私に隠し事をしてるってことか。
でも。
隠し事と言う言葉に、ラウはピクリとも反応しなかった。
ただただ、私を優しく抱きしめているだけ。
きっと、ラウにしてみれば、隠し事は隠し事ではないんだ。
「あなたが傷つかないように、あなたに嫌われたくなくて、あなたを守るため、すべての隠し事の中心にはあなたがいます」
私はラウに抱きしめられながら、占い師の言葉をぼーっと聞いていた。
占い師の言葉は私の推測を肯定するものだった。ラウもテラも、デュク様まで、隠し事をすることで私を守っているんだろう。
でもね、私だってそんなに弱くない。
守られてばかりの存在ではない。
「私、そんなに弱くないけど? それでも隠すの?」
ちょっとだけムッとして、占い師の言葉に反論したけど。
なぜか、占い師は口角を上げ、ニコリと笑った。相変わらず、目はフードに隠れているので、目まで笑っているかは分からない。
それでも、目も笑ってるような気がして、不思議と心が落ち着いてくる。
「心配するしないは、相手が強い弱いには関係ありませんよ」
占い師は話を続けた。ニコリとしたまま。
「心配してくれる人がいる。それを忘れないようにして、今のあなたを生きてくださいね」
私のすべてを見通すような言葉を最後に、占いは終わりとなった。
「家族運?」
占い師の告げた言葉を聞いて、私は、はて?と思った。そして、思ったことが言葉になる。
「さっき、夫婦運と子宝運は聞いたけど? 他にもまだあるってこと?」
「家族としての夫や、夫以外もすべて含めてです」
あぁ、夫婦や子どもだけじゃなく、両親や兄弟姉妹、親族なんかも含めてってことか。
私にはラウ以外に家族なんていないから、そういう家族もあるってことに気が回らなかったわ。
それに。
確か、ラウにも家族はいない。
ラウの両親はラウの力に耐えきれなかったと聞いた。だから、私はラウのたったひとりの家族になる。
そんなことがあるからこそ、ラウはより一層、私に執着するんだ。二度と家族を失わないようにと。
私はチラッと肩越しにラウを見上げた。
ラウの表情はいつもと変わらない。
「ァア? 俺もフィアも自分たち以外の家族はいないぞ」
表情は変わらないけど、イライラしたような口調。
自分たち以外に家族がいないのは事実だけど、そんなことを思い起こしても、楽しいことなんて何一つない。
イライラ感が増すだけだ、今のラウのように。
イラつくラウに対して、占い師は冷静に応じる。荒ぶる心を宥めるように。記憶を呼び起こすように。
占い師の目の前の水盤も、小刻みに震えて小さな波紋をいくつも生み出していた。
そこに手を当て、すっと沈ませると、大きな波紋を残し、残りの小さなものはすべて消えた。
「親や兄弟のような存在はいますよね」
「…………まぁ、そうだな」
心当たりがあったようで、ラウのイライラが止まった。
ラウは訓練所に入るまでは、金竜さんにお世話になっていた。ラウにとって金竜さんは親みたいなものなんだろう。
よく会話の中でも、金竜さんの話が出てくる。金竜が言っていた、金竜に教わったと。
ラウの話からすると、竜種の常識とやらをラウは金竜さんから一から教え込まれたようだけど。
教えられた内容というのが、とんでもないものばかりで唖然としてしまう。
ラウの親が金竜さんだとすると、私の場合はテラかな。デュク様もそうかな。見た目は子どもと猫だけどね。
「そういった関係もすべて含めての家族運です」
「それで?」
私が結論を催促すると、占い師はふと、首を傾げた。
「あなたの家族は複雑ですね」
「複雑」
「古い家族と別れ、新しい家族と出会います」
古い家族か。
グランフレイムの家族は、もう、家族とも思えないので、元家族って言い方をしている。
「古い家族と言いましたが、元の、前の、昔の、過去の、どの言い方でもいいです」
「どの言い方でもいいの?」
「はい。すでに今のあなたから切り離されていて、家族というより他人のように感じるのではないですか?」
「あ」
その通りだった。元家族と言うのもなんだか、しっくり、こなくなってきて。ただの他人のように感じていた。
私の感覚、どうなっちゃったんだろうと思っているところだったんだ。
そうか。切り離されているんだ。
もう、何も繋がっていないんだ。
私は下を向いた。何かが胸の中にじわっと広がる。
「古い家族とは誤解や擦れ違いが多かったようですが、すでにあなたからは切り離されています。気にするのは止めましょう」
「うん、そうだね」
気にしても、もう、どうにもならないよね。と、気持ちを切り替えたところで、占い師が気になる言葉を発した。
「新しい家族は隠し事が多いようです」
「隠し事!」
何それ!
新しい家族って、ラウとテラだよね!
デュク様も入るかな?
ラウもテラもデュク様も、私に隠し事をしてるってことか。
でも。
隠し事と言う言葉に、ラウはピクリとも反応しなかった。
ただただ、私を優しく抱きしめているだけ。
きっと、ラウにしてみれば、隠し事は隠し事ではないんだ。
「あなたが傷つかないように、あなたに嫌われたくなくて、あなたを守るため、すべての隠し事の中心にはあなたがいます」
私はラウに抱きしめられながら、占い師の言葉をぼーっと聞いていた。
占い師の言葉は私の推測を肯定するものだった。ラウもテラも、デュク様まで、隠し事をすることで私を守っているんだろう。
でもね、私だってそんなに弱くない。
守られてばかりの存在ではない。
「私、そんなに弱くないけど? それでも隠すの?」
ちょっとだけムッとして、占い師の言葉に反論したけど。
なぜか、占い師は口角を上げ、ニコリと笑った。相変わらず、目はフードに隠れているので、目まで笑っているかは分からない。
それでも、目も笑ってるような気がして、不思議と心が落ち着いてくる。
「心配するしないは、相手が強い弱いには関係ありませんよ」
占い師は話を続けた。ニコリとしたまま。
「心配してくれる人がいる。それを忘れないようにして、今のあなたを生きてくださいね」
私のすべてを見通すような言葉を最後に、占いは終わりとなった。
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