精霊魔法は使えないけど、私の火力は最強だった

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4 騎士と破壊のお姫さま編

3-0 隠者はお姫さまを惑わして

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「それでは次は恋人運、結婚運に行きましょうか」

 そう言いながら、占い師はまたもや水盤に手をかざした。

「うーん、恋人も結婚も間に合ってるんだけど」

 チラッと背後に視線を送る。恋人で夫のラウはべったりくっついたままだ。
 これを見てもなお、恋人運と結婚運を語ろうというのか、占い師。

「これも占いの定番ですよ。しかも定番中の定番」

「まぁ、それなら」

 ラウを示唆するような結果が出て終わりだよね。よく当たるというのが本当なら。

 問題は、違う結果が出た場合だ。

 きっと、占い師はこの世から消える。

 私は両手をギュッと握りしめながら、じーっと水盤の様子を窺う。
 本当に水盤で占いやってるのかは、まったく分からないけどね!

「ではまず」

 水盤の水が暗いものに変わった。
 水が暗いって変な聞こえ方をするかもしれないけど、本当にそうなったのだ。

 ちょっと待って。

 暗い=悪い結果?

「男性運が最悪ですね」

 はぅぅぅっ。やっぱり悪い結果だ。
 あれ? 今、占ってるのって。

「男性運?」

 恋人運や結婚運じゃないの?

「恋人や夫になる男性の運です」

 なるほど。ってやっぱり悪い結果だ。

「男性運が最悪って?」

「嫉妬深くて独占欲が強く粘着質の男性にばかり、好かれて執着されます」

 それってラウのことだよね。
 ん? 男性に、じゃなくて、男性にばかり?

「え、まさかの複数?」

「安心してください。最終的にはおひとりですよ」

 安心できるか!

「それ普通だよね、恋人も夫も普通はひとりだけだよね」

「いちばん嫉妬深くて独占欲が強く粘着質で執着する男性が勝ち残って、恋人となり、そのまま夫になりますので」

 安心できないやつ!

「後ろの方が勝ち残る男性ですね」

「………………………………………………。」

「一途で常にあなたにベッタリと纏わりつきます。あなた以外はゴミムシに見えていますので、浮気はありえません」

「ゴミムシ」

「男性運は最悪ですが、結果的には理想の旦那様で安心ですね」

 安心? どこが安心?
 それ、この状態見て、よく言えたね。

 ラウはさらにべったりと私にくっついている。勝ち残る男性と言われて、機嫌は上々。

「…………………………………………他には?」

 占い師は水盤に手をかざすと、また、変わった。今度は水が明るくなる。さっきとは真逆だ。

 どういう仕組みになっているのか視ようとして、身を乗り出すと、それに合わせてラウが私の身体を後ろに引く。

 で、けっきょく視えない。

 まぁ、いいや。後でテラに聞いてみよう。テラなら占い魔法みたいなものも、知ってるかもしれない。

「夫婦運ですね。ケンカをすることもありますが、概ね、結婚生活は順調です」

 順調か。それはいい。
 私はラウを振り返って、互いににっこり笑い合う。

「というか、夫となる男性が最強の粘着質なので、あなたを絶対に手放しません」

 だろうね。知ってる。
 ヒクヒクしながらも、顔はにっこりを崩さず、ラウと見つめ合う。

「夫婦円満の秘訣は、お互い、自分の思っていることや考えていることを、素直に相手に伝えること」

「夫婦円満」

「不安や不満があることほど、どう思っているか、どうしてそう思ったのか、正直に伝えましょう」

 なんだか、占い結果を伝えているというより、人生相談のようになってる。

 それから、明るかった水の色が急に元に戻った。

「子宝運ですが、これは恵まれません」

「赤ちゃん、できないの?」

 何気なく口にする占い師に対して、私はびっくりして、大きな声で叫び返してしまった。

 子宝って赤ちゃんのことだよね?
 赤ちゃんに恵まれない、だなんて。そんな残念なことってある?

 私は棒で頭を殴られたような、衝撃を受けた。

「ご存知ないんですか?」

「その話は後でしようか、フィア」

 目の前の占い師は首を傾げる。
 背後のラウからは落ち着いた声が私にかけられた。

「あんなに頑張ってるのに?」

「その話も後でしようか、フィア」

 ラウが呻くように付け足した。
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