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2 新人研修編
2-9 室長という仕事
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「エレバウト! さっきから呼び出してただろう! 何してる! 鑑定が大量にたまってるんだ! さっさと戻れ!」
いったい、これで何度目だろう。
今日も頭痛と胃痛が襲ってくる。ため息はとうにつき果てた。
私の名前はオルダン・エアシャール。
第一塔鑑定室の室長を拝命して三年。
ようやく、人並みに業務がこなせるようになったと思っていた。
第一塔長に呼び出され、直々に、とんでもない指示を受けるまでは。
第一塔長は鑑定技能超級で、上級の人間からすると、人を超えた、神に近いお人だ。
いずれは大神殿の神官長を引き継ぐのではないかと噂に聞く。
赤種の一番目、バーミリオンのクロエル様とも懇意にされているそうだ。
クロエル様と言えば、クリムゾンのクロエル様が、現在、塔長室に勤務していらっしゃる。
そのクリムゾン様に、なんと、うちのエレバウトが二日に一回は絡んでいると、知人から耳打ちされた。
「エレバウトちゃん、ドウにかしないと、マズいんじゃなーい?」
頭が痛い。
そこにやってきたのが、神に近いお人、第一塔長からの指示。
「エレバウトをどうにかしろ」
胃も痛い。
部下の管理もまともにできていなかっただなんて。
「ソレより、ソノ、すさんだ顔! ちゃーんと寝ないと仕事にならないわよー!」
もう言葉もない。
それ以来、睡眠はしっかり取るようにしたが、頭痛薬と胃薬が手放せない毎日を送っていた。
「あら室長、レディに対して少し失礼ではないかしら」
胃痛と頭痛の原因は、非常に自由な発想の持ち主だ。それだけでも頭が痛いのに。
「業務の速やかな遂行を優先させたまでだ! だいたい、資料室に用はないだろう!」
ああ言えばこう言うし。
こう言えばああ言うし。
毎回毎回、呼び出されたり注意されたりを繰り返しているのに、まったくもって懲りることがない。
非常に強靭な精神も持ち合わせている。
「あら室長、室長こそ他に業務がおありでしょうに。こんなところにいらして、よろしいのかしら」
それは君のせいだろう!とは、さすがに言えないので、
「君の業務の管理も、私の業務だ!」
とでも言っておく。間違ってはいない。
そのうえ、胃痛と頭痛の原因は、非常に人情に厚く正義感が強い。
おかげで他にもあちこちとのトラブルが絶えず。胃が悲鳴をあげている。
「あら室長、クロエルさんは就職したばかりで、お友達がいらっしゃらないんですのよ!」
だから、どうした?
友達がいなくとも、特級補佐官の同僚がいれば十分だ。
「ですから、このあたくしが積極的に話しかけて差し上げないと!」
思いっきり、余計なお世話だよな。
クリムゾン様、完全に引いてるよな。
だいたい、クリムゾンのクロエル様自体が最強危険人物だ。上位竜種の伴侶にして赤種の四番目。
正直なところ、こっちが守ってもらいたいくらいの存在。
ところがだ、分かってない人間はどこの部署にもいる。
今日も休憩時間に姿を消したエレバウトを回収しようと探していたら、そんな集団に出くわした。
まったく、ここは塔の食堂だというのに、我が物顔で気分が悪い。
「何をおっしゃってるの?! 後から来たのはそちらでしょう?」
そしてその集団に、見事、うちのエレバウトが噛みついている!
「技能はすべて神の加護。神の加護に恥ずかしいものなんて、ありませんのよ」
途中からだったので話の流れはよく分からないが、相手集団は紫の騎士服、第四師団。
また、技能なしがどうのと騒いだのだろう。まったく。あの連中は性格が悪い。
しかし、騎士集団相手に臆することもなく、堂々と言い放つエレバウト。
私は少しエレバウトを見直した。感動した。よく言い返した、エレバウト。
「ソコがエレバウトちゃんの、イイところよねー」
なぜか、たまたま、偶然にも、塔の食堂の中を通りすがったという知人も、エレバウトの勇気を称えてくれる。
塔所属の職員は、精霊魔法技能を持たない割合が、他より高い。
技能なし故に、他の技能を磨いた結果だと思っている。
私もエレバウトも精霊魔法技能を持つが、鑑定室の半分は技能なしだ。
技能なしがなんだというんだろう。
鑑定室のメンバーは、皆、努力を惜しまず実力を磨いている人間ばかりの最精鋭。
もう一度、言う。
技能なしがなんだというんだろう。
「精霊魔法も剣技も使えて万能だなんておっしゃってるけど、所詮、中途半端な寄せ集め。
頭の中身も中途半端でしたわね!」
「ハンパモノ、サイテー! エレバウトちゃん、サイコー!」
後日、私は塔長にまたもや呼び出され、エレバウトに関する報告を行った。
「エレバウトは、ただのバカじゃありませんでした!」
最近は忙しいながらも、しっかり仕事だけは片付けて消えるエレバウト。
業務の進み方にも滞りは見られない。
他師団からのクレームも減った。
今日も業務をこなしてからは姿が見えないが、きっと今日もどこかで、誰かのために噛みついているのかもしれない。
「いや、君の言うことは尤もだし正論だけどな。それで、僕の指示はどこに行った?」
あれ? 指示?
どこに行ったんでしょうね(汗)
いったい、これで何度目だろう。
今日も頭痛と胃痛が襲ってくる。ため息はとうにつき果てた。
私の名前はオルダン・エアシャール。
第一塔鑑定室の室長を拝命して三年。
ようやく、人並みに業務がこなせるようになったと思っていた。
第一塔長に呼び出され、直々に、とんでもない指示を受けるまでは。
第一塔長は鑑定技能超級で、上級の人間からすると、人を超えた、神に近いお人だ。
いずれは大神殿の神官長を引き継ぐのではないかと噂に聞く。
赤種の一番目、バーミリオンのクロエル様とも懇意にされているそうだ。
クロエル様と言えば、クリムゾンのクロエル様が、現在、塔長室に勤務していらっしゃる。
そのクリムゾン様に、なんと、うちのエレバウトが二日に一回は絡んでいると、知人から耳打ちされた。
「エレバウトちゃん、ドウにかしないと、マズいんじゃなーい?」
頭が痛い。
そこにやってきたのが、神に近いお人、第一塔長からの指示。
「エレバウトをどうにかしろ」
胃も痛い。
部下の管理もまともにできていなかっただなんて。
「ソレより、ソノ、すさんだ顔! ちゃーんと寝ないと仕事にならないわよー!」
もう言葉もない。
それ以来、睡眠はしっかり取るようにしたが、頭痛薬と胃薬が手放せない毎日を送っていた。
「あら室長、レディに対して少し失礼ではないかしら」
胃痛と頭痛の原因は、非常に自由な発想の持ち主だ。それだけでも頭が痛いのに。
「業務の速やかな遂行を優先させたまでだ! だいたい、資料室に用はないだろう!」
ああ言えばこう言うし。
こう言えばああ言うし。
毎回毎回、呼び出されたり注意されたりを繰り返しているのに、まったくもって懲りることがない。
非常に強靭な精神も持ち合わせている。
「あら室長、室長こそ他に業務がおありでしょうに。こんなところにいらして、よろしいのかしら」
それは君のせいだろう!とは、さすがに言えないので、
「君の業務の管理も、私の業務だ!」
とでも言っておく。間違ってはいない。
そのうえ、胃痛と頭痛の原因は、非常に人情に厚く正義感が強い。
おかげで他にもあちこちとのトラブルが絶えず。胃が悲鳴をあげている。
「あら室長、クロエルさんは就職したばかりで、お友達がいらっしゃらないんですのよ!」
だから、どうした?
友達がいなくとも、特級補佐官の同僚がいれば十分だ。
「ですから、このあたくしが積極的に話しかけて差し上げないと!」
思いっきり、余計なお世話だよな。
クリムゾン様、完全に引いてるよな。
だいたい、クリムゾンのクロエル様自体が最強危険人物だ。上位竜種の伴侶にして赤種の四番目。
正直なところ、こっちが守ってもらいたいくらいの存在。
ところがだ、分かってない人間はどこの部署にもいる。
今日も休憩時間に姿を消したエレバウトを回収しようと探していたら、そんな集団に出くわした。
まったく、ここは塔の食堂だというのに、我が物顔で気分が悪い。
「何をおっしゃってるの?! 後から来たのはそちらでしょう?」
そしてその集団に、見事、うちのエレバウトが噛みついている!
「技能はすべて神の加護。神の加護に恥ずかしいものなんて、ありませんのよ」
途中からだったので話の流れはよく分からないが、相手集団は紫の騎士服、第四師団。
また、技能なしがどうのと騒いだのだろう。まったく。あの連中は性格が悪い。
しかし、騎士集団相手に臆することもなく、堂々と言い放つエレバウト。
私は少しエレバウトを見直した。感動した。よく言い返した、エレバウト。
「ソコがエレバウトちゃんの、イイところよねー」
なぜか、たまたま、偶然にも、塔の食堂の中を通りすがったという知人も、エレバウトの勇気を称えてくれる。
塔所属の職員は、精霊魔法技能を持たない割合が、他より高い。
技能なし故に、他の技能を磨いた結果だと思っている。
私もエレバウトも精霊魔法技能を持つが、鑑定室の半分は技能なしだ。
技能なしがなんだというんだろう。
鑑定室のメンバーは、皆、努力を惜しまず実力を磨いている人間ばかりの最精鋭。
もう一度、言う。
技能なしがなんだというんだろう。
「精霊魔法も剣技も使えて万能だなんておっしゃってるけど、所詮、中途半端な寄せ集め。
頭の中身も中途半端でしたわね!」
「ハンパモノ、サイテー! エレバウトちゃん、サイコー!」
後日、私は塔長にまたもや呼び出され、エレバウトに関する報告を行った。
「エレバウトは、ただのバカじゃありませんでした!」
最近は忙しいながらも、しっかり仕事だけは片付けて消えるエレバウト。
業務の進み方にも滞りは見られない。
他師団からのクレームも減った。
今日も業務をこなしてからは姿が見えないが、きっと今日もどこかで、誰かのために噛みついているのかもしれない。
「いや、君の言うことは尤もだし正論だけどな。それで、僕の指示はどこに行った?」
あれ? 指示?
どこに行ったんでしょうね(汗)
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