精霊魔法は使えないけど、私の火力は最強だった

SA

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1 鑑定の儀編

1-9 副官は見た

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 ウフフフフフフ。
 今回は大アタリだったわー

 魔物の討伐報告なんてものが飛んできたときには、ふざけた大バカヤロウが調子に乗ってデッチアゲかーってムカついちゃって、そのへんの子を三人ほど締め上げたけどー

「エルヴェス、仕事してください」

 現場に行ってみたら、アタシ好みの美少年くんと美少女ちゃんがお出迎えしてくれちゃってー、討伐完了はホントーだったし、アタシは美少女ちゃんの守りというオイシいお仕事いただけて!
 黙って突っ立って、美少女ちゃんを眺めてウハウハするだけの簡単なお仕事だったしー、美少女ちゃんはかわいかったしー

「アア、サイコーにシアワセよねー!」

「エルヴェス、仕事……」

「しーてーるーわーよー」

 シアワセな気分に浸っていると、辛気くさい顔をしたカーシェイがいっつもジャマをしてくるんだわ。プンプン。
 今だって報告書をスラスラ書いて、依頼をバリバリこなしながら、美少女ちゃんの周りの空気の匂いを思い出していたというのにー

「エルヴェス、絶対、変なことを考えてますよね」

「美少女ちゃんの周りの空気の匂いを思い出していただけよー アア、シアワセー」

 ウフフーと笑いながら、アタシは報告書と依頼された資料をカーシェイにポイポイ渡していく。
 カーシェイはドン引きしながら受け取っていくけど、ドン引きしている時点でマダマダよねー

「美少女ちゃんの家門の資料とー、美少女ちゃんの経歴書とー、美少女ちゃんが好きなスイーツや趣味の資料もあるわー あと、縁談持ち込みそうなところもリストアップしてあってー」

「エルヴェス、仕事してくださいって!」

「ソレぜーんぶ、師団長からの依頼、ダ、カ、ラ。仕事よ仕事ー」

 あー、カーシェイ、絶句してるー
 マダマダよねー

「確かに師団長、気にしていたようでしたし。妙にデレデレした目つきで、食いつくように見てましたけど……」

「アレ、知らない人から見たら、デレデレに見えないからー
 無愛想なヤツがしかめっ面して不機嫌そうな目つきで、ガンつけていたよーにしか見えないからー」

 カーシェイの言うことは事実。
 アタシの言うことは現実。

 ウチの師団長、恋愛偏差値低いしー 恋愛経験値ゼロだしー 無愛想の塊、冷徹な堅物、血塗れの戦闘狂などなど、色っぽいあだ名がまったくないしー 事実、色っぽいことに興味なさすぎだしー
 戦闘だったらぶっちぎりなのに、恋愛競争だったら絶対負けくさる!くされ!

 でもでも! 勝機はコチラにあり!

「アノ美少女ちゃんたら、キラキラした紅い目で師団長のこと見て、熊ってコッソリ言ってたのよー 熊ですって! 熊! イヤー コ、レ、は、脈アリでしょー キャー」

 モエルーーー

「「「どこが!!」」」

 アーレー? ツッコミが増えたと思ったら、カーシェイの他に副師団長と掃討部隊長が話に加わってるわ。
 もともと同じ部屋にいたから、最初から聞いてたんだろーねー 師団長の恋バナだもん、興味、あるよねー

 盛り上がるアタシとは正反対に、盛り下がる三人。

「あの師団長が、王都で流行りのスイーツやデートコースなんて調べさせるかねぇ、似合わなさすぎるだろ」

「家門調査、えげつねぇな。縁談片っ端から潰すにしても、師団長なら物理で潰すだろ、物理」

「あの師団長がこれ全部、依頼したんですか? 考えつくとは思えませんが」

 三者三様否定的なご意見イタダキマシター

 が!

「モチのロンよ!」

 アタシは自信をもってニンマリ笑う。

「アノ美少女ちゃんかわいいですよネー
 アーンナかわいい子、ほっといたらアッというまに縁談が群がって、キタナい大人の都合のいい家門に持ってかれちゃいますヨー
 見目のいいだけのお坊ちゃんに先越されて、美少女ちゃんが一目惚れなんかしちゃったらアウトですヨー
 って耳元で囁いたら、一発よ、一発!」

「「「お前が煽ったのか!!」」」

「美少女ちゃんの方も脈アリだから、コレはマジイケル!」

「「「イケる要素、ないだろ!!」」」

 ったく、ノリ、ワルいわー

 師団長の件がなくても、美少女ちゃんを確保しておきたい理由があるのよねん。

「カーシェイ、特級補佐官ちゃんに質問してたわねー」

「気づいてましたか」

「アタシを誰だと思ってんのよ! で、美少女ちゃんの等級、けっこうヤバいんじゃない?」

「…………鑑定できなかったそうです」

「マジか! 低くても超級?!」

 やっぱり。なかなかそんな人材おちてないわよー
 キャー、美少女ちゃん、サイコー!

「んー、今回の魔物。狩ったのはやっぱり美少女ちゃんねー」

 指を一本ぴっとたてる。

「護衛騎士の美少年くんは焦げ臭さもないし、土汚れもなかった。
 美少女ちゃんは焦げ臭くて、髪に小枝がついてたわ。服の土汚れを隠すため、マントとフードでスッポリだったのかもね」

 もう一本。

「アノ美少年くんは精霊騎士。風と土属性で火は扱えない。魔物には間違いなく火系魔法が使われていた。焦げ臭いのが何よりの証拠」

 三本目。

「ウチの師団長の威圧に殺気、美少年くんは耐えるのが精一杯だったのに。ま、それでもスゴいとは思うけど。美少女ちゃん、食らっても平然としてたわよ」

「状況証拠であって、断定はできません」

 真っ当な判断だけどねー
 真っ当なだけじゃ、先手は取れないのよー

「だとしても、突き抜けた人材なのは間違いない。師団長の恋は砕け散っても、美少女ちゃんは確保しておきたいのヨ」

「砕け散る前提かよ」と副師団長。

「例えばよ、たとえば。大丈夫。師団長、狙った獲物は逃がしたことないから」

「獲物は、だろ」と掃討部隊長。

 なんなの、コノ三人、師団長の恋を応援したいの? したくないの?

 コンナこともあろうかと、他人事な三人を共犯者に仕立て上げるべく、特大爆弾を用意してあるんだわー ウフフのフー

「それに師団長。アレやってたの、アタシ見ちゃったのよネー!」

「「「見てたなら阻止しろォ!!!」」」

 エへヘン。

 美少女ちゃんを手中におさめるため、もとい、師団長の恋を応援するため、アタシは配下の情報部隊と特務部隊をコッソリ動かすのだった!
 待ってて、美少女ちゃん!
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