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裸足の呪縛(後編)
しおりを挟む「おい! そこで何してんだ、きんたま!」
開いたドアを塞ぐように、制服姿のヤナチエが立っていた。
クラス違うから部活の時ぐらいしか顔を合わさない。ま、部活の時だけでも鬱陶しい存在だからそれでいいんだけど、さらに水に入るときはキャップを被ってるしそもそもキョーミないからフツーの姿を見慣れてなかった。
高校生なのにちょっと脱色気味の短めソバージュっぽい髪型。生乾きのその髪がミョーに妖しい雰囲気を振りまいていた。
それに、競泳水着だと気にも留めなかったのに制服だとなぜか胸の膨らみが大きく見えた。もちろん、入り口を塞ぐ太腿はご立派だし、ケツもデカい。
しかも、顔キツめ。高校生だからまだ行ったことないけど、卒業したらそのままガールズバーのイケイケギャルになりそーな雰囲気バリバリ!
どんっ!
そのヤナチエが、制服の短めのスカートから伸びた逞しい片脚をあげて、通せんぼするようにドアを塞いだ。しかも、
カシャ!
「バッチシ、撮っちゃったぜ! うっひっひ! 」
ヤラシイ言葉と共に勝ち誇るヤナチエ。
終わった・・・。
ぼくは、いろいろと観念した。
女子更衣室に入って、足ふきマットをクンクンしていたのを見られたのである。どうあがいてみても弁解のしようがないのは火を見るよりもあきらかだった。
だが、多少の悪あがきはした。
「おい! 何してんだって、訊いてんだよ、オラ!」
俗に「ヤカラ系」というが、ウチの高校の場合男子でさえこんな口の利き方をするヤツはいない。だから、ヤナチエは女子からも男子からも嫌われているのである。
「い、いや、ちゃんと、洗濯してるのかな、って・・・」
「なんでテメーが女子の足ふきマット気にしてんだよ。カンケーねーだろテメーに! あ”? おかしいだろが! ああん? 何とか言えよ、きんたま!
おい! その手に持ってんの、なんだ」
「こっ、これは、・・・ごーぐる?」
「んなこた見りゃわかんだろがボケ! 誰んだって訊いてんだよ! 貸してみ!」
ピタピタとぼくに迫るヤナチエ。
プール施設内は土足上履きゲンキン。だから、ぼくもヤナチエも裸足だ。
彼女はぼくの手から青いゴーグルを乱暴に奪うと目の高さにあげた。
ああ、もうダメ!
「ゲッ! これ、スズネのじゃんか! 」
そうして、ゆっくりとぼくを見、
「おいきんたま! テメー、ストーカーか?」
「あ、あの、そ、そこに、落ちてたから・・・」
「言い訳んなってねーよ! だからって女子更衣室入んのかよ。おかしーだろが!」
おっしゃる通りです。
「スズネのゴーグル握りしめて、女子の足ふきマットの匂い嗅いで。
テメ、ヘンタイか、コラ!」
間髪入れず、ヤナチエの足がぼくの股間をクリーンヒットした。
「ぐはっ! ・・・は、おおおおおっ!」
頭の中で星が飛んだ。
思わず股間を抑えベンチの中の足ふきマットの上に蹲ってしまう。
そこをすかさず蹴飛ばされ、ヒンヤリしたコンクリートの上にエビのように丸くなるぼく。
すると、ヤナチエは跳躍するようにベンチに跨り、なんとぼくの顔の上を裸足で踏んづけた。
「うぷっ・・・」
踏みつけの痛さもさることながら、全く別の次元の苦痛にさらに呻いた。
なんというか、キョーレツに、クサかったのだ、ヤナチエの、足が。
「うげっ! 」
まあ、悪役キャラではあるのだが、事情を知らなかった1年生が入部当初はチヤホヤしたぐらいだから「悪役令嬢」ぐらいには「立つキャラ」である。顔面偏差値55は行ってるだろう。そんな見た目も関わらず、マジ、臭いのである。水虫?
「やっとわかったよ」
人の顔をグリグリ踏みつけながら、ヤナチエは言う。
「んな、な、なにが・・・」
「なんでテメーが女子のほうばっか見てたか、だよ。このスケベ野郎!」
「え? 」
「テメ、アレだろ。テメーはスズネがすきなんだろ。今からこのゴーグルとその足ふきマットおかずにしてセンズリコク気だったんだろ」
そ、その通りです。
「え、なっ・・・」
図星をさされ、思わず動揺するぼくを、ヤナチエはニヤァ・・・、と凄んだ。
「そっ、なっ、なんで、そんっ・・・」
「その動揺が何よりの証拠じゃねえか。
しかも、なんだこれは! 」
「はあうっ・・・」
ヤナチエの足が、なんとズボン越しにぼくのちんこをグリグリしてきたのである!
「なんだ、オメー。しかも、もうカタくしてんじゃねーかよ! おい、なんか言い訳してみろ! 図星だろうが! カスっ! 」
そうなのである。
もともとスズネのゴーグルを手にしてしまい、彼女のキレイな足を想像してしまった時点でぼくはコーフンしていた。その上なんと女子更衣室が開いてしまい、さらに足ふきマットを目にし、スズネのキレイな足がこの上に乗り、ここで雫を落としていたのを想像してしまい勃起ちはじめていた。
そこに加えてヤナチエである。
性格と顔面偏差値55の貌はともかく、もともとデカいケツして立派なフトモモ露にした女が、クサいとはいえぼくの顔を足で踏み、究極的には、ゴツいカエル足とはいえ、ぼくのちんこをズボン越しに足コキしているのである。
勃起つな、というほうが、ムリである。
その上、さらに!
ベンチの上でガバッと開かれたヤナチエのたくましいフトモモの間、股間の奥の白いぱんつまでが目に入ってしまった。
これはもう、勃起一択である!
見上げると、ヤナチエが密かに舌なめずりをしているのが見て取れた。
「おい、ズボン脱げよ!」
「は? 」
「きんたま膨らませて、なにキョドってんだよ! ズボン脱げっつってんだよ! 」
「ふ、膨らませてないし」
「は? ウソコケ! 」
すると、ヤナチエはやみくもにぼくの股間をズボン越しに握りしめてきた。
「あ”! はうっ!」
き、気持ちいい・・・。
「おらっ! 立派に勃起ってんだろがよ! つべこべ言わんではよ脱げや、コラ! 」
言いながらぼくの口にクサい足指をねじ込んで、もう片方の足はぼくのちんこを器用に擦り揉み上げた。腐ったゾウキンってこんな味なんだろうか。
ズボンを脱ぐのはマズい。だが、仕方ない。ヤナチエに逆らうと、あの写真を、ぼくが女子更衣室で足ふきマットをクンカクンカしてる姿をバラまかれる!
かちゃかちゃベルトを外し、猛烈な吐き気に耐えつつ、少しケツを上げ、ぼくはズボンを下ろした。
「なんだテメー! そんなちっちぇーぱんつ穿いてんのかよ! 」
マズいのは、これが理由だった。
「・・・おもしれー! 」
ぼくはヤナチエの妖しい目がギラっと光ったのを見逃さなかった。
ぼくはちんこがぶらぶらするトランクスがニガ手で、こうした小さいぱんつを愛用しているのだった。
だが、このぱんつにも欠点はある。
不用意に勃起ってしまうと、先っぽがぱんつから飛び出して「こんにちは!」してしまうのである。
ぱんつ一丁で通りを歩くことなどないし、男子だけの着替えで勃起してしまうことはない。
だが、女子の前でパンイチになったのはこれが初めてだった。しかも、その時ぼくはヤナチエの足コキで若干勃起っていた。ちんこの先が、今にもゴムを潜って出てきそうになっていたのである。
自慢じゃないが、ぼくのは若干大きいらしい。そしてこれこそが、ぼくが股上の深いハーフスパッツ水着で助かっていた理由なのである。
もし今も昔のブーメラン型の水着を着なければならないとしたら。
スズネのキレイな足を見るたびに股間を抑えて更衣室に逃げ込むか、体力が尽き果てるまで延々と泳ぎ込みをしなければならなかっただろう。
当然のように、彼女のゴツゴツした足はぼくの股間を攻撃し始めた。たちまちにぼくは、情けない声を上げるハメになった。
「はうっ! ああっ!」
「はああんっ! 」
「なにナサケネー声出してんだ、テメー! 」
どこで覚えたのか。
ヤナチエの足技は絶妙で、下着越しに足の指を器用に動かしてサオを擦り、土踏まずで転がすようにカサの縁を刺激して、悪魔のような言葉を投げつけながら、しまいには両足総動員でぼくのちんこをイジメてきた。
そして、当然ながら、ぼくのはムクムクと反応した。
そのヤナチエの足技攻撃は、それほどに気持ちよかったのだ。
「なんだ、テメー! 意外にイイモン持ってんじゃんか! ますますおもしれー!」
調子に乗ったヤナチエは、なんとベンチから下りて、大胆にもスカートを捲り上げ、ぼくの貌の上に跨った。もう、恥もなにもかなぐり捨てていた。
「むごわっ! んうぷっ! 」
しかも、素手でぼくのちんこを握り、手コキまでしてくるではないか!
ヤナチエの股間は想像を絶する臭さだった。ぱんつ越しであるにもかかわらず、である。
うんこはもとより、人間が出す全ての分泌物を数億年ぐらい発酵させたような凄まじい悪臭。思わず息を止めたが、永久に止め続ければ死んでしまう。臭さを濾過して酸素だけ取りこめるエラがあればいいのに、と思った。
シュールストレミングという、ニシンを塩で漬けて発酵させた食い物があるという。
幸か不幸かぼくは食べたことはないが、缶詰にした後も発酵が進んでガスが出ているそうで、その匂いを特殊な臭気測定器で測ると、約8000Au(Auは臭さの単位)になるという。納豆の約20倍、男子の使用済み靴下の30倍。
「まさに地獄の缶詰というにふさわしい強烈な食品ですね(笑)」
興味本位で覗いたサイトにこういう記事が載っていたのを思い出した。
しかし、このヤナチエのケツの臭さは絶対的にそれを上回るに違いない。
抗議したかったが、口を開けば臭素が入って来る。そんな危険な気体を直接吸い込んだら悶絶して死んでしまうのは火を見るよりも明らかなはず。
と。
ぼくのをシコシコしながら、ヤナチエがふいにこんなことを言った。
「あんな、ガリペタ女の、いったいどこがいいっていうんだ、ええっ?! 」
は?
「言ってみろ! あんな女のどこがいいんだ! 」
強烈な臭さに半ば朦朧としながら、ぼくは思った。
そ、それは・・・。言わずもがなだ、と。
あのキレイな足だ。それ以外の何物でもない。宝物とも言える。お前のカエル足なんかとはくらべものにならないじゃないか!
だがもちろん、思っても言わなかった。
「あたしのオトコになれよ、きんたま! 毎日イジメてやっから。うれしんだろ? こんなにデカくしやがって! スズネみたいなお嬢様はこんなんしてくれねーぞ! それでもいいんか。あ”あ”ん? 」
あらら? なんか、ヘンだぞ。
もしかして、コイツはヤキモチというやつを妬いてるのか?
これは、告白というヤツなのか?
およそこの世のものとは思えない、とてつもなくクサいヤナチエのケツの匂いに咽ながら、ぼくは辛うじて思考した。
あの、プールサイドをひたひた歩く可憐な足。スタート台から飛び込んで水を蹴る可愛い足。
あの足なら喜んで舐められる。いや、舐めたい!
しかし、このカエルみたいなブサイクな、しかもキョーレツ過ぎる臭さのケツを持つ女の足を愛せるか?
それは、ムリ。絶対に、ムリ!
「スズネはな、高めの女だぞ。テメーみたいな、足ふきマットクンカクンカして、顔踏まれて、ちんこ足でコスられてオッ立ててるようなヤツにはムリスジの女だ。
そこへ行けば、あたしなんかテメーにおあつらえ向きだろ? いっぱいちんこイジめてやっからよ、な? ウェヘヘヘッ!」
たしかに、そうかもしれない。
声もかけられないから、今までずっと片隅から遠目で見つめていたのだ。
高嶺の花。
ぼくにとっては、スズネはそういう存在なのかもしれない。
「キミの足を舐めたいんだ。いいだろ?」
絶対、ビンタものだ。
だが、ひとついいアイディアが浮かんだ。
スズネの足を想像しながらヤナチエの足コキを受ければいいのだ。ナメることは、ムリだが。
要は「腐ったゾーキン、発酵したシュールストレミング以上のうんこ味の絶品カレー」だと思えばいいのだ!
ちょっと、ムリがありすぎるが。
でも、そう考えると、急に気がラクになり、猛然と快感が襲ってきた。
「きんたま。テメーはあたしぐらいの女がお似合いなんだよ。ヘンタイだし。こんなお誂え向きの女、ナカナカイネーぞ、んん?」
ヤナチエの手コキの技はいよいよ冴え、ぼくのちんこは過去最大級に張り切って脈打ち、ヒクヒクしていた。
「あ、あ、あ・・・」
ぼくは、スズネとの架空のセックスに没頭した。
で、それは、来た!
過去のオナニーでは前例がないぐらいに、それはほとばしり出た。
とめどもなく。
そんな言葉が似つかわしいほどに。
あまりな解放感で、ぼくはひと時、気を失った。
気がつけばヤナチエはいなかった。
夢ではない。
ぼくは女子更衣室のベンチに囲まれた足ふきマットの上に寝ていたからだ。
足ふきマットを洗って干し、ぼくの白い涙が飛び散った辺りに水をかけてデッキブラシで擦って洗い流し、もう一度シャワーを浴びて身支度を整え、ぼくはプールを後にした。
「妥協」
新たに学んだボキャブラリーを胸に、ぼくは学校を出た。
了
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