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第二部

第七話 十番目の依頼人 女子大生ミナト・ユキノ 最終章

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 泡だらけのバスタブのなかで、あたしはヒロキに抱かれていた。
 深い満足と安らぎに包まれながら。未体験の、リラクゼーション。
「こんなに、いいものだったんだね、セックスって・・・。
 こんなに、満たされたセックスって、初めて・・・・」
「あのね、ユキノ。ひとつ、言っておきたいコトがあるんだけど・・・」
「なあに? 」
 ヒロキは、変わらない穏やかな笑顔で、あたしを見下ろしてた。
「いつもはね、キホン、リピートはしないんだ。だけど、ユキノの場合は、ユキノ自身がお相手を拒めるかどうかが大事だと思うんだ」
「・・・うん」
 それは、あたしも思ってた。
 またユウヤがアプローチしてきたら、もしかすると、また靡(なび)いちゃうかも、と。
 今まで何度も、それで失敗してきた。
「それでね。これからしばらくの間、お相手さんが接触してきたら、ぼくに連絡くれるといい。その時はまた、エッチしよ? 
 肝心なのは、ユキノの心が強くなれるかどうか、だと思うから。でしょ?」
 ビックリした。そして、胸の中がさらに暖かく満たされていった。そんなことまで心配してくれてたなんて・・・。
 でも・・・。
 そこまで考えてくれるなら、
「ねえ・・・」
「ん? 」
「付き合ってくれる、ってのは、ダメ、なんだよね、やっぱり」
「うん、ごめんね。それだけは、できないんだ」
「最初の約束だから、守るよ。でもさ、好きになっちゃダメ、なんて、残酷だよ」



「好きになっちゃったの、ヒロキが。どうしようもなく。
それって自然でしょ? 不可抗力でしょ?」


 それから。
 ユウヤからは何度も連絡を受けた。その度に、
「わるいけど、もうあんたとは会わないって決めたの。これっきり。これ以上あたしに付きまとわないで。ケーサツにツーホーするよ?」
 強気に出た。
 でも、すぐヒロキを呼んだ。
 そして、抱いてもらった。道に迷わないように。
 そして、毎回同じことを尋ねた。
「あたし、ヒロキと付き合いたい。ケッコンしてもいい。ケッコンして! あたしだけのものになって! 」
「ごめんね。だけど、それはできないよ。だってぼくまだ高校生だし」
「・・・そうだよね。ごめんね」

 何度かそんなルーティンを繰り返したころ。
 やっとあたしにもステディーができた。
 ユウヤみたいなチャラ男じゃない。某宮廷大 (旧帝国大学)の大学院に行ってる人だ。キッカケは、ナンパだったけど。
 でも、フィーリングめっちゃピッタリで、知り合って一週間ぐらいでエッチした。
 ベッドの中でも、ヒロキみたいにめっちゃ紳士。さすが宮廷大の大学院! それに優しかった。むしろちょっと物足りなかったぐらい。ヒロキよりも持続力、なかったし。だから、ちょっぴり積極的になっちゃった♡。経験豊富なの、バレないよね?
「すっごい、よかったよ。ユキノ、めっちゃ可愛かった・・・」
 終わった後、ベッドの中で彼は優しく髪を撫でてくれた。
 シアワセ・・・。
「シャワー浴びる? 」
「あ、先浴びていいよ」
「OK! じゃあ、先浴びるね? 」
 ざー・・・。
 シャワーの音が聞こえて来て、あたしはスマホをとった。

「あ、いま、話してて大丈夫?
 あのね、ヒロキ。あたし、ステディーな人ができたの。めっちゃ優しくて、いい人なの。ちゃんと大学院まで行ってる人。将来は学者になるんだって。
 でね? リピートのことなんだけど、もうこれで終わりでいいです。
 ありがとうね、ヒロキ。キミのお陰だよ♡
 じゃあ、ね。どこかで会ったら、その時は、またエッチしてねw。
 あははは! ジョーダン、ジョーダン!
 じゃあね・・・」

 これでいい。
 ヒロキのお陰で、あたしはやっと依存症から脱出できた。
 これからあたしは、幸せになる! ゆくゆくは、教授夫人になれるかも!







「じゃあ、あたしもシャワー浴びるね! 待っててね♡」
 バタン! ざー・・・。
 ふう・・・。
 ピッ!
「・・・あ、ユウヤか? オレオレ!
 ちょろかったぜェ、お前の女!
 完全に大学院生だって信じてるぜ、アレ。学生証出したらイッパツだったw。ニセモンとも知らずに! 
 ちょっと、バカじゃね? アレ。 ・・・ハハ。こっちはオメー、大学どころか底辺高校中退だっつーのw。
 ま、ダテにAVのスカウトやってねーからな。そこはまかしとけ!
 ・・・おう! 今日はまだ早えよ。明日か明後日にすんべ。
 大丈夫、ちょっと変わったことしよ、とかって目隠ししてベッドに縛り付けときゃ! で、お前が登場してズッコンバッコン! 驚くぜェ、あの女! でも、どーせまたすぐ慣れんだろ?
 だってよ、夢中んなって自分から腰使って来んだもんよ! ポルチオ当てたがって反って来るしさ。ありゃ、とんでもねえドスケベだな! 
 ・・・大丈夫だ。まだシャワー中。聞こえねえよ。
 ・・・そうだよな。ホテル代持ち、呼び出せばすぐに股濡らしてやってくるバカナマオナホだもんな。手放すのは惜しいよな。
 ・・・え、3P?
 じゃあさ、どうせならオレのダチ連れて来て4Pにしねえ?! 
 みんなでマワすべえよ、あの、バカ女! 」








 



 通話を切ったぼくは、カオリの部屋のベッドの中でしばしまどろんだ。
 背中にはカオリが抱き着いてて、ぼくの前に手を回してマイサンをシコシコしながらぼくの肩を甘噛みしたりしてジャレてる。カオリのコリコリした乳首の感触が背中にくすぐったい。
「終わった? 」
「・・・みたい。でも、たぶん、あの子ダメだと思うよ。違うヤツか、同じヤツか、どっちにしろ、また同じように利用されちゃうんじゃないかな」
 シコシコが止まった。
「なんてかさ、自分がないんだよ。常にだれかにそばにいてもらわないとダメなタイプ? そういうヤツ、いるじゃん。それだよ」
「ケッコーいい大学行ってんのにね」
「知識はあっても、知性がない。自分を大切にしようともしない。自分がないからだよ。だから自律できない。常に他律なんだ。ベンキョーばっかしてるとああなっちゃうのかもね・・・」
「・・・ムズかしいね。
 でも、ヒロキってさ、人生見つめてるんだね。ソンケー!」
「そんなんじゃないよ。ただ、こんな短い期間にいろんな女の子見てきたからさ。目が肥えちゃったのかも」
 シコシコが再開した。
「じゃあ、任務未達? 」
「おい~! 頼むからそういう言い方するなよ。
 オレ、も、しばらく休みたいよ。も、ヤダ、ああいうの相手にすんの。
 とにかく、今後はああいうのはパス。も、疲れた」
「泣き入ってるじゃん」
「そりゃ、入るって! も、頼むからカンベンしてくれよ~・・・」
 すると、背中にいたカオリがぼくのカラダを「えいっ!」と振り向かせ、抱き着いてきてぼくの腕枕にちゃっかり入りこみ、イタズラそうな目でぼくを見上げてきた。えへへ、とか笑ってるし。しかも、シコシコ。
「ね! もうすぐ夏休みじゃん? どっか温泉でも行かない? 」
「だってお前、ブカツ・・・」
「も、地区大会終わったもん。初戦敗退したし」
「弱っちい女子テ!」
「だから、ヒマなの」
「彼氏と行けばいいじゃんか」
「も、別れた」
「マジか!」
「だから、行こ? 癒してあげる!」
「どうだか。どうせお前に纏(まと)わりつかれてセックス三昧になっちゃうような気がする」
「ちがうよお。ちゃんとマッサージとかもしたげるしさ。美味しいもん食べて温泉浸かって、元気になろ? ね?」
 うふふと笑いながらシコシコして笑いかけてくるカオリを見ていると、しょーがねーなー、とも思った。
 思いっきりワガママなのに、どっか憎めないヤツ。それがカオリという女なのだった。




   第七話 十番目の依頼人 女子大生ミナト・ユキノ 終わり
 

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