47 / 59
「スターリングラード」攻防戦
44 ジャガイモ島沖海戦!
しおりを挟む矢を手に取って走る。矢を刺す場所は背中だ。もちろん普通にしてたら刺さらない。普通ならな。
「ありがとう笠松……お前のおかげで弱点はわかった」
化け物が俺に気づいた。残っている右腕で俺を追撃しようとハサミを振り上げた。
俺はスライディングをしてハーデストの股の間をすり抜けた。それと同時にハーデストのハサミが地面を叩き砕いた。体を捻ってハーデストの方に向く。
握りしめていた矢を下から差し込むようにして刺した。思った通りに矢は突き刺さり、ハーデストの肉の奥にくい込んだ。
「え!?刺さった!?」
マヤが驚いている。なんで刺さったのかわかっていないのだろう。まだ確定してはなかったから言わなかったが今ので確信に変わった。教えてあげないとな。
「こいつはカニのように見えるが本質はアルマジロみたいなものだ。アルマジロの装甲が全身にあるって思った方がいい」
「……それは分かったけどなんで刺せたの?尚更無理じゃない?」
「ミツオビアルマジロって丸くなるために隙間があるんだ。でもただ普通に隙間があるだけだと外敵から狙われた時にそこをやられてしまうだろ?」
「うん。それで?」
「写真で見た方が分かりやすいがあの甲羅って、上にちょっとずつずらして置いている紙のようにできてるんだよ。それで丸くなれば隙間は無くなる」
「逆に言えば丸まらなければ隙間がある?」
「そういうことだ。ましてやアルマジロより何倍も大きいこいつなら隙間が大きいはずだ。そして刺さった」
膝の裏に関しては恐らく足が曲げられるギリギリの所まで甲羅がついていたのだろう。腕は笠松が力を抜いた時にたまたま滑って切り落とせたんだ。たまたまとはいえ笠松の死は無駄じゃなかった。
「弱点が分かれば戦えるぞ……逆襲の時だ……」
矢を1本握りしめる。右目は見えないため弓は撃てない。近接戦しか俺はできない。死なない覚悟はできてる。桃を助けるまではまだ死ねないぞ。
「俺が多少時間を稼ぐ。ワイトとマギーの応急処置を頼んだよ」
「……わかった」
マヤが2人の元に走っていった。これでいい。できれば死人は少ない方がいいからな。1対1か。いつも通りだな。
ハーデストに向かって走った。ハーデストはまた追撃しようとハサミを左側に伸ばして力を溜めている。
ハーデストが横凪にハサミを振った瞬間に体を縮こめて地面に落ちる。髪の毛のてっぺんが切れた。
そのまま体を持ち上げると同時に矢をハーデストの膝に下から矢を突き刺した。やはり近接戦だと俺の方が強いんだ。
もう一本矢を取り出す。さっきのお返しだ。矢をハーデストの目に突き刺した。緑色の血がドバっと出てきた。まるでB級映画みたいだ。
突然腹に衝撃が走った。後ろに体が飛ばされる。柱に背中がぶつかった。口から唾液が反射的に出てくる。内蔵の位置がズレた気分だ。ハーデストの方を向くと、膝を前に上げていた。俺の腹に膝蹴りをしたのか。膝の全面は硬い甲羅だから威力は当たり前のように高いということか。
「ガルルルルァァ!!」
横からヒルが出てきた。鉄の破片を咥えてハーデストに走っていった。
「お前、なんかいないと思ったらそれ取ってきてたのか!」
ヒルがハーデストの切れた腕の断面に鉄の破片を突き刺した。破片はかなり尖っていて硬そうだ。
ハーデストがヒルを睨みつけた。ヒルも負けじと威嚇する。
「グルルルルルル……」
どっちも俺の事を無視してんな。チャンスではあるがなんか悔しい。
矢を新たに握りしめて、ハーデストの後ろに回りこむ。狙うは首元。こいつに頸動脈があるかはわからんがダメージはでかいだろう。今はヒルに注意が行ってる。やるなら今だ。
矢を首に差し込んだ。中の肉は柔らかいのかかなり奥まで刺さった。
「ガシュ……」
ハーデストがようやく声を出した。やっと生物らしさを出したな。つまりそこまで追い詰めているということだ。
ハーデストから距離をとった。ヒットアンドアウェイ戦法を使えばこいつは倒せそうだ。最初はこいつやべぇって思ってたが結構楽そうだな。
「行くぞヒル!」
「ワン!!」
笠松の恨みだ。さっさと地獄に行ってもらうぞ。
ハーデストがなぜかハサミを後ろに下げた。……どうゆう事だ。走ろうとした足を止める。なんで後ろに下げた。ハーデストの腕がミシミシという音をたてている。嫌な予感がする。俺の野生の勘が言っている。
「ヒル!逃げろ!こいつ何かしてくるぞ!」
走り出そうとしたヒルを怒鳴りつけて足を止めさせる。ヒルも何かに気がついたのかハーデストと距離をとった。俺も距離を取らないと。
バックステップをしたその瞬間だった。ハーデストがまるでボクシングでのストレートをするかのように腕を伸ばした。溜めていた力を解放したようだ。距離は約10mは離れている。ハーデストの腕はせいぜい2mぐらいだ。まず当たるはずがない。そうだ、普通は当たるはずがないんだ。
しかし俺の目に映ってきたのは目の前にまで来たハサミであった。ハーデストの足は遅い。近接戦闘は速いが足は遅いはずなのだ。だから俺が瞬きをした一瞬で移動するなんてできるはずはない。
なのになぜかハーデストのハサミが俺の胴体を切ろうと至近距離にまで迫っていたのだ。
あぁやばい。これ死んだわ。俺はゆっくりと流れゆく時間の中でそう思った。
「楓夜!!」
体に衝撃が走った。重力が横に向いたかのように吹き飛ばされる。意識の時間が戻り地面に転けた。
横を見ると手を前に出したマヤがいた。俺が居た場所だ。ハサミは俺でなくマヤを切ろうとしている。助けようと体を起こすがもう遅かった。
「マヤ!!」
俺がそう叫んだ瞬間、顔に血飛沫がかかった。赤い血だ。俺の血と同じ色だ。人間の血だから当たり前か。
目の前にはマヤの首が胴体と離れている姿が見えた。切れた首からはシャワーのように血が溢れている。頭が無くなったマヤの胴体は地面に崩れ落ちた。
ハーデストの腕はゴムのように伸びており、さっきの位置から10mは離れていたマヤの首を切り落としたのだ。
「……ハーデスト!!!!!!」
俺はハーデストに向かって怒りをあらわにした叫びを放った。
続く
「ありがとう笠松……お前のおかげで弱点はわかった」
化け物が俺に気づいた。残っている右腕で俺を追撃しようとハサミを振り上げた。
俺はスライディングをしてハーデストの股の間をすり抜けた。それと同時にハーデストのハサミが地面を叩き砕いた。体を捻ってハーデストの方に向く。
握りしめていた矢を下から差し込むようにして刺した。思った通りに矢は突き刺さり、ハーデストの肉の奥にくい込んだ。
「え!?刺さった!?」
マヤが驚いている。なんで刺さったのかわかっていないのだろう。まだ確定してはなかったから言わなかったが今ので確信に変わった。教えてあげないとな。
「こいつはカニのように見えるが本質はアルマジロみたいなものだ。アルマジロの装甲が全身にあるって思った方がいい」
「……それは分かったけどなんで刺せたの?尚更無理じゃない?」
「ミツオビアルマジロって丸くなるために隙間があるんだ。でもただ普通に隙間があるだけだと外敵から狙われた時にそこをやられてしまうだろ?」
「うん。それで?」
「写真で見た方が分かりやすいがあの甲羅って、上にちょっとずつずらして置いている紙のようにできてるんだよ。それで丸くなれば隙間は無くなる」
「逆に言えば丸まらなければ隙間がある?」
「そういうことだ。ましてやアルマジロより何倍も大きいこいつなら隙間が大きいはずだ。そして刺さった」
膝の裏に関しては恐らく足が曲げられるギリギリの所まで甲羅がついていたのだろう。腕は笠松が力を抜いた時にたまたま滑って切り落とせたんだ。たまたまとはいえ笠松の死は無駄じゃなかった。
「弱点が分かれば戦えるぞ……逆襲の時だ……」
矢を1本握りしめる。右目は見えないため弓は撃てない。近接戦しか俺はできない。死なない覚悟はできてる。桃を助けるまではまだ死ねないぞ。
「俺が多少時間を稼ぐ。ワイトとマギーの応急処置を頼んだよ」
「……わかった」
マヤが2人の元に走っていった。これでいい。できれば死人は少ない方がいいからな。1対1か。いつも通りだな。
ハーデストに向かって走った。ハーデストはまた追撃しようとハサミを左側に伸ばして力を溜めている。
ハーデストが横凪にハサミを振った瞬間に体を縮こめて地面に落ちる。髪の毛のてっぺんが切れた。
そのまま体を持ち上げると同時に矢をハーデストの膝に下から矢を突き刺した。やはり近接戦だと俺の方が強いんだ。
もう一本矢を取り出す。さっきのお返しだ。矢をハーデストの目に突き刺した。緑色の血がドバっと出てきた。まるでB級映画みたいだ。
突然腹に衝撃が走った。後ろに体が飛ばされる。柱に背中がぶつかった。口から唾液が反射的に出てくる。内蔵の位置がズレた気分だ。ハーデストの方を向くと、膝を前に上げていた。俺の腹に膝蹴りをしたのか。膝の全面は硬い甲羅だから威力は当たり前のように高いということか。
「ガルルルルァァ!!」
横からヒルが出てきた。鉄の破片を咥えてハーデストに走っていった。
「お前、なんかいないと思ったらそれ取ってきてたのか!」
ヒルがハーデストの切れた腕の断面に鉄の破片を突き刺した。破片はかなり尖っていて硬そうだ。
ハーデストがヒルを睨みつけた。ヒルも負けじと威嚇する。
「グルルルルルル……」
どっちも俺の事を無視してんな。チャンスではあるがなんか悔しい。
矢を新たに握りしめて、ハーデストの後ろに回りこむ。狙うは首元。こいつに頸動脈があるかはわからんがダメージはでかいだろう。今はヒルに注意が行ってる。やるなら今だ。
矢を首に差し込んだ。中の肉は柔らかいのかかなり奥まで刺さった。
「ガシュ……」
ハーデストがようやく声を出した。やっと生物らしさを出したな。つまりそこまで追い詰めているということだ。
ハーデストから距離をとった。ヒットアンドアウェイ戦法を使えばこいつは倒せそうだ。最初はこいつやべぇって思ってたが結構楽そうだな。
「行くぞヒル!」
「ワン!!」
笠松の恨みだ。さっさと地獄に行ってもらうぞ。
ハーデストがなぜかハサミを後ろに下げた。……どうゆう事だ。走ろうとした足を止める。なんで後ろに下げた。ハーデストの腕がミシミシという音をたてている。嫌な予感がする。俺の野生の勘が言っている。
「ヒル!逃げろ!こいつ何かしてくるぞ!」
走り出そうとしたヒルを怒鳴りつけて足を止めさせる。ヒルも何かに気がついたのかハーデストと距離をとった。俺も距離を取らないと。
バックステップをしたその瞬間だった。ハーデストがまるでボクシングでのストレートをするかのように腕を伸ばした。溜めていた力を解放したようだ。距離は約10mは離れている。ハーデストの腕はせいぜい2mぐらいだ。まず当たるはずがない。そうだ、普通は当たるはずがないんだ。
しかし俺の目に映ってきたのは目の前にまで来たハサミであった。ハーデストの足は遅い。近接戦闘は速いが足は遅いはずなのだ。だから俺が瞬きをした一瞬で移動するなんてできるはずはない。
なのになぜかハーデストのハサミが俺の胴体を切ろうと至近距離にまで迫っていたのだ。
あぁやばい。これ死んだわ。俺はゆっくりと流れゆく時間の中でそう思った。
「楓夜!!」
体に衝撃が走った。重力が横に向いたかのように吹き飛ばされる。意識の時間が戻り地面に転けた。
横を見ると手を前に出したマヤがいた。俺が居た場所だ。ハサミは俺でなくマヤを切ろうとしている。助けようと体を起こすがもう遅かった。
「マヤ!!」
俺がそう叫んだ瞬間、顔に血飛沫がかかった。赤い血だ。俺の血と同じ色だ。人間の血だから当たり前か。
目の前にはマヤの首が胴体と離れている姿が見えた。切れた首からはシャワーのように血が溢れている。頭が無くなったマヤの胴体は地面に崩れ落ちた。
ハーデストの腕はゴムのように伸びており、さっきの位置から10mは離れていたマヤの首を切り落としたのだ。
「……ハーデスト!!!!!!」
俺はハーデストに向かって怒りをあらわにした叫びを放った。
続く
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
Millennium226 【軍神マルスの娘と呼ばれた女 6】 ― 皇帝のいない如月 ―
kei
歴史・時代
周囲の外敵をことごとく鎮定し、向かうところ敵なし! 盤石に見えた帝国の政(まつりごと)。
しかし、その政体を覆す計画が密かに進行していた。
帝国の生きた守り神「軍神マルスの娘」に厳命が下る。
帝都を襲うクーデター計画を粉砕せよ!
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
ワルシャワ蜂起に身を投じた唯一の日本人。わずかな記録しか残らず、彼の存在はほとんど知られてはいない。
上郷 葵
歴史・時代
ワルシャワ蜂起に参加した日本人がいたことをご存知だろうか。
これは、歴史に埋もれ、わずかな記録しか残っていない一人の日本人の話である。
1944年、ドイツ占領下のフランス、パリ。
平凡な一人の日本人青年が、戦争という大きな時代の波に呑み込まれていく。
彼はただ、この曇り空の時代が静かに終わることだけを待ち望むような男だった。
しかし、愛国心あふれる者たちとの交流を深めるうちに、自身の隠れていた部分に気づき始める。
斜に構えた皮肉屋でしかなかったはずの男が、スウェーデン、ポーランド、ソ連、シベリアでの流転や苦難の中でも祖国日本を目指し、長い旅を生き抜こうとする。
鎌倉最後の日
もず りょう
歴史・時代
かつて源頼朝や北条政子・義時らが多くの血を流して築き上げた武家政権・鎌倉幕府。承久の乱や元寇など幾多の困難を乗り越えてきた幕府も、悪名高き執権北条高時の治政下で頽廃を極めていた。京では後醍醐天皇による倒幕計画が持ち上がり、世に動乱の兆しが見え始める中にあって、北条一門の武将金澤貞将は危機感を募らせていく。ふとしたきっかけで交流を深めることとなった御家人新田義貞らは、貞将にならば鎌倉の未来を託すことができると彼に「決断」を迫るが――。鎌倉幕府の最後を華々しく彩った若き名将の清冽な生きざまを活写する歴史小説、ここに開幕!
【アラウコの叫び 】第3巻/16世紀の南米史
ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎週月曜07:20投稿】
3巻からは戦争編になります。
戦物語に関心のある方は、ここから読み始めるのも良いかもしれません。
※1、2巻は序章的な物語、伝承、風土や生活等事を扱っています。
1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
youtubeチャンネル名:heroher agency
insta:herohero agency

やり直し王女テューラ・ア・ダンマークの生存戦略
シャチ
歴史・時代
ダンマーク王国の王女テューラ・ア・ダンマークは3歳の時に前世を思いだす。
王族だったために平民出身の最愛の人と結婚もできす、2回の世界大戦では大国の都合によって悲惨な運命をたどった。
せっかく人生をやり直せるなら最愛の人と結婚もしたいし、王族として国民を不幸にしないために活動したい。
小国ダンマークの独立を保つために何をし何ができるのか?
前世の未来知識を駆使した王女テューラのやり直しの人生が始まる。
※デンマークとしていないのはわざとです。
誤字ではありません。
王族の方のカタカナ表記は現在でも「ダンマーク」となっておりますのでそちらにあえて合わせてあります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる