ステンカ・ラージン 【軍神マルスの娘と呼ばれた女 5】 ―コサックを殲滅せよ!―

kei

文字の大きさ
上 下
6 / 59
ステンカ・ラージン Стенька Ра́зин

04 クィリナリスの古い銃

しおりを挟む
・番外編です。読み飛ばしても大丈夫な内容です。本編五話で委員長が響介に語っていた、中学の頃の律の話です。
・律と沢根の一人称視点で交互に語られるので少し読みづらいかもしれませんが、一人称「僕」が律、「俺」が沢根です。



 あれは中学三年の秋のことだった。当時僕が通っていた中学は、毎年十月に合唱コンクールが催されていた。普段なら学校行事の合唱なんかにそれ程意欲を持つ生徒はおらず、適当にやり過ごすのが恒例の行事だったのだが、その年、三年の僕のクラスは卒業前ということもあって妙に活気付いていた。
 僕のクラスの課題曲は“空駆ける天馬”だった。空駆ける天馬は混声三部構成のため、男子は全員が同じパートを歌う。僕は低い音程を周りに合わせて上手く歌う自信がなく、こっそりと声を出さずに、口だけをそれらしく動かして、歌うふりをしていた。いわゆる口パクというやつだ。周囲のクラスメイトは揃って知らんふりでもしているのか、それとも本当に誰も気づいていないのか、僕が声を出していないことを咎める者は誰もいなかった。
 一年や二年の頃は男子の殆どに意欲がなく、それを女子が徒党を組んで咎めるという光景が散見されていたが、どうやら今年の僕のクラスに限っては、珍しく男子の方がやる気らしい。周りのクラスメイトが各々声を張って響かせる中で、僕は一人だけ唇を金魚のように開閉させながら、この行事が早く過ぎ去ることばかりを願っていた。

---

 最後なんだからさ。そう言い出したのは、俺の後ろの席でいつも授業中に昼寝や落書きなんかをしている、とても真面目とは言い難い友人だった。
 これは後から知った話だが、そいつは高校には進学せず、中卒で家の仕事を継ぐことが決まっていたらしい。三年のクラスメイトは進学先も散り散りで、卒業したらもう顔を合わせないであろう連中もいる。「確かにそうだな」と俺が適当に相槌を打つと、周りの友人達も波紋を広げるように頷き始めた。
 合唱コンクールなんて絵に描いたような真面目な行事は、正直俺は好きじゃなかったし、大抵の男子生徒は同じことを考えていた。けれど改まって“最後だ”と言われると、何故かその退屈な行事が急に特別な物に思えてきたのだ。実際に俺たちが一丸になって歌い始めると、それまでふざけていた他の連中すら急に真剣になり始めて、やがて不揃いだった歌声が一つに纏まり始めた。
 練習を重ねるごとに合唱の質が上がっていくことに、次第に俺たちは高揚感を抱き始めた。気づけば俺のクラスは全員が放課後に他のクラスよりも長く居残るほど、合唱コンの練習に夢中になっていた。
 ただ一人、椀田の奴を除いて。
 妙な因果というものはあるものだ。俺はいけ好かない事に小学校の頃からこいつと幾度も同じクラスに属し、中学最後の年まで椀田と同じ教室の空気を吸う羽目になっていた。
 練習中、俺の前に立っている椀田はあからさまなくらいの仏頂面で、それこそ死んだ魚のような濁った目をしているくせに、生きた金魚みてえに口ばっかパクパクしやがって、まるで自分だけが違う世界にでもいるかのような様相だった。一人で周りと違うことをしているのに、恥なんかちっとも感じないのだろう。隠す気すらないのが手に取るようにわかるほど、明確な“フリ”をしていた。
 こいつはいつだってそういう奴だった。周りがどんな空気だろうとお構いなしで、常に自分一人の世界に篭っている。俺は椀田のそういう所が心底嫌いだった。
 たとえば何故それが気に食わないのか、もっと明確に説明しろなどと言われたとしても、俺は上手く言葉には纏められないだろう。が、嫌いなんて気持ちは所詮感情だ。理由なんか説明できなくても、俺は兎に角この椀田律という野郎が気に食わないのだ。ガキの頃にこいつと口喧嘩をしたなんてのは、ただのきっかけに過ぎない。口喧嘩から数年が経った今でも、俺は椀田のことが嫌いで嫌いで仕方がなかった。
 好きの反対は無関心とはよく言ったもんだ。俺以外のクラスメイトはみんな、椀田の口パクなんか知ってても何とも思っていないのに、俺だけは苛立ちを抑えられずにいた。それが顔にまで出てしまっていたのだろう、仲の良い友人から「一人くらい歌ってなくても大丈夫だろ。邪魔されてるわけじゃないんだから」と諭されて、俺はますます自分が惨めに感じた。
 嫌いな奴のことなんか気にするだけ無駄で、わざわざ苛立つほうがずっと損で馬鹿げている。中学三年にもなれば、たとえ子供だろうとそのくらいは学習していた。現に周りのクラスメイトはもう椀田のことを“そういう奴だから”と諦めているし、椀田の方に至っては、俺のことなんかちっとも気にかけていやしない。
 俺ばかりが未だ一方的にあいつを意識して、勝手に一人で苛立ち続けているのだ。その事実が、ますます俺の腹底を煮えたぎらせていた。

---

 合唱コンクール本番の、一週間ほど前のことだった。僕のクラスの伴奏担当だった女子生徒が、急に体調を崩したらしい。朝のホームルームで担任がそう告げると、教室はひそやかに騒ついた。
 僕のクラスの伴奏担当は、ピアノを弾ける人物が他にいないという消極的な理由で決まったものだった。それはつまり、代わりに弾ける人物がいないことを意味していた。何人かのクラスメイトが、担任に練習がどうなるのかを尋ねると、彼は残念そうな顔で「暫くは休みになります」と告げた。
 教室の騒めきが大きくなった。それまで珍しくあれだけ活気付いていたのだから、当然の反応だろう。本番直前のタイミングで急に練習ができなくなると、今までの努力は水の泡だ。担任は音楽教師に代奏を頼んでみると話していたが、正直その案への期待は薄かった。
 放課後になるとやはり担任は申し訳なさそうな顔をして、音楽教師はコンクール本番へ向けた他の仕事で手一杯であることを説明した。伴奏担当の体調がいつ回復するかもわからない。教室はもう騒つくでもどよめくでもなく、ただ納得した様子で落胆した空気に満ちていった。
「なあ、お前ピアノ弾けたりしない?」
「無理だよ。俺ピアノなんかドレミの歌しか弾けないよ」
「だよな。俺なんかドレミすらわかんねぇや」
 隣の席の男子生徒が、未だ諦めきれないのか小声でそう交わすのが耳に入った。後ろの方からは「こうなるなら、真面目に練習なんかしなきゃ良かったな」という嘆きまで聞こえてきた。
 昨日まで活気で溢れていた教室じゅうが、一転して失望で埋まっていく。そのあまりの居心地の悪さに耐えられず、僕は思わず右手を挙げていた。
「すみません。あまり上手くはないですけど……」

---

 あまり上手くはないですけど。などと悲観的な保身に走っておいて、椀田は楽譜を少し見るや否や鍵盤を軽々しく叩き始めた。その演奏は“上手くはない”なんていう謙遜には、微塵も似つかわしくないものだった。椀田は数分ほどピアノを弾くともう譜面を覚えてしまったらしく、楽譜を閉じて姿勢を正し「お願いします」と呟いた。
 椀田の唐突な行動に、クラスメイトの過半数がどよめいていた。なんたって、常日頃から明らかに一人だけやる気がないことを、咎められすらされないような奴だ。“そういう奴”が自らピアノの代奏者に立候補したとなれば、驚くのが自然な反応だろう。無論、俺だって困惑していた。
 指揮担当の生徒が合図を送るのを見やりながら、椀田は伴奏を弾き始めた。ごく自然に、さも当然そうに慣れた手つきでピアノを弾く椀田の姿に狼狽えながらも、クラスメイト達は皆後に続いて歌い始めた。呆けていた俺も、慌てて一小節後に続けて歌い出す。
 異様、または不可思議としか言いようのない気分だった。俺は小学校の頃から幾度も椀田と同じ校門をくぐってきたが、今まであいつがピアノどころか、楽器を弾けるだなんて話は聞いたことがなかった。ただあいつのことは、俺より賢くて、俺より裕福で、俺より容姿が整っていて、俺より成績も良くて、俺より家族に恵まれていて、俺が欲しているものを全て持っているような奴で──その程度にしか考えていなかったのだ。
 椀田の伴奏は完璧だった。その証拠に練習を終えると、早速クラスメイトの一人が「本番も弾いてくれ」と直談判し始める程だった。それほど整った旋律だった。あまりにも美しい弾き方だった。
 俺は胃の底の辺りに、再びかっと熱が込み上げてくるのを感じた。

---

 歌い終えた男子生徒の一人から、好奇的な表情で「本番も弾いてくれ」と頼まれて、正直悪い気がしなかったわけではない……と言えば嘘になる。
 けれど僕はかぶりを振った。あくまでもこれは練習だから、という前提ありきの演奏だった。自宅で一人、ただの趣味として弾いている時と同じで、『失敗しても構わない』という保険がなければ、僕はまともに鍵盤を叩くこともままならないのだ。練習とはいえクラスメイトの前で演奏できたことすら、僕にとっては奇跡のようなものだった。
 実際先程の自分の伴奏を振り返れば、あれは無事に弾き終えることにばかり必死で、ただ正確なだけの、気持ちの籠っていない演奏だったと評価をせざるを得なかった。合唱の伴奏なら、正確なだけでも充分かもしれない。しかし僕の場合に限っては、この矮小な精神性が誘因し、舞台に立ってしまうとその正確さすら危うくなるのだ。その程度の分際が壇上に上がるなど、無謀も甚だしいだろう。
 別にこの程度は上手くない。本番なら僕はもっと下手になる。だから弾けない。そう言い放って僕が拒否すると、男子生徒は大層気を悪くしたらしく、拗ねた様子で退いていった。話が長続きするのが嫌で、あえて嫌味な言葉を選んだのだから、当然の流れだった。
 後方で「これだから椀田は」と自分を揶揄する声が聞こえて、僕はひっそりと肩を震わせた。
 人に嫌われるのも、失望されるのも、頭ではもはや慣れきっているつもりだった。けれど未だ心の方は追いつかないらしい。胸のあたりが重くなるのを感じて俯くと、不意に横から声がかかった。
「ねえ、椀田くんだよね」
 僕は黙ったまま顔だけを声の方へ向けた。女子生徒が柔かな笑みをたたえて、僕の席の横に立っていた。僕が返事もせずに硬直していると、彼女は笑みを緩めながら話を続けた。
「急にごめんね。さっきの伴奏、凄く上手かったから……」
「別に上手くはないよ」
 僕は敢えて彼女の言葉を遮った。こうすれば彼女も僕に失望して、離れてくれるだろうという算段だった。
 しかし、どうやら彼女は例外のようだった。
「うん、そっか……さっきも田中くんとそんな話をしてたもんね。もちろん本番までお願いをするつもりなんてないよ。けど、あの演奏は良かったよってことは伝えたかったの」
 女子生徒は再び笑みを作った。いかにも人から好かれそうな、愛嬌のある仕草だった。「そう」と僕は正反対に全く愛想のない返事を突きつけたが、それでも彼女はさらに話を続けた。
「だから、ありがとう椀田くん。弾いてくれて……」
 彼女の唐突な感謝に、僕が否定や反応を返すよりも先に、帰り際の女子生徒達が「飯野さん、早く帰ろう」と彼女を急かすのが聞こえた。
「飯野さん、呼ばれてるよ」
 僕はそれだけ言ってから再び俯いて、押し黙った。飯野さんは「うん。ありがとう。じゃあね」と二度目の謎の感謝を述べてから、僕から離れていった。
 僕はああいう手合いはどうにも苦手だった。優しい人にはこちらが冷たくすればするほど、罪悪感ばかりが募ってくる。そんな自分勝手で浅ましい考えが脳裏をよぎって、僕はますます気が重くなった。

---

「だから言ったろ委員長、椀田なんかに話しかけない方がいいって」
 廊下を歩く委員長──こと飯野の背に向けて、俺は思わずそう声をかけた。飯野は振り向くと、歯痒そうに苦笑した。
「あはは、そうかも。私、椀田くんに邪魔しちゃったみたい」
「そうじゃねえよ。どっちかっつうと、邪魔されたのは委員長の方だろ」
 俺がかっとなって言い返すと、飯野はやはり困った様子で「そうかなあ」と呟いた。飯野の隣に並ぶ女子生徒が続いてフォローを入れる。
「そうだよ。あんな突き返し方する子に、わざわざ感謝なんか言わなくていいよ」
「勿体ないよね、椀田くん。顔は綺麗だし、お金持ちらしいのに」
「ねぇ。あの性格は流石にちょっと、ね」
 気づけば話の軸が逸れていき、女子生徒達は椀田を肴に井戸端会議を始める始末だった。俺がため息をつくと、飯野がぽつりと呟いた。
「椀田くん、悪い子じゃないと思うんだけどな」
 俺はうっかり舌打ちをしそうになって、抑えようと歯を食いしばったのを、誤魔化そうと戯けて笑ってみせた。
「委員長。あんた、とんだお人好しだよ」
 てめえは性善説信者かよ。本当はそう言いたかったのを、なんとか堪えた。この人の良すぎる女子には、その言い方はあまりに辛辣すぎるだろう。そう選び直したところで、それでも俺の口から出るのは皮肉めいた台詞だった。
 飯野はそんな俺にすら、相変わらず気の良い笑みを向けてくる。
「沢根くんもありがとう。心配してくれて」
 やはりこいつはとことん人を見る目がないらしい。恐らくこの苦笑いはもう誤魔化せなかっただろうが、彼女のような善人は俺の真意になんか気づくはずがないだろう。
 胃の底が、焼け爛れたようにひりつくのを感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

1333

干支ピリカ
歴史・時代
 鎌倉幕府末期のエンターテイメントです。 (現在の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』から、100年ちょい後の話です)  鎌倉や京都が舞台となります。心躍る激しい合戦や、ぞくぞくするようなオドロオドロしい話を目指そうと思いましたが、結局政治や謀略の話が多くなりました。  主役は足利尊氏の弟、直義です。エキセントリックな兄と、サイケデリックな執事に振り回される、苦労性のイケメンです。  ご興味を持たれた方は是非どうぞ!

夢占

水無月麻葉
歴史・時代
時は平安時代の終わり。 伊豆国の小豪族の家に生まれた四歳の夜叉王姫は、高熱に浮かされて、無数の人間の顔が蠢く闇の中、家族みんなが黄金の龍の背中に乗ってどこかへ向かう不思議な夢を見た。 目が覚めて、夢の話をすると、父は吉夢だと喜び、江ノ島神社に行って夢解きをした。 夢解きの内容は、夜叉王の一族が「七代に渡り権力を握り、国を動かす」というものだった。 父は、夜叉王の吉夢にちなんで新しい家紋を「三鱗」とし、家中の者に披露した。 ほどなくして、夜叉王の家族は、夢解きのとおり、鎌倉時代に向けて、歴史の表舞台へと駆け上がる。 夜叉王自身は若くして、政略結婚により武蔵国の大豪族に嫁ぐことになったが、思わぬ幸せをそこで手に入れる。 しかし、運命の奔流は容赦なく彼女をのみこんでゆくのだった。

Millennium226 【軍神マルスの娘と呼ばれた女 6】 ― 皇帝のいない如月 ―

kei
歴史・時代
周囲の外敵をことごとく鎮定し、向かうところ敵なし! 盤石に見えた帝国の政(まつりごと)。 しかし、その政体を覆す計画が密かに進行していた。 帝国の生きた守り神「軍神マルスの娘」に厳命が下る。 帝都を襲うクーデター計画を粉砕せよ!

西涼女侠伝

水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超  舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。  役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。  家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。  ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。  荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。  主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。  三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)  涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。

大航海時代 日本語版

藤瀬 慶久
歴史・時代
日本にも大航海時代があった――― 関ケ原合戦に勝利した徳川家康は、香木『伽羅』を求めて朱印船と呼ばれる交易船を東南アジア各地に派遣した それはあたかも、香辛料を求めてアジア航路を開拓したヨーロッパ諸国の後を追うが如くであった ―――鎖国前夜の1631年 坂本龍馬に先駆けること200年以上前 東の果てから世界の海へと漕ぎ出した、角屋七郎兵衛栄吉の人生を描く海洋冒険ロマン 『小説家になろう』で掲載中の拙稿「近江の轍」のサイドストーリーシリーズです ※この小説は『小説家になろう』『カクヨム』『アルファポリス』で掲載します

【淀屋橋心中】公儀御用瓦師・おとき事件帖  豪商 VS おとき VS 幕府隠密!三つ巴の闘いを制するのは誰?

海善紙葉
歴史・時代
●青春真っ盛り・話題てんこ盛り時代小説 現在、アルファポリスのみで公開中。 *️⃣表紙イラスト︰武藤 径 さん。ありがとうございます、感謝です🤗 武藤径さん https://estar.jp/users/157026694 タイトル等は紙葉が挿入しました😊 ●おとき。17歳。「世直しおとき」の異名を持つ。 ●おときの幼馴染のお民が殺された。役人は、心中事件として処理しようとするが、おときはどうしても納得できない。 お民は、大坂の豪商・淀屋辰五郎の妾になっていたという。おときは、この淀辰が怪しいとにらんで、捜査を開始。 ●一方、幕閣の柳沢吉保も、淀屋失脚を画策。実在(史実)の淀屋辰五郎没落の謎をも巻き込みながら、おときは、モン様こと「近松門左衛門」と二人で、事の真相に迫っていく。 ✳おおさか 江戸時代は「大坂」の表記。明治以降「大阪」表記に。物語では、「大坂」で統一しています。 □主な登場人物□ おとき︰主人公 お民︰おときの幼馴染 伊左次(いさじ)︰寺島家の職人頭。おときの用心棒、元武士 寺島惣右衛門︰公儀御用瓦師・寺島家の当主。おときの父。 モン様︰近松門左衛門。おときは「モン様」と呼んでいる。 久富大志郎︰23歳。大坂西町奉行所同心 分部宗一郎︰大坂城代土岐家の家臣。城代直属の市中探索目附 淀屋辰五郎︰なにわ長者と呼ばれた淀屋の五代目。淀辰と呼ばれる。 大曽根兵庫︰分部とは因縁のある武士。 福島源蔵︰江戸からやってきた侍。伊左次を仇と付け狙う。 西海屋徳右衛門︰ 清兵衛︰墨屋の職人 ゴロさん︰近松門左衛門がよく口にする謎の人物 お駒︰淀辰の妾

鎌倉最後の日

もず りょう
歴史・時代
かつて源頼朝や北条政子・義時らが多くの血を流して築き上げた武家政権・鎌倉幕府。承久の乱や元寇など幾多の困難を乗り越えてきた幕府も、悪名高き執権北条高時の治政下で頽廃を極めていた。京では後醍醐天皇による倒幕計画が持ち上がり、世に動乱の兆しが見え始める中にあって、北条一門の武将金澤貞将は危機感を募らせていく。ふとしたきっかけで交流を深めることとなった御家人新田義貞らは、貞将にならば鎌倉の未来を託すことができると彼に「決断」を迫るが――。鎌倉幕府の最後を華々しく彩った若き名将の清冽な生きざまを活写する歴史小説、ここに開幕!

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

処理中です...