ダンスダンスダンス!!

カナブン

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十二話

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「私たちはこの国の警備を行っている」

ローブ1が答える。

なるほど?警備隊の見回りに運悪く見つかってしまったということか…。

「そうか。私はどうなる?」

冷静に。彼らの考えを読んで上手く立ち回らなくては。

私の回答にローブ1は質問を返す。

「失礼だか、女性だろうか?夫たちはどうした??」

んん???
女性かどうかを聞かれた!?どういうことだ!?私はそんなにゴツい顔をしていた!?間違っても美人ではないがそこまでではないぞ!?目は小さいがな!

そして、夫とは?

「…どういう意味だろうか」

内心動揺したが声には影響なかったようで淡々と回答することができた。

「失礼。あなたは美しい。」

キョ!?

「体格も、声も女性に思えるが、女性であれば夫達がいるはずだ。一人で外を出歩いたりはしないし、させないはず。しかし、あなたは一人だ。また、魔力がとても多い方と推測する。なので、美しい男性ではないかと確認をさせていただいている。」

訥々とローブ1が質問の意味を解説してくれているが、正直「あなたは美しい」の後からちょっと、いやだいぶ内心は荒れていた。

うむ?夫がいれば、不自然ではなかったのか?この世界の女性達は夫がいないと外も出歩かない、と…。そして、話を聞く限りその世界では魔力が多いのは男性の方なのか??色々と疑問が浮かぶ。

しかし、回答はしなければ…。頭を働かせるが上手い回答が思い浮かばない。むむ、ここは無言が最適解か??

うなれ私の交渉力!!

ふむ。…彼らは私のことを美しいと言ったな??


「…見逃してはもらえまいか」

くらえ、視線を下に落として微かに震える声での懇願!!


「…ッ」


…うそでしょ。くらったのかよ。

私の少々わざとらしい佳人の震え声は5人全員の動揺を誘えたらしい。息を呑む声が周りから聞こえてきた。

「…事情を。事情をお聞かせ頂けないでしょうか」

敬語!?ローブ1の話口調が変化した。

お!?キタコレ!?このまま同情誘えばワンチャン逃げれるか!?

ローブ1の声に視線をあげ、意識して困惑したような、でも微かに縋るような表情を顔面に貼り付ける。

「あなた方に事情を…??」

しかし問題は何を喋ればいいのかである。

「はい。教えていただければ何かお力になれることもあるかと。」

「え、たいちょー。見逃すの!?」
「しっ!黙って聞いてろ!」

周りが何やらざわめき出した。
のっぽローブが体を揺らして驚きの声を上げ、それを無言のローブ2?3?もうどちらか分からなくなったわ!が嗜めている。

交渉力のおかげか、そのざわめきもしっかりと耳に届いていたため、それを横目に聞きながらもしっかりとローブ1の目があるであろう位置をしっかりと見つめ…スッと目を逸らす。

「何が聞きたい」

小さく呟く。

あたかも、そちらの説得に応じたかのように。心を開いたかのように。そして、その実聞かれたことにだけ回答するようにして自らの情報を絞れるように。…交渉力すげぇな。


「…まず。東の国、ニホンとおっしゃいましたか。そこからこられた理由はなんでしょう??」

…だよね!うーん…

「…私にもわからない。気づけばここに来ていた。」


正直に答えることにする。だいぶ途中は省いているが。女神の話をしていいものかも判別もつかない今、できるのは正直に話せるとこだけを話すこと、だ。信用を得られないかもしれない情報はなるべく話さない。


「気づけば??その前は何を??」

「いたって普通の毎日を。昼ごはんを食べ一服していた。」

「一服?お茶ですか?」

なるほど、一服していたはお茶になるのか。確かに、お茶を一服とは言うが…

「いや、タバコだな。私の娯楽だ。」

「タバコ。あぁ、シガレットですか。」

後日知るのだが、この世界ではタバコ、こちらでいうシガレットは上流階級の方々のみ嗜む最近の娯楽だったらしい。ここで私は上流階級の箱入り娘との間違った称号を得たらしい。…なるほど墓穴…。

「ああ」

「…なるほど。そのあとは??」

ローブ1の声に納得したような響きが混じり始めたのに、内心首を傾げつつ話を続ける。

「その後も何もだな。気づいたら草原の中。持ち物もその時持っていたもののみ。あぁ、狼に気付かれなんとか倒したな。」


ローブ達にまたしても動揺が走る。

「狼を…。どのように倒された??」

「穴を掘りそこに落として水で溺れさせた。…狼の倒し方など知らないのでな。」

自嘲気味に答える。いやだって、夢中だったのだ。それくらいしか考え付かなかったし…。

「ちなみにその狼は??」

「どうしたものか分からなかったため持っている」

「持っている!?」

んん?いけなかっただろうか?いや、しまった。これでは見れせてくれのなが、れ…

「その、見せていただでも??」

ですよねー!!しくった!!アイテムボックス持ちがバレる!!交渉力ー!!ちくしょー!!

「…その、すまない。見せるのは構わなのだが、あー、その。これについては大事な人が私のために与えてくれたもので。…秘密にすると約束してくれるか??」

こうなったら必殺秘密にしててくれビームである。

「いや、そうですな。どのように持たれているのかはおっしゃらなくて結構です。狼の死亡と頭数だけ確認させていただいても?」

お?言わなくていいのか?まぁ、大事な人女神様とか言われたら突っ込みづらいよね!よし!

少し離れるように伝え、狼を出していく。合計五匹。ちなみに、出す時は頭の中でアイテムボックスを選択しながら腕を一振りした。…魔法っぽく見えるように。


狼達を見たローブ1以外のローブ達は驚きの声をあげ、すぐにその死亡と死亡方法を確認していた。

「なるほど。お一人でも相当に魔力をお持ちの方ですね。またその使い方も独特だ。」

未だこちらから視線を外さず、さりげなく観察し続けているローブ1が評する。

ふむふむ。…ミッション警戒心を解く。は失敗かな。
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