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十話
しおりを挟む森の中を、浮力を使いながら一直線に移動する。正確には木々が進路を邪魔して一直線というわけにはいかないがおおむね直線で移動している。森を抜けるにはまだほど遠いが。
顔や体に木の枝がバシバシぶつかるが気にしてはいられない。なぜなら、今私は完全に追われているからだ。誰にって??馬車の人たちにだよ!!
跡を追う5人は私がいる方向にほぼまっすぐ近づいてくる。
洗浄をかけて魔力も匂いも消しているのにだ。
なんでだ!?
いや、理由は分かる。さっきから顔や体にぶつかっている枝。その音を辿ってきているのだ。
距離を稼ぐために、明らかにぶつかったらやばそうな太い枝や幹以外、結構無視して飛行してるからな。そもそも、おデブちゃん体形舐めんなって話だ。木々の間をすりぬけるような高度な技術を披露できるほどスマートじゃない。それに、私が余裕をもって通れるほどの隙間はそもそもあまりない。結果、木々の上部をガサガサと突破していくスタイルになるのだ。うん、あたると結構いたい。正直泣きそう。ゴーグル欲しい。たまに目の近くに枝が来るのがとても怖い。
洗浄で洗い流す対象に過去の私の行動履歴も指定しているので、私が発した音も消されないかなとうっすら期待していたがあまり消せなかった。そして、その音を辿って追われている。
多分、音が発生してから洗浄というそのわずかに発生するタイムロスが原因で消し切れていなんだろう。洗浄が効果を発する速度よりの音の伝達する速度の方が早いということなんだろうな。ただ、何もないよりは小さくなっていると思いたい。
まぁ、あれだよ。何が言いたいかっていうと。
助けてぇぇ!!!!!!捕まるぅっ!!いやぁああああ!!!
…って感じ。マジで泣きたい。心の中ではすでに号泣だ。お菓子が欲しくて欲しくて全力で床に転がる三歳児とためはれる自信がある。
三十路超えた前世の記憶があるから何とか無言で踏ん張ってられてるけどな。泣いたって現実は変わらない。知ってる。大人だもん。
最初まだは良かったんだ。木をよけながら気付かれないように、高度を保ちつつそーっと移動。匂いや、魔力の痕跡で後を追われないよう洗浄を薄く重ね掛けしながらゆっくりと移動していた。イメージは、頭から洗浄の薄い膜をかぶっての移動だ。
その時は進行方向、周りの生体反応と馬車の動向を二窓で確認しながら木々を避けつつ飛ぶ余裕がまだあった。することは多かったが、移動自体はゆっくり慎重に進めれば良かったからだ。
しかし、それも馬車が街道を森に向けて離れるまでだった。そう、あろうことか馬車は街道を離れ森の近くに停車し、そこから降りた5人全員が森に入ってきたのだ。
その時点で、一度近場の木の枝に降りて調節をかけた。二窓をやめ、一枚の地図に自分と馬車が入るように変更。一目で自分と彼らの距離が分かるようにした。
そこまでやって、仕方なく移動速度を上げることにした。彼らは明らかに私を追いかけてきている。捕まったらどうなるか分からない以上、逃げるために距離を稼がないといけない。
そう思った私は、浮力にそそぐ魔力を少し多めにし…
目の前の枝にぶつかって、地面に向かって落下していた。
あの時は何が起こったのか全然理解できなかったな。気が付いたら地面に向かって急降下中で。ぶつかったショックで消えてしまってた魔力を慌ててちょこっとだけ再起動。
浮力で落下スピードを落としてギリ地面に激突は免れた。フワリと降り立った地面にホッと一息ついて気付かれてないか地図を確認。
き、気付かれてるぅうう。ですよねぇぇええ!!結構いい音しましたもんねぇええ!!!
追われていることに動揺した私が魔力の加減を間違えてぶつかった先は、葉っぱの密集した枝の先の方だったので、太い枝にぶつかって打撲、は無かったが葉っぱが密集していた分それはそれは盛大に音がした。
ガサガサガサッ!!
まぁ、気付かれるよね。森に入ってからゆっくりと移動していた5人組が、一斉に私の方向に向けて動きだしたのが確認できた。
ひぃ。ロックオンされたぁ!!早い早い早い!!
慌てて飛び上がり、決めていた北東へのルートを再びなぞり始めて、、現在に至るというわけだ。
しかも、私にとって残念なことにこの5人、森での移動スピードが異様に早い。え、マタギの人たちかな?ってくらい早い。森って普通は走りにくいもんなんじゃないの??
どれくらい早いかっていうと、すでに後ろからちらほら声が聞こえる距離に詰められているくらいには早い。
「こっちだ!!」「いたぞ!!」っていう声がね。後ろからちらほら聞こえてくるんだ。
…ひぃん…やだぁ…
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