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一話
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最後にうっすら覚えている記憶は、救急車のサイレンの音と、震える声で子供の安否を確認する自分の声。
そして、それに応える涙まじりの回答と、必死な問いかけ、だった。
「…ゲホッ…こ、こども…は……?…」
「ッツ…無事です!!うちの子は無事です!!ありがとうございます!!ありがとうございます!!
ごめんなさいっ!!ごめんなさい!!ありがとうっ!!」
「すみません!!どいてください!!どいてください!!
…ッ、もしもしっ!?おねぇさん!?
まだ意識失っちゃダメですよー!!しっかりしてくださいねー!!
お名前言えますかー!?」
思うに、ギリギリ救急隊員の人が来るのには間に合ったんだろう。
でも、必死に問いかけるその質問に答えられたかどうかまでは覚えていなかった。
お昼休みに、会社近くのコンビニまで食後のタバコを吸いに出かけた時だった。
一本吸って、戻って歯ぁ磨いて、そしたら昼休み終了だな、なんて考えながらコンビニに向かって歩いていた私の少し前を近くの公園から帰るところなんだろう親子連れが歩いていた。
小さな男の子と、ちょっとぽっちゃりした同年代くらいの母親。ベビーカーを押していて、同じ年頃でもこうも違うものかと独身で結婚の予定すら無い自分の状況となんとなしに較べながら、ぼんやりと眺めていた。
そう、本当にぼんやりとだったのだ。
そして。
ベビーカーにかけられた母親の大きなバックが揺れ、小さなソフトボールが転がり落ちたのに気がついてあ、と思った。
あ、そっちはまずい。と。
転がったボールはテンテンと、勢いを無くしてからはコロコロと、親子連れの後方を車道目指して転がっていった。
後ろを見た男の子がそれに気付いて走り出す。その動きに気付いた母親が慌てて止めようとし。
気付いた時には、男の子はもう走っていたし、それにベビーカーを押していたからというのもあるかもしれない。
少し。
少し間に合わなかった。
こちらに向かって来る車。
そのスピードと、男の子との距離。目に映る情報を認識した瞬間、背筋を冷たいものが走った。
考えるよりも先に体が動いた。
引き延ばされたような一瞬。
小さな体が見えて…
そして、私は間に合った。間に合ったらしい。
そう、それだけのことだ。
気付けば、真白な空間に一人漂っていた。寒くも暑くもない。眩しくも暗くもない。気を抜くと自分という認識が、感覚が膨張し、その端からサラサラと消えていってしうようだった。輪郭がどんどんと曖昧になってゆく。
そして、それが良いことなのか悪いことなのか、それすらもうぼんやりとして。
溶けてゆく意識をそのままぼんやりと眺めていた。
死後の世界なのだろうか?
ということは、自分は間に合わなかったのだろうか?あるいは、まだ間に合うが体に戻れていないだけ?幽体離脱なのか?
噂の三途の川とやらは渡らなくて良いのだろうか?花畑パターンなのか?
迎えに来てくれるという親戚類は現れないのか?
あぁ、妹はどうしているだろうか?
悲しんではいないだろうか?
悲しんでは欲しくないなぁ…
いや、悲しまないのは無理か…
時間が経つのを祈ろう…
もしかして、なんとか頑張れば妹の守護霊になれたりするのだろうか?
それは、それで楽しいかもしれない…
なにを頑張れば守護霊になれるのだろうか?修行的ななにかがあるのだろうか?
守護霊になるための修行。あるならトライしてみたいものだ。
とりとめのない思考が生まれて、生まれた端から流れるように消えていく。
…まぁ、良い。
とりあえず、子供は助かったんだろう。
色々と心残りはあるが、その一点のみでも少なからず心は慰められる。
まぁ人生こんなものだ。私がいてもいなくても世界はあり続けるのだろうし。
次だ。次。早く状況を把握したい。
それにしても、いつまでこのまま漂い続けるのだろう??
なんらかの展開が欲しいな…
まだ、この状況になってあまり時間が経ってないように思えるが、それは私だけの体感だけかもしれないし…
「…優しい子。優しいだけでなく勇敢ね」
誰…??優しそうな…
姉みがすごい。いい女感が滲み出てる。
見習いたいものだ…
いや、もう遅いか。見習うなら来世だな。うん、来世来世。あるのかは知らないが。
瞬間、声に意識が集中し。それもまた散らばり始める。
褒められた…??のか??
褒められたのなら嬉しいが、勇敢、だっただろうか??
子供の家族にとってはそうだろうが、私の家族にとってはそうではないだろう。
馬鹿なことをしてと、怒られる案件だ。
まぁ、うちの家族なら泣いて、怒って、それから…許してくれるだろう。多分。大丈夫。
「家族を愛して…信頼してるのね??」
また声がした。家族??家族か。
ふふ。そうだね。良い家族だと思う。
間違いなく私は愛されて育った。
色んなことがあったけど、自慢の家族だ。
しっかりしてるけど、たまに信じられないくらいズボラな母と、優しいけど、たまに優しすぎて面倒ごとを断れなくて怒られる父。
家族一口煩くて、家族一心配性な兄。
そして、妹。
あぁ、私の可愛い妹。
不器用で、口下手で、でも口を開けば周りに気を使った言葉ばかりで。
自己評価が低いのが心配な、歳の離れたあの子!!
あの子は、今どうしているだろうか??
悲しませてしまっただろうな。
あぁ、会いたいな…
会えるのだろうか??
会えたところで意思の疎通は可能なのだろうか??
家族のことをつらつらと考えていると、違和感を感じた。
ばらけて溶けていくばかりだった思考がまとまり始めたのだ。この場所に来てから初めての感覚だった。
「妹さんへの想いが特に強いのね。…会うのは…ちょっと厳しいかもしれないわ…」
やはり、声がするな。私に話かけている?
次の展開、というやつだろうか?
そうか、会えないのか。そうか…
やはり、私は死んでしまったのかな??
情報が欲しいなぁ…情報を…
「あら、思考がまとまり始めたわね。ゆっくりで良いわ。私がわかる??」
優しい声。
ついさっき聞いたような気もするし、かなり前だったような気もする。
「ふふ、優しい声に聞こえるのね??嬉しいわ。ほら、もう少し会話に集中してみて」
会話に。
そうだね、情報が欲しかったんだ。
どこから聞こえてくるんだろう??
自分の輪郭が少しづつ濃くなってゆくのがわかった。
溶けて曖昧になりつつあった自分とその他との境界が徐々に戻ってくる。
慣れ親しんだ自分の体の形。広がり続けていた思考や、記憶が少しづつその体の中に収納されていく。
と、自分しか感じられなかった空間にもう一つ別の存在がいるのが感じられた。
「こんにちは。初めましてね。」
艶々と青に輝く長い髪はグラデーション。生え際の深い青が、毛先近くなるにつれ淡くなってゆく。
白い肌に、吸い込まれそうなモスグリーンの瞳が美しい美女がこちらに微笑んでいた。
うん、その肉感的な体と相まってすごく姉みがする。いわゆるいい女ってやつだ。うらやましい。
「あ、、えーと…?…こんにちは?」
声がでた。久しぶりに体をつかった気がする。声を出すという行動が新鮮に感じられ、そして懐かしかった。
体の感覚が戻ってくると同時に、目でものを見て、鼻口で呼吸をし、口を開いて会話をする…など生きていたときには極々当たり前にしていた行動を徐々に思い出した。
漂っていたときには、思い出しもしなかった生物としての行動。忘れているという感覚さえなかった。
「ふふ、こんにちは。色々と混乱しているでしょうけど、まずは私の説明を聞いてくれる??」
いまだ、取り戻したばかりの自分の輪郭に多少の違和感はあったが、説明という言葉に興味を惹かれる。
「あ、あー、そうですね。お願いします。」
「ありがとう。
じゃぁ、そうね。最初に。」
目の前のお姉さんは、困ったように眉を下げて言った。
「薄々気づいてるかもしれないけど、あなたは死んでしまったわ」
「あー、やはりですか…」
なんとなく、予測はついたのでアッサリと受け入れる。
では説明というのは、私の死亡確定報告とその後の流れのことなんだろうか??
「そうね。今後についてなんだけど…
あなた、もう一度あなたとして生きてみない??」
…ん??
同じ人生をまた繰り返すということ??記憶を持ち越して、ということかな?であればかなり有利な人生になることはまちがいないないだろうが…もしそうなら、二回目の人生は勉強もっと頑張ろう。うん、そうしよう。
でも、それはなんの意味があって??
「いえいえ、違うのよ。あなたの記憶はそのままで違う世界、違う人生で生きてみないってこと」
「違う世界で違う人生??…それは…」
というか、考えが筒抜けだな。流石神様…
もしかして、いわゆる異世界転生ってやつだろうか??
前の人生、終わってしまった人生でそういった類の小説は好きだった。知識はある。無駄にある。
体験できるなら体験したい。でも、本当にあり得る話なのだろうか??
「そうそう。その異世界転生?人気よね?私も大好きでみてるけど、想像力の豊かさに圧倒されるわ。ふふふ。
で、どうかしら??あなたは、死ぬ前に自分の命を投げうって子供の命を助けたわ。その善行に対してご褒美ってことで転生権をあげたいの。その、、まぁ、、少しお願い事があって、、それを引き受けてくれれば、にはなるんだけど。
今までに得た知識や経験を生かして、他の世界で生きてみない??」
…なんだか、すごく楽しそうな話になってきた…
正直にいおう。ものすごくワクワクする。
けど…お願い事ってんだろう?
え、魔王と勇者的な感じ?もしくは、わたしが聖女さまで…的な??
どちらも読み物としては大好物だが、実際自分がなるかと聞かれると答えづらい大変な役割な気もするな…
私は、自分の事は自他共に認めるダメ人間だと思っている。勇者なんて絶対にガラじゃない。
できれば、のんびりと平和に錬金術師や薬師のような生産系職で細々と穏やかに暮らしていきたいが…
「ほ、本当ならとても楽しそうだと思いますが、その、異世界?は自分で選べたりするんでしょうか??あと、えーと、チートとかすごいスキルとか、も、もらえたりするんでしょうか!?」
おぉう、自分で言ってて興奮してしまった。
吃ってしまってちょっと恥ずかしい…
「うふふ、提案を喜んでもらえて嬉しいわ。そうね、チートや、スキルと呼ばれるものに関してはある程度の希望なら。
でも、ごめんなさい。行ける世界は限られてるの。
元いた世界とはかなり違うから戸惑うことも多いかもしれないわ。
そこで役に立つだろうものは私からの加護としてつけさせてもらいます。」
加護かぁ、ってことは目の前のこの女性はその世界の女神様とかなんだろうか??だとしたら、一神教かな??ほかにもいて多神教なのかもれない。
いや、それより。今は、もらえる能力や行く世界が決まる大事な場面だ。
しっかり、交渉せねば。異世界転生ものの多くでは、最初に会った神様とは転生後、連絡が取れなくなることが多い。例外として、祠や教会に行けば会えるような条件付きのやりとりが可能なものもあるが、今回それが使えるかもわからないし。不便そうに感じるし。転生した後、こんなはずでは…ってなったらきついからな。
ここにいつまで居れるかはわからないけど、最大限の交渉をしよう。
女神さま、、名前が分からないので女神さまと呼ぶ。は、ニコニコと考えがまとまるの待っていてくれた。
「わかりました。聞かせてください。」
「ええ、じゃあ、まずは…」
そして、それに応える涙まじりの回答と、必死な問いかけ、だった。
「…ゲホッ…こ、こども…は……?…」
「ッツ…無事です!!うちの子は無事です!!ありがとうございます!!ありがとうございます!!
ごめんなさいっ!!ごめんなさい!!ありがとうっ!!」
「すみません!!どいてください!!どいてください!!
…ッ、もしもしっ!?おねぇさん!?
まだ意識失っちゃダメですよー!!しっかりしてくださいねー!!
お名前言えますかー!?」
思うに、ギリギリ救急隊員の人が来るのには間に合ったんだろう。
でも、必死に問いかけるその質問に答えられたかどうかまでは覚えていなかった。
お昼休みに、会社近くのコンビニまで食後のタバコを吸いに出かけた時だった。
一本吸って、戻って歯ぁ磨いて、そしたら昼休み終了だな、なんて考えながらコンビニに向かって歩いていた私の少し前を近くの公園から帰るところなんだろう親子連れが歩いていた。
小さな男の子と、ちょっとぽっちゃりした同年代くらいの母親。ベビーカーを押していて、同じ年頃でもこうも違うものかと独身で結婚の予定すら無い自分の状況となんとなしに較べながら、ぼんやりと眺めていた。
そう、本当にぼんやりとだったのだ。
そして。
ベビーカーにかけられた母親の大きなバックが揺れ、小さなソフトボールが転がり落ちたのに気がついてあ、と思った。
あ、そっちはまずい。と。
転がったボールはテンテンと、勢いを無くしてからはコロコロと、親子連れの後方を車道目指して転がっていった。
後ろを見た男の子がそれに気付いて走り出す。その動きに気付いた母親が慌てて止めようとし。
気付いた時には、男の子はもう走っていたし、それにベビーカーを押していたからというのもあるかもしれない。
少し。
少し間に合わなかった。
こちらに向かって来る車。
そのスピードと、男の子との距離。目に映る情報を認識した瞬間、背筋を冷たいものが走った。
考えるよりも先に体が動いた。
引き延ばされたような一瞬。
小さな体が見えて…
そして、私は間に合った。間に合ったらしい。
そう、それだけのことだ。
気付けば、真白な空間に一人漂っていた。寒くも暑くもない。眩しくも暗くもない。気を抜くと自分という認識が、感覚が膨張し、その端からサラサラと消えていってしうようだった。輪郭がどんどんと曖昧になってゆく。
そして、それが良いことなのか悪いことなのか、それすらもうぼんやりとして。
溶けてゆく意識をそのままぼんやりと眺めていた。
死後の世界なのだろうか?
ということは、自分は間に合わなかったのだろうか?あるいは、まだ間に合うが体に戻れていないだけ?幽体離脱なのか?
噂の三途の川とやらは渡らなくて良いのだろうか?花畑パターンなのか?
迎えに来てくれるという親戚類は現れないのか?
あぁ、妹はどうしているだろうか?
悲しんではいないだろうか?
悲しんでは欲しくないなぁ…
いや、悲しまないのは無理か…
時間が経つのを祈ろう…
もしかして、なんとか頑張れば妹の守護霊になれたりするのだろうか?
それは、それで楽しいかもしれない…
なにを頑張れば守護霊になれるのだろうか?修行的ななにかがあるのだろうか?
守護霊になるための修行。あるならトライしてみたいものだ。
とりとめのない思考が生まれて、生まれた端から流れるように消えていく。
…まぁ、良い。
とりあえず、子供は助かったんだろう。
色々と心残りはあるが、その一点のみでも少なからず心は慰められる。
まぁ人生こんなものだ。私がいてもいなくても世界はあり続けるのだろうし。
次だ。次。早く状況を把握したい。
それにしても、いつまでこのまま漂い続けるのだろう??
なんらかの展開が欲しいな…
まだ、この状況になってあまり時間が経ってないように思えるが、それは私だけの体感だけかもしれないし…
「…優しい子。優しいだけでなく勇敢ね」
誰…??優しそうな…
姉みがすごい。いい女感が滲み出てる。
見習いたいものだ…
いや、もう遅いか。見習うなら来世だな。うん、来世来世。あるのかは知らないが。
瞬間、声に意識が集中し。それもまた散らばり始める。
褒められた…??のか??
褒められたのなら嬉しいが、勇敢、だっただろうか??
子供の家族にとってはそうだろうが、私の家族にとってはそうではないだろう。
馬鹿なことをしてと、怒られる案件だ。
まぁ、うちの家族なら泣いて、怒って、それから…許してくれるだろう。多分。大丈夫。
「家族を愛して…信頼してるのね??」
また声がした。家族??家族か。
ふふ。そうだね。良い家族だと思う。
間違いなく私は愛されて育った。
色んなことがあったけど、自慢の家族だ。
しっかりしてるけど、たまに信じられないくらいズボラな母と、優しいけど、たまに優しすぎて面倒ごとを断れなくて怒られる父。
家族一口煩くて、家族一心配性な兄。
そして、妹。
あぁ、私の可愛い妹。
不器用で、口下手で、でも口を開けば周りに気を使った言葉ばかりで。
自己評価が低いのが心配な、歳の離れたあの子!!
あの子は、今どうしているだろうか??
悲しませてしまっただろうな。
あぁ、会いたいな…
会えるのだろうか??
会えたところで意思の疎通は可能なのだろうか??
家族のことをつらつらと考えていると、違和感を感じた。
ばらけて溶けていくばかりだった思考がまとまり始めたのだ。この場所に来てから初めての感覚だった。
「妹さんへの想いが特に強いのね。…会うのは…ちょっと厳しいかもしれないわ…」
やはり、声がするな。私に話かけている?
次の展開、というやつだろうか?
そうか、会えないのか。そうか…
やはり、私は死んでしまったのかな??
情報が欲しいなぁ…情報を…
「あら、思考がまとまり始めたわね。ゆっくりで良いわ。私がわかる??」
優しい声。
ついさっき聞いたような気もするし、かなり前だったような気もする。
「ふふ、優しい声に聞こえるのね??嬉しいわ。ほら、もう少し会話に集中してみて」
会話に。
そうだね、情報が欲しかったんだ。
どこから聞こえてくるんだろう??
自分の輪郭が少しづつ濃くなってゆくのがわかった。
溶けて曖昧になりつつあった自分とその他との境界が徐々に戻ってくる。
慣れ親しんだ自分の体の形。広がり続けていた思考や、記憶が少しづつその体の中に収納されていく。
と、自分しか感じられなかった空間にもう一つ別の存在がいるのが感じられた。
「こんにちは。初めましてね。」
艶々と青に輝く長い髪はグラデーション。生え際の深い青が、毛先近くなるにつれ淡くなってゆく。
白い肌に、吸い込まれそうなモスグリーンの瞳が美しい美女がこちらに微笑んでいた。
うん、その肉感的な体と相まってすごく姉みがする。いわゆるいい女ってやつだ。うらやましい。
「あ、、えーと…?…こんにちは?」
声がでた。久しぶりに体をつかった気がする。声を出すという行動が新鮮に感じられ、そして懐かしかった。
体の感覚が戻ってくると同時に、目でものを見て、鼻口で呼吸をし、口を開いて会話をする…など生きていたときには極々当たり前にしていた行動を徐々に思い出した。
漂っていたときには、思い出しもしなかった生物としての行動。忘れているという感覚さえなかった。
「ふふ、こんにちは。色々と混乱しているでしょうけど、まずは私の説明を聞いてくれる??」
いまだ、取り戻したばかりの自分の輪郭に多少の違和感はあったが、説明という言葉に興味を惹かれる。
「あ、あー、そうですね。お願いします。」
「ありがとう。
じゃぁ、そうね。最初に。」
目の前のお姉さんは、困ったように眉を下げて言った。
「薄々気づいてるかもしれないけど、あなたは死んでしまったわ」
「あー、やはりですか…」
なんとなく、予測はついたのでアッサリと受け入れる。
では説明というのは、私の死亡確定報告とその後の流れのことなんだろうか??
「そうね。今後についてなんだけど…
あなた、もう一度あなたとして生きてみない??」
…ん??
同じ人生をまた繰り返すということ??記憶を持ち越して、ということかな?であればかなり有利な人生になることはまちがいないないだろうが…もしそうなら、二回目の人生は勉強もっと頑張ろう。うん、そうしよう。
でも、それはなんの意味があって??
「いえいえ、違うのよ。あなたの記憶はそのままで違う世界、違う人生で生きてみないってこと」
「違う世界で違う人生??…それは…」
というか、考えが筒抜けだな。流石神様…
もしかして、いわゆる異世界転生ってやつだろうか??
前の人生、終わってしまった人生でそういった類の小説は好きだった。知識はある。無駄にある。
体験できるなら体験したい。でも、本当にあり得る話なのだろうか??
「そうそう。その異世界転生?人気よね?私も大好きでみてるけど、想像力の豊かさに圧倒されるわ。ふふふ。
で、どうかしら??あなたは、死ぬ前に自分の命を投げうって子供の命を助けたわ。その善行に対してご褒美ってことで転生権をあげたいの。その、、まぁ、、少しお願い事があって、、それを引き受けてくれれば、にはなるんだけど。
今までに得た知識や経験を生かして、他の世界で生きてみない??」
…なんだか、すごく楽しそうな話になってきた…
正直にいおう。ものすごくワクワクする。
けど…お願い事ってんだろう?
え、魔王と勇者的な感じ?もしくは、わたしが聖女さまで…的な??
どちらも読み物としては大好物だが、実際自分がなるかと聞かれると答えづらい大変な役割な気もするな…
私は、自分の事は自他共に認めるダメ人間だと思っている。勇者なんて絶対にガラじゃない。
できれば、のんびりと平和に錬金術師や薬師のような生産系職で細々と穏やかに暮らしていきたいが…
「ほ、本当ならとても楽しそうだと思いますが、その、異世界?は自分で選べたりするんでしょうか??あと、えーと、チートとかすごいスキルとか、も、もらえたりするんでしょうか!?」
おぉう、自分で言ってて興奮してしまった。
吃ってしまってちょっと恥ずかしい…
「うふふ、提案を喜んでもらえて嬉しいわ。そうね、チートや、スキルと呼ばれるものに関してはある程度の希望なら。
でも、ごめんなさい。行ける世界は限られてるの。
元いた世界とはかなり違うから戸惑うことも多いかもしれないわ。
そこで役に立つだろうものは私からの加護としてつけさせてもらいます。」
加護かぁ、ってことは目の前のこの女性はその世界の女神様とかなんだろうか??だとしたら、一神教かな??ほかにもいて多神教なのかもれない。
いや、それより。今は、もらえる能力や行く世界が決まる大事な場面だ。
しっかり、交渉せねば。異世界転生ものの多くでは、最初に会った神様とは転生後、連絡が取れなくなることが多い。例外として、祠や教会に行けば会えるような条件付きのやりとりが可能なものもあるが、今回それが使えるかもわからないし。不便そうに感じるし。転生した後、こんなはずでは…ってなったらきついからな。
ここにいつまで居れるかはわからないけど、最大限の交渉をしよう。
女神さま、、名前が分からないので女神さまと呼ぶ。は、ニコニコと考えがまとまるの待っていてくれた。
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