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最愛の者 腕の中に

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 その言葉の真意を理解しようと、ラシュレスタが視線を下げる。

 (愛し合う者同士が・・・愛を確かめ合うための行為に・・・汚れなどない・・・そなたは汚れてなど、いない・・・)

 言われた言葉を胸の内で繰り返す。

 (愛し合う者同士が・・・愛を確かめ合うための行為に・・・汚れなどない・・・そなたは汚れてなど、いない・・・)

 噛みしめるように何度も何度も反復する。

 (確かに、愛し合う者同士が愛を確かめる行為であるならば・・・そこに、汚れはないと思う。言うとおりだと思う。けれども・・・)

 ハッと顔を上げて、シャルスティーヤを見つめた。

 (それって・・・)

 その言い方だとまるで・・・・・・いや、まさか――

 ラシュレスタの理性がたどり着こうとする答えを拒んだ。相手は天界の最上位たる存在なのだ。あり得ない。

 「ラシュレスタ・・・我はこの部屋を、そなたが出て行く前には、そなたのために用意していた・・・そなたが人間界でなにを見て、なにに憧れたか・・・我は既に知っていたからだ」

 ラシュレスタが初めて、室内に視線を向けた。その様相。はっきりと見覚えがあった。ここは、あの――

 悪徳と退廃の地と化した街で、激しく愛し合っていた男たち。生殖の伴わない性行為は、ただの欲求不満解消だと。そう見なしていた自分を変えてしまったあの光景。

 肉体的欲望の追求でありながらも、互いへの思いやりと愛情に満ちていた。その愛し合うという行為の美しさに、心を奪われたのだ。

 自分もあんな風に、大好きな方に愛されたいと。あんな風に愛し合えたら・・・と焦がれたのだ。

 彼らの愛に惹かれて、何度となく見に行ってしまった。まさか、それを知っていたなんて。そして、そんな自分のために、この部屋を用意していたと言うなんて。

 (でも・・・どうして・・・?)

 どうして、用意してくれていたのだろう。なんのために―――?

 「もっと早くに、そなたにここを見せるべきだったと、どれほど悔やんだか・・・」

 最高天使らしからぬその発言。

 (まさか・・・まさか・・・)

 ラシュレスタが目を見開いたまま、首を振る。そんなことはない。それだと、まさか・・・
 
 「彼らのように過ごそうと思って迎えに行ったその日、そなたは天界を出ていた・・・一足遅かった・・・」

 「う、嘘・・・嘘です・・・そんな・・・」

 信じられないあまりに、嘘などつくはずもない存在に、的外れな言葉が震える唇から出た。

 「だって・・・そんな・・・だって・・・シャルスティーヤさまは・・・・・・」

 最高位の天使なのだ。あり得ない。そんなことはあり得ない。ラシュレスタが首を振り続ける。

 シャルスティーヤが微笑んだ。

 「ラシュレスタ・・・我もまた、愛を求める一つの個体なのだ・・・」

 ラシュレスタの頬を愛おしげに撫でた。

 「我は愛を求めていた・・・そなたに・・・」

 (あぁ・・・そんな・・・)

 ラシュレスタの視界がぼやける。

 「我はそなたとここで愛し合うつもりだったのだ・・・・・・だから、ラシュレスタ・・・」

 信じられない言葉。

 「そなたが出て行く必要など・・・なかったのだ・・・」

 琥珀色の瞳から涙が溢れ出た。

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