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屈辱 そして・・・

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 (今、なんて・・・言った・・・?)

 聞き間違いだとは思えない。だが、その不可解な言葉への認識を深める前に、ぬぅぅぅ・・・と黒い突起が垂直方向に伸び上がった。

 そのまま、右に左に、前に後ろに、ボコッ、ボコッ、ボコッ・・・と増強するように厚みを増す。神殿に置かれている彫像のような形を象った。

 一通りの形成が終わったのか、ドロリ、ドロリと、まとわりついていた余計な闇を払い落とし始める。

 「!!」

 露わになったその物体の有り様に、ラシュレスタが愕然とした。

 「どうだぁ~? 美しいだろぅ~?」

 捕縛されたまま、目を大きく見開いている相手に魔王が問いかける。

 「懐かしいか? フフフ・・・」

 一体、どんな考えで、それ・・を作ったというのか。作れるというのか―――玉座に移動して、座り直した相手をラシュレスタが目で追った。

 「かつての我よ・・・喜ぶがよい・・・最高天使の身体が好きで好きでたまらない、好き者のそなたのためを思って、我の肉片に、我の胞子をわざわざ宿して、見事に再現してやったのだぞ・・・フフフ・・・」

 果たして、本気なのか。茶化しているのか。再現と口にした相手と出現した者を交互に、ラシュレスタが視線をさまよわせる。

 (どこが・・・最高天使だ・・・)

 泥人形なのだ。どう見ても。背格好が同じだけで。顔の彫りや髪型がただ似ているだけで。

 一体、なにをもってして、再現と言えるのか。霊気も神聖さも尊さも美しさも、生気すら無い、全身が闇色のただのまがい物。

 「おぅおぅ・・・そんなに熱く見つめて・・・目が釘付けか~? ん~? そうよのぅ・・・見たくて見たくて、たまらなかったモノが見られて、嬉しいのぅ・・・まさに、アレのアソコもそれと同じサイズよ・・・」

 それよ、それとばかりに軽く指を振って、指し示した先。

 見た目だけは筋骨隆々としている、その身体の中心部。長大な性の象徴が天を仰がんばかりに反り返って、体現されている。

 よりによって、そんなモノに対して引き合いに出すとは、なんたる不敬――――不愉快、極まる発言にラシュレスタが眉間に皺を寄せた。

 「我らは双翼の存在として誕生した・・・互いに見劣りなくのぅ・・・つまりはつい・・・顔かたちに多少の違いはあれど・・・同じなのよ・・・これから、たっぷりと味あわせてやろうぞ・・・念願であろぅ~? 喜べ~」

 魔王がパチンと指をならした。ダラリと腕を下ろして下を向いたまま、突っ立っていた人形が顔を上げる。フォンッと両目が赤く光った。

 (まずい・・・)

 稼働した。そう感じた途端に、一気に表面化した魔気。紛れもなく、それは―――その禍々しさと本質を察知したラシュレスタが自身の右足に向かって唾を吐く。

 だが、呪を口にしようとしたその時、既にそれは目の前にいた。

 「ッ!!」

 床に敷かれた魔陣の中をビヨンッとわずかな振動のみで移動した体躯。ラシュレスタが息をのんだ。

 「我の影だからのぅ・・・フフフ・・・我の意志で動き、我と感覚も共有しておる・・・」

 左膝に土気色した手を添えられる。ゾクッとしたその感覚。震えが走った。

 「我にそなたがかなうはずもなく・・・そして・・・もぅ、わかっておるとは思うがのぅ・・・我の胞子を宿した身は・・・我に逆らえぬのよ・・・一切のぅ・・・」

 おののいているラシュレスタに、魔王がニヤリと笑った。

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