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人間界 約束の地にて 会う

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 野獣に食らいつかれるようにして貪られているルーカの姿。修道服の裾が巻き上がり、脚が露わになる。

 両足の間を男に陣取られ、サンダルを履いた足が空しく宙を掻いた。

 「うぅっ!! うぅっ!!」

 あごを掴んでいた手が太腿に移動し、さらには肌着の中をまさぐり始める。

 (まったくもってして不愉快な奴だな・・・)

 成り行きを見守っていたラシュレスタが眉をひそめた。

 ルーカがもう一人の副帝とやらに、どんな感情を抱いているかはわからない。男の言う通りなのか、言いがかりなのか。敬愛の域なのか。そんなことはどうでもいい。今、占めている考え、それは―――

 ラシュレスタが右手をスッと上げた。そのまま、

 ヒュンッ

 と三本の指を立てた状態で手のひらを下げる。

 ビュゥゥゥウゥゥゥゥゥゥーーー・・・・・・・

 途端に一陣の強風が地を這うようにして身廊を走り抜けた。

 バァアァーーンッ!!

 扉を強く叩きつけて開け放つ。

 「うわぁあぁーー!!」

 見張りをしていた兵士二人の屈強な身体が吹っ飛ばされた。

 間髪入れずに、今度は帰ってこいとばかりに指先をクイッと上げた。

 ブワァァァアァァァァーーー・・・・・・・・

 一度外に放たれた気流が倍の突風となって身廊へと戻って来る。

 ガッシャン!! ガッシャン!! ガッシャン!! 

 資材や工具が渦を巻いて舞い上がった。あちらこちらにぶつかっては落ちる。

 「な、なんだぁっ!?」

 サニキニウスが激しく動揺した。その姿を横目にしながら、ラシュレスタが胸の魔鏡に中指の爪先をあてた。魔霊気を注ぎ、文字を綴る。

 「カァアァアァァーーー!!」

 指示を受け取った烏たちが外で鳴いた。

 「な、なんだっ!? うわぁあぁ!!」

 ドサッ、ドサッと物が落ちてくる音に、

 「な、なんだよ、この烏は!! く、来るな!!」

 バッサ、バッサと激しい羽音。

 「なんだ、こいつら、くそっ!! 向こう、行け!!」

 ビュン、ビュンと剣先で払いのけているような気配。

 「おい、なんだ、なにがあったんだ!?」

 突如として起きた異常事態に、サニキニウスが外に勢いよく飛び出した。

 「お前ら、なんだ、どうしたんだっ!?」

 「どうしたもこうしたもありません・・・突然、強い風が吹いてきたかと思ったら、物が上から落ちてきたり、やたらとでかい烏が急に襲いかかってきたり・・・」

 べちょ・・・

 近衛兵の報告も終わらないうちに、サニキニウスの頭に烏のフンが落ちた。

 「あっ・・・」

 いかつい頬をタラリとつたう白いフン。兵士が息をのんだ。

 「なんなんだよぉおぉ~ これはよぉおぉ~・・・」

 フルフルと怒気が立ち上がる上空で「カァァアァァーーー!!」と烏が鳴いた。

 「あのヤローー・・・」

 だが、罵る言葉も出しきらないうちに、

 ヒュゥゥゥウゥゥゥゥーーー・・・・・・・・・

 と音が接近してきた。

 ドガァァッ!!

 外に止めてあった四頭馬車に、勢いよく飛んできた鉄の資材が鋭く突き刺さった。馬が激しくいなないて、前足で宙を蹴る。

 一体、なぜ? どこから? どうして、こんなことが?―――常軌を逸した展開に誰も声が出せない。

 ビィン、ビィン、ビィィン・・・・・・

 鉄の棒が余勢で弾み上がっている、その異様な光景に全員が固唾をのんだ。

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