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最高天使 降臨
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それだけじゃない。こんなにも、こんなにも、こんなにも。貪欲に欲している。あなたを。
(お側になど・・・戻れるはずがない・・・)
ひたすら望むこと。望み続けていること。愛して欲しい。愛して。身も心も愛し合いたい。抱かれたい。抱いて欲しい。
あぁ、なんて罪深いのだろうか―――両手を胸の前で握りしめて、ラシュレスタが泣きじゃくる。
届かない想い。シャルスティーヤが、グッと手のひらを握りしめた。
意を決したように後ろへと振り上げる。指先を力強く広げながら、前方へと向けた。
シャアァァーーーーッ!!
黄金の閃光が宙を切り裂くようにして走る。大烏の持つ、異階層へと繋がる鏡へと。だが、それは最高天使であろうと法則に逆らった、してはならない越境行為。
途端に
ブゥウゥンッ!!
と下から突き上げられるような振動が起きた。
それは一体、どこからだったのか。下腹部からだったのか、床からだったのか――それすらもわからない突然の揺れに、ラシュレスタの身体が襲われた。
魔鏡もまた、おぉぉ・・・と上下に大きく揺れ動く。
ブツッ・・・
と画面の映像が消えた。
「っ!!」
突如として失ってしまった愛しい姿。
「通信の伝送路が途切れた・・・でありんす!! 復旧を試みる・・・でありんすが、厳しいかもしれない・・・でありんす!!」
アタフタとしている魔鏡を見ながら、あぁ・・・と力ない声がラシュレスタの唇から漏れた。そのまま泣き崩れる。白金の輝きにより近づいた髪がパラパラと床の上に広がった。
(あぁ・・・そんな・・・)
もっともっと見つめていたかった。もっともっと一緒に過ごしたかった。もっともっと――目を閉じてその美しい姿を思い起こす。悲しくてたまらない。
差し出された力強い手。変わらない優しい瞳。どうして、手を伸ばせなかったのだろうか。
手を伸ばしたら、そのお力で引き寄せてくれたかもしれないのに。その手を取ることができていたのなら。一緒にいられるようにして下さったかもしれないのに。
(あぁ・・・)
何度も何度も想う・・・・・・だが、そんなことが許されるはずがない。
(あぁ・・・シャルスティーヤさま・・・)
恋しくてたまらない。苦しくてたまらない。好きで好きでたまらない。
(シャルスティーヤさま・・・シャルスティーヤさま・・・)
寝そべったまま呼び続ける。涙が止まらない。中指の腹を親指の爪でピッと弾いた。体液が出てくると、その状態のままパチンと指を弾いて、結界の呪を弱々しく口にした。
サラサラサラ・・・サラサラサラ・・・・・・
かすかな音をたてて宙に銀色の気流の渦が巻き起こり、ボワッと中心部から手のひら程度の木箱が浮き上がる。
手に取って開けて、中から取り出した。薔薇のつぼみを象った琥珀色の宝石。髪飾り。髪に着けてもらえたあの日。とても幸せだったあの頃。ラシュレスタもまたそっと口づけた。
(あれから同じ物を作られていたなんて・・・)
(お側になど・・・戻れるはずがない・・・)
ひたすら望むこと。望み続けていること。愛して欲しい。愛して。身も心も愛し合いたい。抱かれたい。抱いて欲しい。
あぁ、なんて罪深いのだろうか―――両手を胸の前で握りしめて、ラシュレスタが泣きじゃくる。
届かない想い。シャルスティーヤが、グッと手のひらを握りしめた。
意を決したように後ろへと振り上げる。指先を力強く広げながら、前方へと向けた。
シャアァァーーーーッ!!
黄金の閃光が宙を切り裂くようにして走る。大烏の持つ、異階層へと繋がる鏡へと。だが、それは最高天使であろうと法則に逆らった、してはならない越境行為。
途端に
ブゥウゥンッ!!
と下から突き上げられるような振動が起きた。
それは一体、どこからだったのか。下腹部からだったのか、床からだったのか――それすらもわからない突然の揺れに、ラシュレスタの身体が襲われた。
魔鏡もまた、おぉぉ・・・と上下に大きく揺れ動く。
ブツッ・・・
と画面の映像が消えた。
「っ!!」
突如として失ってしまった愛しい姿。
「通信の伝送路が途切れた・・・でありんす!! 復旧を試みる・・・でありんすが、厳しいかもしれない・・・でありんす!!」
アタフタとしている魔鏡を見ながら、あぁ・・・と力ない声がラシュレスタの唇から漏れた。そのまま泣き崩れる。白金の輝きにより近づいた髪がパラパラと床の上に広がった。
(あぁ・・・そんな・・・)
もっともっと見つめていたかった。もっともっと一緒に過ごしたかった。もっともっと――目を閉じてその美しい姿を思い起こす。悲しくてたまらない。
差し出された力強い手。変わらない優しい瞳。どうして、手を伸ばせなかったのだろうか。
手を伸ばしたら、そのお力で引き寄せてくれたかもしれないのに。その手を取ることができていたのなら。一緒にいられるようにして下さったかもしれないのに。
(あぁ・・・)
何度も何度も想う・・・・・・だが、そんなことが許されるはずがない。
(あぁ・・・シャルスティーヤさま・・・)
恋しくてたまらない。苦しくてたまらない。好きで好きでたまらない。
(シャルスティーヤさま・・・シャルスティーヤさま・・・)
寝そべったまま呼び続ける。涙が止まらない。中指の腹を親指の爪でピッと弾いた。体液が出てくると、その状態のままパチンと指を弾いて、結界の呪を弱々しく口にした。
サラサラサラ・・・サラサラサラ・・・・・・
かすかな音をたてて宙に銀色の気流の渦が巻き起こり、ボワッと中心部から手のひら程度の木箱が浮き上がる。
手に取って開けて、中から取り出した。薔薇のつぼみを象った琥珀色の宝石。髪飾り。髪に着けてもらえたあの日。とても幸せだったあの頃。ラシュレスタもまたそっと口づけた。
(あれから同じ物を作られていたなんて・・・)
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