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会いたくて

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 シュワンッ・・・・・・シュワンッ・・・・・・シュワンッ・・・・・・

 魔界でも異質の輝きを放つ、エンドローズ城。根城の自室に到着するや否や、前にかざした手から魔霊気の輪を四方に放ち、結界の層を幾重にも念入りに増やしている―――そんな新しい主人の姿を魔鏡がじっと眺めていた。

 「魔鏡よ、あるじの望むモノを見せろ」

 ふわふわと座り心地の良さそうな銀色の布地が使われてはいるものの、ごくごくシンプルな枠組みをしている肘掛け椅子。ラシュレスタがスラリと長い足を伸ばして組むと、魔鏡に命じた。

 「へぇ。ですが、さすがに天界は映せないの・・・でありんす」

 「・・・・・・」

 偽りなく伝えた魔鏡が、腕組みをした主から無言のまま眺められる。

 「いや・・・あの・・・その・・・そうなん・・・でありんすよ」

 とんでもない圧を感じたからといって映すこともできず、魔鏡が両手を前でスリスリと合わせ、分身一同とヘコヘコとお辞儀をした。

 道化なりにどこか気を使っているその様子を、ラシュレスタが感慨深げに見つめ続ける。

 譲渡の際に魔霊気を注いでいる。今もだ。従って、その気から主の志向を組んでいる点では優秀と言えるだろう。だが、こうも直接的に「天界」と言及されるとは。

 そして―――

 魔妖物ごときの力でその様子がうかがい知ることなど、できなくて当然。と理解はしていても、やはり密かに落胆を感じずにはいられない。

 「アッシが映せるのはせいぜい、忘却の河のほとりをちろっとくらい・・・でありんすよ・・・いや、ほんと・・・でありんすよ」

 「別に・・・天界でなくていい。なんでもいいから映せ」

 多少の気晴らしになればいい。地上でなにか霊的な力でも感じられればいい―――そんな気持ちでラシュレスタが物憂げに命令した。

 「へぇ。かしこまり~ 増し増しました~ でありんす。では、者ども~」

 本体の合図に分身たちがボコッと一斉に埋もれて、姿を隠した。

 「ご注~文~ ラシュレスタさまの~ なんでもいいから~ 見たいモノ~」

 魔鏡がどこからともなく出した金色のベルをチリンチリンと鳴らした。

 「ウィ~ アブラハ~ム」

 分身たちが隠れた状態のまま、元気よく返事をする。

 またしても見えない帽子でも脱いで挨拶するかのような滑稽な仕草を魔境が見せ、その上部の縁に小指程度のミニチュアがモコッと現れた。

 本体に下部を繋げた状態で、両手を勢いよく前で交差するように振り、歌い始める。

 アブラハムには 十三体の子~
 チビから始まり 何番目~

 終わると、ボッと紫色の輝きが鏡面に宿した。しばらくして首を傾けると、紫色の両手を×印にして映せないと本体に示す。

 「・・・・・・前振りはいい。一気にやれ」

 椅子に肘をついて眺めていたラシュレスタがこれから待ち受ける展開を察して、その先を制した。

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