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魔王の誘い
⑤
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「この姿になってからどれほどが経ったかのぅ・・・・・・そんなにも気に入っておるのか、ん~? 四枚羽のあどけなく美しかったそなた・・・・・・アレは実によかったがのぅ・・・」
値踏みでもするかのような視線に懐古でもしているかのような気配が加わる。不快さを感じると同時に、このまま口づけられても厄介とラシュレスタが首を振って、魔王の長く黒ずんだ爪からあごを外した。
ラシュレスタの今の姿形。人間で言うならば青年に近い容姿。成熟態へと移行する手前の未熟さと甘さを漂わせていた本来の姿よりも、体躯に一回り厚みを持たせ、顔つきも精悍に変化させているには訳がある。
闇の領域に先に誕生していた古参たちとのバランス。そして何よりも、かの存在と共に過ごせた誇らしくも愛おしいかつての時間を封印するため。
「王こそ、ずいぶんとその疲れ果てた老人のような姿を好んでいらっしゃるかと」
幼態を取らせた魔族を老獪で下劣な皇帝が嬲っては犯す。そんなプレイを長く好んでいる相手に、ラシュレスタがその琥珀色の瞳に冷ややかな色合いを漂わせながら問いかけて返した。
「フフ・・・・・・これか? 気に入らぬか? ならば、美しく愛おしいそなたのために、この身をアレに似させてやってもよいぞ? が・・・そうはいっても我はこの闇の世界の王故、あのピカピカチカチカとやたら眩しい色合いまではさすがに無理だがのぅ・・・フフフ・・・」
(ずいぶんと下に見られたものだ・・・)
これまでならば、とっくに煙となって退散していた者が去らずに留まっていることに気をよくでもしたのか。
だが、かの者に似させるなどおこがましいにもほどがある。能力的にも心情的にもできないことなどお見通しだとわかってて口にしたのか。
「どうだぁぁ~? ラシュレスタよぉ~ 我がここまで言うのもそなただけよ・・・・・・アレが恐れ多くて逆に萎えるというのなら、我のかつての姿にでもするかぁ~? それでもよいぞぉ、ん~? だが、まぁ・・・あのクラクラフラフラと目眩がする色合いまではさすがに再現は無理だがのぅ・・・フフフ・・・」
「必要ございません」
相手が変化する前にピシャリとラシュレスタが言い放った。感慨といったやっかいな感情を招き起こすような姿など、誰が目にしたいか。好色な爺にやらせてやってる設定の方が気楽でましだ。
「王よ・・・」
その問いかけはまさに魔が差した瞬間だったのか。痛恨の誤判断だったのか。無意識下における、長く長く続く救済への切望の現れだったのか。今までであれば到底考えられぬ行動。歯車が動いた瞬間。
ラシュレスタが長い美髪を黒い爪で梳き始めている相手に、その戻れぬ一歩を踏み出した。
「一度、性具として王の自慰に付き合えば、二度とこのような戯れの誘いはしないと約束をして頂けますか」
値踏みでもするかのような視線に懐古でもしているかのような気配が加わる。不快さを感じると同時に、このまま口づけられても厄介とラシュレスタが首を振って、魔王の長く黒ずんだ爪からあごを外した。
ラシュレスタの今の姿形。人間で言うならば青年に近い容姿。成熟態へと移行する手前の未熟さと甘さを漂わせていた本来の姿よりも、体躯に一回り厚みを持たせ、顔つきも精悍に変化させているには訳がある。
闇の領域に先に誕生していた古参たちとのバランス。そして何よりも、かの存在と共に過ごせた誇らしくも愛おしいかつての時間を封印するため。
「王こそ、ずいぶんとその疲れ果てた老人のような姿を好んでいらっしゃるかと」
幼態を取らせた魔族を老獪で下劣な皇帝が嬲っては犯す。そんなプレイを長く好んでいる相手に、ラシュレスタがその琥珀色の瞳に冷ややかな色合いを漂わせながら問いかけて返した。
「フフ・・・・・・これか? 気に入らぬか? ならば、美しく愛おしいそなたのために、この身をアレに似させてやってもよいぞ? が・・・そうはいっても我はこの闇の世界の王故、あのピカピカチカチカとやたら眩しい色合いまではさすがに無理だがのぅ・・・フフフ・・・」
(ずいぶんと下に見られたものだ・・・)
これまでならば、とっくに煙となって退散していた者が去らずに留まっていることに気をよくでもしたのか。
だが、かの者に似させるなどおこがましいにもほどがある。能力的にも心情的にもできないことなどお見通しだとわかってて口にしたのか。
「どうだぁぁ~? ラシュレスタよぉ~ 我がここまで言うのもそなただけよ・・・・・・アレが恐れ多くて逆に萎えるというのなら、我のかつての姿にでもするかぁ~? それでもよいぞぉ、ん~? だが、まぁ・・・あのクラクラフラフラと目眩がする色合いまではさすがに再現は無理だがのぅ・・・フフフ・・・」
「必要ございません」
相手が変化する前にピシャリとラシュレスタが言い放った。感慨といったやっかいな感情を招き起こすような姿など、誰が目にしたいか。好色な爺にやらせてやってる設定の方が気楽でましだ。
「王よ・・・」
その問いかけはまさに魔が差した瞬間だったのか。痛恨の誤判断だったのか。無意識下における、長く長く続く救済への切望の現れだったのか。今までであれば到底考えられぬ行動。歯車が動いた瞬間。
ラシュレスタが長い美髪を黒い爪で梳き始めている相手に、その戻れぬ一歩を踏み出した。
「一度、性具として王の自慰に付き合えば、二度とこのような戯れの誘いはしないと約束をして頂けますか」
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