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悪いおじいさんの悪だくみ発動?
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陰間茶屋とは見えないほどの豪華な門構えのお屋敷で、どれだけ稼いだんだよと圧倒されます。
しかも2号店、3号店、4号店と即席系列店がたくさん建ってます。
もしかしたら便乗もあるかもと。
そう思っていると案の定、当店を語る偽物にご注意下さいの看板が戸口に出されていました。
そしてここからがやたらと長かったのです。
結論から言うと入れません。
長蛇の列は別の日の予約を取るための行列でした。
その間もしっかりと偽物店がチラシを渡しにやって来ます。
生きていくための商売根性だよなぁと。
どこか共感しながら、けれども予約はやっぱり本館で取らねばと待っているとようやく自分の番になりました。
「ほんとにお待たせしてしまって、すみません」
夕方すぎになってしまったことを店番の男が詫びました。
こんなに待たせておいて三ヶ月後なのかよとワルオは内心不服を感じながらもキョロキョロと室内を見渡しました。
(あっ…)
ありました、ありました、おじいさんと殿さまの来店写真です。
かなりの遠目から撮ったくせに壁にしっかりと飾られてました。
「わぁ、すごい」
根は純粋なファンでもあるワルオが思わず口に出して目を輝かせてしまいました。
ハッとして自制心を取り戻します。
「あ、これですか?
えぇ、実はあのキングアルファで有名なおじいさんが当店にいらっしゃいましてねぇ、しかも殿様と」
待ってましたとばかりに店番もフフッと目を細めます。
「そうなんですか、あのイケメンおじいさんがですか…しかも殿様と…それはすごいですねぇ」
ワルオもまたお約束とばかりの言葉で返しました。
「で、ど、どうだったんですか…本物のおじいさんは」
これは純粋な疑問です。
しかも嘘偽りのない高純度の純粋さです。
「いやぁ、どうって聞かれましてもねぇ…ほんとに…」
いつ思い出しても何度思い出してもいいとばかりに。
店番が噛みしめました。
「控えめに言っても…地上の生きた美の至高神って言うんですか…ほんっっと次元が違いましたよ」
「生きた美の至高神!! そりゃ、すごいですねぇ!!」
この返事もまた不純物ゼロの純粋さで放たれた感嘆でした。
さすが、オレのおじいさんと。
やっぱり、オレの推しだけあるぜと。
誇りに思いながらも同時に妬みも発生します。
ちくしょう、オレも生おじいさんに会いたいと。
終わらない自慢話を聞きながら。
これだから予約だけだというのにえらく長かったんだなと頭の片隅で理解しながら。
ワルオの中でメラメラと欲求が湧き上がります。
(せめて…あの写真を…)
持って帰りたいと欲しました。
もちろん盗んだら一発でバレます。
だからやるのは盗み撮りです。
おそらくはネットへの拡散や商業利用を防ぐためにでしょう。
撮影絶対に禁止という貼り紙がうっとうしいくらいに壁を埋め尽くしている中、なんとかして撮ってやるとワルオが闘志を燃やしました。
ところが横から声がしました。
「あれってさ、写真さ、マジでダメなの?」
ワルコです、ワルコです。
クズでゲスでありのままの自分でいいのなワルコです。
ダメに決まってるから撮影絶対に禁止って貼ってあるんだろと言いたくなります。
しかも2号店、3号店、4号店と即席系列店がたくさん建ってます。
もしかしたら便乗もあるかもと。
そう思っていると案の定、当店を語る偽物にご注意下さいの看板が戸口に出されていました。
そしてここからがやたらと長かったのです。
結論から言うと入れません。
長蛇の列は別の日の予約を取るための行列でした。
その間もしっかりと偽物店がチラシを渡しにやって来ます。
生きていくための商売根性だよなぁと。
どこか共感しながら、けれども予約はやっぱり本館で取らねばと待っているとようやく自分の番になりました。
「ほんとにお待たせしてしまって、すみません」
夕方すぎになってしまったことを店番の男が詫びました。
こんなに待たせておいて三ヶ月後なのかよとワルオは内心不服を感じながらもキョロキョロと室内を見渡しました。
(あっ…)
ありました、ありました、おじいさんと殿さまの来店写真です。
かなりの遠目から撮ったくせに壁にしっかりと飾られてました。
「わぁ、すごい」
根は純粋なファンでもあるワルオが思わず口に出して目を輝かせてしまいました。
ハッとして自制心を取り戻します。
「あ、これですか?
えぇ、実はあのキングアルファで有名なおじいさんが当店にいらっしゃいましてねぇ、しかも殿様と」
待ってましたとばかりに店番もフフッと目を細めます。
「そうなんですか、あのイケメンおじいさんがですか…しかも殿様と…それはすごいですねぇ」
ワルオもまたお約束とばかりの言葉で返しました。
「で、ど、どうだったんですか…本物のおじいさんは」
これは純粋な疑問です。
しかも嘘偽りのない高純度の純粋さです。
「いやぁ、どうって聞かれましてもねぇ…ほんとに…」
いつ思い出しても何度思い出してもいいとばかりに。
店番が噛みしめました。
「控えめに言っても…地上の生きた美の至高神って言うんですか…ほんっっと次元が違いましたよ」
「生きた美の至高神!! そりゃ、すごいですねぇ!!」
この返事もまた不純物ゼロの純粋さで放たれた感嘆でした。
さすが、オレのおじいさんと。
やっぱり、オレの推しだけあるぜと。
誇りに思いながらも同時に妬みも発生します。
ちくしょう、オレも生おじいさんに会いたいと。
終わらない自慢話を聞きながら。
これだから予約だけだというのにえらく長かったんだなと頭の片隅で理解しながら。
ワルオの中でメラメラと欲求が湧き上がります。
(せめて…あの写真を…)
持って帰りたいと欲しました。
もちろん盗んだら一発でバレます。
だからやるのは盗み撮りです。
おそらくはネットへの拡散や商業利用を防ぐためにでしょう。
撮影絶対に禁止という貼り紙がうっとうしいくらいに壁を埋め尽くしている中、なんとかして撮ってやるとワルオが闘志を燃やしました。
ところが横から声がしました。
「あれってさ、写真さ、マジでダメなの?」
ワルコです、ワルコです。
クズでゲスでありのままの自分でいいのなワルコです。
ダメに決まってるから撮影絶対に禁止って貼ってあるんだろと言いたくなります。
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