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さぁ殿さまの登場です
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で終わるはずがなく。
このように――
お盆の四日間は、キングアルファであるおじいさんの半端ない性戯によってなだれこむようにして強制盆ヒートになってしまったおばあさん。
おばあさんを寝具の上に沈めた状態でおじいさんは出かけます。
予定を変えたくても、さすがに殿さまに日を改めてまた来て下さいとは言いづらかったからです。
殿さま行進も予定されています。
「すぐに帰ってくるからね」
抱き潰した妻の髪を優しく撫でた後に甘く口づけて。
手の届くところにはズラリと食べ物やら飲み物、日用品やら娯楽品などを全て並べて。
戸締まりもしっかりして、要所要所に致死に至る罠も仕掛けて、狂犬に近い番犬たちも庭に放って。
万全な状態にして、おじいさんが、さぁ出発です。
「ん…?」
愛馬のいる馬小屋にいけば、地面に玉手箱が置いてありました。
朱色の紐が括られた、黒の漆に金色の唐草模様の豪華な箱には見覚えがあります。
地面を見れば、なにやら文字が書かれていました。
―おじいさんへ
殿さまを誘いこむ時に
撒いて使って下さい―
見れば、文字より遙かに広い幅を使って英数字記号絵が描かれています。
誰からなのかがすぐにわかりました。
ジゾーズです。
六人しっかりとかなり上手に描かれています。
意味は分かりませんでしたが、一応は仏さまの眷属なので持っていくことにしました。
「ここがいいかな…」
仏の加護を受けた白馬を走らせてたどり着いた先は、街道になる予定の候補道と林道に別れる岐路でした。
多分ここまではちゃんと来るよねと。
おじいさんは少し思案します。
本来の道ではなく家よりも遠くなる林道へと殿さまを誘導したいのです。
前方にそっと視線を注いでみましたが、まだ誰もいない雰囲気なのです。
道を間違えた可能性も否定できません。
どうしようかなと思いながら。
手持ち無沙汰だったので先ほどの玉手箱を開けてみました。
すると、ぴゅうっと風が吹きました。
ふわぁっと箱の中に入っていた白い粉が飛んでいきます。
おじいさんが非合法の薬だったらどうしようと心配したその刹那、パンッと側の木に花が咲きました。
続けて、パンパン、パンパンッと。
あってるんだか、あってないんだかわからない音とともに。
枝が次々と花を咲かせていきます。
そのキラキラとしながら神秘現象が遠ざかり広がっていく様はまるで。
仏風に吹きつけられて咲かせてゆくのさ、おじいさんの居場所。
仏風に吹きつけれられて広がってゆくのさ、おじいさんの美しさのように。
そんな風に思わずしっとりと歌いこみたくなるほどです。
「う、うつくしーーっ!!」
遠くで誰かが叫ぶ声がしました。
「う、うつくしーーっ!!」
さらに反射音がかかったかのように続けて誰かがまた叫びました。
その声は激しく同意しかないという同志の叫びへとさらに繋がり、そのまま繋がって繋がって繋がって。
しまいには、
「う、うつくしーーっ!!」
と駕籠から顔を出した殿さまが叫びました。
このように――
お盆の四日間は、キングアルファであるおじいさんの半端ない性戯によってなだれこむようにして強制盆ヒートになってしまったおばあさん。
おばあさんを寝具の上に沈めた状態でおじいさんは出かけます。
予定を変えたくても、さすがに殿さまに日を改めてまた来て下さいとは言いづらかったからです。
殿さま行進も予定されています。
「すぐに帰ってくるからね」
抱き潰した妻の髪を優しく撫でた後に甘く口づけて。
手の届くところにはズラリと食べ物やら飲み物、日用品やら娯楽品などを全て並べて。
戸締まりもしっかりして、要所要所に致死に至る罠も仕掛けて、狂犬に近い番犬たちも庭に放って。
万全な状態にして、おじいさんが、さぁ出発です。
「ん…?」
愛馬のいる馬小屋にいけば、地面に玉手箱が置いてありました。
朱色の紐が括られた、黒の漆に金色の唐草模様の豪華な箱には見覚えがあります。
地面を見れば、なにやら文字が書かれていました。
―おじいさんへ
殿さまを誘いこむ時に
撒いて使って下さい―
見れば、文字より遙かに広い幅を使って英数字記号絵が描かれています。
誰からなのかがすぐにわかりました。
ジゾーズです。
六人しっかりとかなり上手に描かれています。
意味は分かりませんでしたが、一応は仏さまの眷属なので持っていくことにしました。
「ここがいいかな…」
仏の加護を受けた白馬を走らせてたどり着いた先は、街道になる予定の候補道と林道に別れる岐路でした。
多分ここまではちゃんと来るよねと。
おじいさんは少し思案します。
本来の道ではなく家よりも遠くなる林道へと殿さまを誘導したいのです。
前方にそっと視線を注いでみましたが、まだ誰もいない雰囲気なのです。
道を間違えた可能性も否定できません。
どうしようかなと思いながら。
手持ち無沙汰だったので先ほどの玉手箱を開けてみました。
すると、ぴゅうっと風が吹きました。
ふわぁっと箱の中に入っていた白い粉が飛んでいきます。
おじいさんが非合法の薬だったらどうしようと心配したその刹那、パンッと側の木に花が咲きました。
続けて、パンパン、パンパンッと。
あってるんだか、あってないんだかわからない音とともに。
枝が次々と花を咲かせていきます。
そのキラキラとしながら神秘現象が遠ざかり広がっていく様はまるで。
仏風に吹きつけられて咲かせてゆくのさ、おじいさんの居場所。
仏風に吹きつけれられて広がってゆくのさ、おじいさんの美しさのように。
そんな風に思わずしっとりと歌いこみたくなるほどです。
「う、うつくしーーっ!!」
遠くで誰かが叫ぶ声がしました。
「う、うつくしーーっ!!」
さらに反射音がかかったかのように続けて誰かがまた叫びました。
その声は激しく同意しかないという同志の叫びへとさらに繋がり、そのまま繋がって繋がって繋がって。
しまいには、
「う、うつくしーーっ!!」
と駕籠から顔を出した殿さまが叫びました。
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