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彼シャツスタイル
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一度背中を向けるとフリフリとお尻を曲に合わせて振って見せます。
そして前をまた向くとベリッと一気に下衣を全部引き剥がしたのです。
「!!」
まさにそれは一瞬の出来事です。
もはやマジックショーの域、実際は面ファスナーってすごいなぁの域です。
中から出てきたふんどし一丁の姿は笑いを取るためでしょう。
ですが大変です。
大変なことが起きてしまっています。
口元を手で押さえて驚いているおばあさんの横でおじいさんの目に剣呑とした光がただならない勢いで宿ってしまいました。
まずい、どうしてそこまでやったんだ、尻を振るとこまででよかったのにと。
インテリ地蔵も一瞬にして青ざめ、焦ります。
音楽を急いで変えるとインキャ地蔵を押し出しました。
怒気視線を烈火の如くくらったヤンチャ地蔵もまた逃げるようにして裏へと引っこみました。
「えっと…あの…インキャ…地蔵…です」
紹介のアナウンスもなく舞台に突然立たされた青年がおずおずと名乗ります。
実にやる気のない感じでマントを外しました。
「えっ…」
脱いだというのにさらに分厚い外套を中に着ていて、その姿におばあさんが首を傾げました。
しかも、そのまま何事も起きずに音楽だけが流れていきます。
頬まで長い前髪をかき分けることも口パクで歌うことすらしません。
しばらくしてインキャ地蔵があきらめたかのようにため息をつきながらコートを脱ぎました。
「あっ…」
パサリと落とされるや否や、ダボダボのシャツを着た姿が現れました。
袖も長く襟元も鎖骨が見えるほどにゆるく、下にパンツを履いてるのどうかわからない丈の状態です。
つまりは彼シャツスタイルです。
予定外にしてしまったお泊まりの翌日設定です。
露出された生足におじいさんがまたムッとした気配を見せました。
けれども――
「あ、これならできるかも…」
ボソリと横で呟いたおばあさんにパァアと顔色が一瞬のうちに逆転しました。
おばあさんの魅力おそるべしです。
にやける口元を押さえるかのようなおじいさんの仕草にジゾーズとしては安堵しかありません。
「はいはい、では次も気持ちよくいきましょ~、うちらがエース、インテリ地蔵~!!」
場の雰囲気が回復しての出番になってインテリ地蔵が堂々と舞台へと立ちました。
バッとマントを勢いよく放り投げれば、ビシッと決まったスーツ姿です。
まるで処女のように、ヘイなどと。
ここでもまたどこかの外国の曲を口パクしながら。
わざと水で濡らして後ろに撫でつけていた黒髪に両手を差し入れて、悩ましげに首を振って無造作に乱します。
シュルと指先でネクタイを緩めて眼鏡を取ると唇に先セルをあて、チラリと赤い舌を出しました。
「あっ…」
声を上げたおばあさんの反応にスッとおじいさんの目が半分閉ざされました。
ギクリとインテリ地蔵が固まります。
全く露出していないというのに一瞬にしてかなり嫌われた感がするのはなぜでしょうか。
ものすごく睨まれています。
おばあさんからすれば、おじいさんに似合いそうな服と眼鏡だという意味合いの、あっ…だったのですが、おじいさんにはアッ、ンッのアッに聞こえています。
今や敵視です。
そして前をまた向くとベリッと一気に下衣を全部引き剥がしたのです。
「!!」
まさにそれは一瞬の出来事です。
もはやマジックショーの域、実際は面ファスナーってすごいなぁの域です。
中から出てきたふんどし一丁の姿は笑いを取るためでしょう。
ですが大変です。
大変なことが起きてしまっています。
口元を手で押さえて驚いているおばあさんの横でおじいさんの目に剣呑とした光がただならない勢いで宿ってしまいました。
まずい、どうしてそこまでやったんだ、尻を振るとこまででよかったのにと。
インテリ地蔵も一瞬にして青ざめ、焦ります。
音楽を急いで変えるとインキャ地蔵を押し出しました。
怒気視線を烈火の如くくらったヤンチャ地蔵もまた逃げるようにして裏へと引っこみました。
「えっと…あの…インキャ…地蔵…です」
紹介のアナウンスもなく舞台に突然立たされた青年がおずおずと名乗ります。
実にやる気のない感じでマントを外しました。
「えっ…」
脱いだというのにさらに分厚い外套を中に着ていて、その姿におばあさんが首を傾げました。
しかも、そのまま何事も起きずに音楽だけが流れていきます。
頬まで長い前髪をかき分けることも口パクで歌うことすらしません。
しばらくしてインキャ地蔵があきらめたかのようにため息をつきながらコートを脱ぎました。
「あっ…」
パサリと落とされるや否や、ダボダボのシャツを着た姿が現れました。
袖も長く襟元も鎖骨が見えるほどにゆるく、下にパンツを履いてるのどうかわからない丈の状態です。
つまりは彼シャツスタイルです。
予定外にしてしまったお泊まりの翌日設定です。
露出された生足におじいさんがまたムッとした気配を見せました。
けれども――
「あ、これならできるかも…」
ボソリと横で呟いたおばあさんにパァアと顔色が一瞬のうちに逆転しました。
おばあさんの魅力おそるべしです。
にやける口元を押さえるかのようなおじいさんの仕草にジゾーズとしては安堵しかありません。
「はいはい、では次も気持ちよくいきましょ~、うちらがエース、インテリ地蔵~!!」
場の雰囲気が回復しての出番になってインテリ地蔵が堂々と舞台へと立ちました。
バッとマントを勢いよく放り投げれば、ビシッと決まったスーツ姿です。
まるで処女のように、ヘイなどと。
ここでもまたどこかの外国の曲を口パクしながら。
わざと水で濡らして後ろに撫でつけていた黒髪に両手を差し入れて、悩ましげに首を振って無造作に乱します。
シュルと指先でネクタイを緩めて眼鏡を取ると唇に先セルをあて、チラリと赤い舌を出しました。
「あっ…」
声を上げたおばあさんの反応にスッとおじいさんの目が半分閉ざされました。
ギクリとインテリ地蔵が固まります。
全く露出していないというのに一瞬にしてかなり嫌われた感がするのはなぜでしょうか。
ものすごく睨まれています。
おばあさんからすれば、おじいさんに似合いそうな服と眼鏡だという意味合いの、あっ…だったのですが、おじいさんにはアッ、ンッのアッに聞こえています。
今や敵視です。
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