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パリピな一時?

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 イケオジよいオジ 一度は拝めや~
 (ドッコイショー)
 お帽子の中にもこ~りゃ あったかいよ~
 (チョイナチョイナー)

 襟巻きももらえて 夢のようだ~
 (ドッコイショー)
 イケオジの威力もこ~りゃ 夢のようだ~
 (チョイナチョイナー)

 どこからともなく、どこぞの温泉で聞くかのような奇妙なかけ声と何かを引きずるような音が聞こえてきました。

「なんだ?」

 おじいさんがすかさず立ち上がって警戒します。
 家の周りには変質者侵入防止のために呪詛のこめられた有刺鉄線の囲いが易々とは越えられない高さで設けられており、その敷地内には特殊な訓練をされた番犬が十数匹は放たれているはずです。
 それなのに吠え声が一切しません。
 謎のチョイナチョイナヤローにでもやられてしまったのでしょうか。
 おかしいと異変を察知する同時に、愛するおばあさんを守るためにおじいさんが名刀をその手に取りました。
 敵の戦意を喪失する美貌ではあっても用心にこしたことはありません。
 土間に素早く降り立つと戸の前で外の様子を探ります。

「お、おじいさん…」
「しっ、黙って」

 複数のただならぬ気配を察して、おじいさんが左手の親指でグッとつばを押して鯉口を切ります。
 抜刀体勢万全となってガラッと戸を足で蹴るようにして開け放ちました。

「!!」

 すぐさま視界に飛びこんできた光景におじいさんが息を大きくのみました。
 そこにはなぜだか、オシャレなトップハットを身に付けた長い外套マント姿の五人と、もう一人紺のマフラーを頭に被った見知らぬ人間がいたのです。

「わあぁあぁ~~!!」

 その六人はおじいさんを目にすると一斉に感極まった声を出しました。
 そしてぺこりと行儀よくお辞儀をしたのです。

「先ほどは素敵なお帽子と襟巻きを惜しみなくありがとうございました。
 お礼にささやかながらもパリピな一時ひとときをご提供したいと思い、参じました」
「えっ…」

 これは一体何が起きているのでしょうか。
 帽子と襟巻きといったら道沿いに立っている、なで肩の地蔵さまたちしか身に覚えがありません。
 ですが目の前にいるのは大中小の体格差はあれ、しっかりとした人間です。
 どこからどう見ても石造りには見えません。
 それにパリピな一時とはどういう意味なのでしょうか。

「おじいさんにおかれましては、望む物はいつだって全て勝手に向こうからやってきちゃうよぉな美の法則をお持ちだと重々存じ上げております。
 はい、さすがの美貌です。
 幽界でも地獄界でも天界でも知らない者はいません。
 おじいさんを知らないなんていった日にゃ、もぐり確定です。
 それにしても、刀を持ったお姿もまた本っっ当にかっこいいですね!!」

 リーダー格なのでしょうか、襟巻きを顔に巻いた眼鏡の男が一歩前に出ると口を開きました。
 全員がキラキラとした瞳でうんうんと頷き、おじいさんを熱く見つめてきます。

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