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13:スフィンクスの館と再生の泉と
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(いや・・・そんな・・・)
確かに、身体は不快な状態でもある。だが、何よりも今は。パンドーラの棺を先に確認すべきなのではないだろうか。
(身体はすぐにでも清めたいけど・・・いいのだろうか・・・)
その内面での戸惑いを察知したかのように、
「大丈夫だ。冥府の王に関わるモノだと知って、手を出す愚か者はいない。焦る必要はない」
とアトラスが口を開いた。
(そうか・・・確かに・・・)
冥府の王ハデスと言えば、アルファ神族の中でも別格の存在だ。
先祖種を統べる時の王クロノスと大地の女神レアが産み落とした神族たちの長兄であり。突出した力と知力ゆえに、弟たちにオリュンポスを任せ、自らはあえて冥界を担ったことで知られている。
そんな、とりわけ恐れられている存在を。敵に回すような浅はかな者はそういないだろう。
けれども――棺は、その中にいる王妃は、どんな状態なのかと気にならないのだろうか。
「鏡の間に置かれているパンドーラの棺につきましては、何のご心配も要りません」
今度は、しなやかに前を歩いているスフィンクスが察したかのように告げた。
「鏡の間には何人たりとも入れない状態にしておりますし、棺自体にも手が加えられている上に、強力な防御と秘匿の呪符がなされております。中に入っているモノもしっかりと保護されているとお見受けしております」
(防御と秘匿の呪符・・・?)
一体、誰が。そして、なぜ、かけたのか――
(そうだ。それに・・・)
耳にした言葉を発端にして、疑問が湧き上がる。
(中に入っているモノって・・・知らないのか、中味を・・・)
中に入っている「方」ではなく「モノ」と言ったスフィンクスに。驚きを感じずにはいられない。
(どういうことだ・・・)
グライアイの三姉妹から、ヘパイストスが作ったと聞いたパンドーラの棺。
ヘパイストスといったら、奇をてらった発想と漲る創造の気を用いて、絶大な威力を持つ武具や道具、宝を作り出す鍛冶の神族だ。
その名を耳にした時、おそらく王妃は、特殊な領域と化した棺の中で。仮死状態にされているに違いないと思ったのだ。
そして、その推測はまた、アトラスが同意を見せることによって強固となっていたが。
(そうか、知らないのか・・・)
秘匿の呪符がされているのならば、当然かもしれない。
だが、それならば、どうして。スフィンクスは棺をメデューサの岩窟から運んだのか。そもそも、あの言葉は何だったのか。老婆たちが口にしていたあの言葉は。
『王妃は・・・孕まされじゃぁ・・・ヒヒヒ・・・』
スフィンクスによって望まぬ妊娠をさせられるのではなかったのか。
霊託の言葉を思い起こしながら、前方をゆったりと歩く人外を見つめる。その姿は品位を保ち、とても、王妃を強姦をするような輩には見えない。
キイィイィィ・・・・・・
扉の前で恭しく控えていた猫頭の従者たちが押して開けた。
ざぁっ・・・・・・
と心地よい夜風とともに、緑溢れる中庭の光景が目に入ってきた。
(あっ・・・)
赤いリンゴの実がたわわになる、その木々の枝には。所々に、青緑色の羽を垂らして休むクジャクの姿が見える。
「ご夫妻で気兼ねなくお過ごし頂けますよう、離れへとご案内いたします」
確かに、身体は不快な状態でもある。だが、何よりも今は。パンドーラの棺を先に確認すべきなのではないだろうか。
(身体はすぐにでも清めたいけど・・・いいのだろうか・・・)
その内面での戸惑いを察知したかのように、
「大丈夫だ。冥府の王に関わるモノだと知って、手を出す愚か者はいない。焦る必要はない」
とアトラスが口を開いた。
(そうか・・・確かに・・・)
冥府の王ハデスと言えば、アルファ神族の中でも別格の存在だ。
先祖種を統べる時の王クロノスと大地の女神レアが産み落とした神族たちの長兄であり。突出した力と知力ゆえに、弟たちにオリュンポスを任せ、自らはあえて冥界を担ったことで知られている。
そんな、とりわけ恐れられている存在を。敵に回すような浅はかな者はそういないだろう。
けれども――棺は、その中にいる王妃は、どんな状態なのかと気にならないのだろうか。
「鏡の間に置かれているパンドーラの棺につきましては、何のご心配も要りません」
今度は、しなやかに前を歩いているスフィンクスが察したかのように告げた。
「鏡の間には何人たりとも入れない状態にしておりますし、棺自体にも手が加えられている上に、強力な防御と秘匿の呪符がなされております。中に入っているモノもしっかりと保護されているとお見受けしております」
(防御と秘匿の呪符・・・?)
一体、誰が。そして、なぜ、かけたのか――
(そうだ。それに・・・)
耳にした言葉を発端にして、疑問が湧き上がる。
(中に入っているモノって・・・知らないのか、中味を・・・)
中に入っている「方」ではなく「モノ」と言ったスフィンクスに。驚きを感じずにはいられない。
(どういうことだ・・・)
グライアイの三姉妹から、ヘパイストスが作ったと聞いたパンドーラの棺。
ヘパイストスといったら、奇をてらった発想と漲る創造の気を用いて、絶大な威力を持つ武具や道具、宝を作り出す鍛冶の神族だ。
その名を耳にした時、おそらく王妃は、特殊な領域と化した棺の中で。仮死状態にされているに違いないと思ったのだ。
そして、その推測はまた、アトラスが同意を見せることによって強固となっていたが。
(そうか、知らないのか・・・)
秘匿の呪符がされているのならば、当然かもしれない。
だが、それならば、どうして。スフィンクスは棺をメデューサの岩窟から運んだのか。そもそも、あの言葉は何だったのか。老婆たちが口にしていたあの言葉は。
『王妃は・・・孕まされじゃぁ・・・ヒヒヒ・・・』
スフィンクスによって望まぬ妊娠をさせられるのではなかったのか。
霊託の言葉を思い起こしながら、前方をゆったりと歩く人外を見つめる。その姿は品位を保ち、とても、王妃を強姦をするような輩には見えない。
キイィイィィ・・・・・・
扉の前で恭しく控えていた猫頭の従者たちが押して開けた。
ざぁっ・・・・・・
と心地よい夜風とともに、緑溢れる中庭の光景が目に入ってきた。
(あっ・・・)
赤いリンゴの実がたわわになる、その木々の枝には。所々に、青緑色の羽を垂らして休むクジャクの姿が見える。
「ご夫妻で気兼ねなくお過ごし頂けますよう、離れへとご案内いたします」
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