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11:メデューサの岩窟とペガサスと

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 「いや・・・だっ・・・アト・・・ラス・・・」

 ようやく解放された唇が、もうやめて欲しいと拒絶を示す。だが、その横を向いた顔の耳たぶを。偽りだと見抜いている側に甘く噛まれて、

 「はぁぁ・・・っ・・・」

 とたまらずに身悶えた。

 すぐさま大きな手が、貫頭衣トゥニカの裾を捲り上げて、スルリと下穿きの中にも入ってくる。確かめるように掴まれて、ゾクゾクゾクッと震えが走った。

 「んんっ・・・ア・・・トラス・・・いやだ・・・いや・・・あっ・・・」

 獣車ルーペの中、お前はここで待ってろと言われて。自分も行くと言い張った結果がこの状態だ。

 せっかく岩窟に着くまで。何度も口づけを求められては拒み、その拒否に対して、決して無理強いはされなかったというのに。とうとう本気を出された。

 覆い被さられて、奪われて、貪られて、舐められて。それだけでもう昂ぶってしまって。

 「あぁ、いや、だっ・・・よせ・・・あっ・・・」

 そうは口にしてても、腹までしっかりと反り返った性の芯は裏腹で。触られる度に、悦びの液がぬちぬちと淫らな音を立てて。嬉しいと。もっと擦って、もっとしてと訴えかけている。

 (あぁ・・・)

 もうどうしようもないまでに、この男のモノなのだ。この男が欲しいのだ。

 ゆるゆると扱きながら、じっと見下ろしているその熱い視線は・・・そう見ているのだ。自分のよがっている様子を、舐めもせずに、ただねっとりと。

 「あっ・・・んっ・・・あっ・・・んっ・・・んっ・・・」

 擦られてはやめられて、高められては止められて。今までで一番ゆっくりでいて、ジワジワと責めてくる。

 「テセウス、いいのか・・・ん?」

 その欲情に濡れた声音と青紫色の瞳は間違いなく、自らの手で乱れさせている相手に興奮している。口角を上げて、この上なく満足げに。

 (アトラス・・・)

 潤んだ視界の先に、自分を欲する男のその劣情を感じながら、ハァハァと喘ぐ。

 まるで捕食される草食動物にでもなったかのように、一層、一気にモノにして欲しいと。もう焦らさないで挿れてとすら思ってしまいそうで。

 「いや・・・だっ・・・」

 握っていた敷布を掻き集めるようにして、顔を隠す。

 アトラスは自分から引き出したいのだ。淫毒もなく、媚薬もなく。まともな身体の状態から始まった性愛の行為において、乱れて欲する姿を。

 「あっ・・・」

 バッと布が。邪魔だとばかりに排除され、咄嗟に顔を隠した手ですら、容赦なくどかされて。掴まれた指先がカリッと歯で噛まれる。

 「テセウス・・・オレを見ろ」

 (あぁ、そんな・・・)

 見られているだけでなく、視線を向けろと命じられて、視線を泳がせる。

 チラリと一瞥しただけで、ふいっと顔を背けたことが意にそぐわなかったのか。手を離されて投げ出されるや否や、

 「あぁっ!!」

 途端に強く、ぬちゅぬちゅと。激しく上下に扱かれて、目が光で眩んだ。

 「ア、アトラスッ!! やぁっ!! よ、よせっ・・・あぁっ!!」

 一気にその高みへと追い上げられて、ガクガクと脚に震えが走る。

 「あっ、あっ、あっ・・・」

 もう出ると、出すと。きているその波に身を委ねる。けれども、ピタリと手を止められて。そして――

 「テセウス、オレを見ろ」

 ともう一度、要求された。

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