騙されて異世界へ

だんご

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38 確認大事

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 薬草採取を始めて5日目の朝。

 思い返せば色々なイベントが盛り沢山だ。
 スライムに驚き、キナコに出会って。
 抱っこ紐作りにビルの茹でダコを挟んでの『死の揺り籠』でボーナスステージ……
 濃いな。
 濃厚な5日間だ。
 けどな。
 その内キナコと過ごせたのは、3日だ。
 まだ、たったの3日しか過ごせてないのだ。
 今日を終えてようやく4日になるんだ。
 あぁ……キナコ。
 キナコとの素晴らしき生活……

 こんな脳内になっているのにも理由がある。
 広場で昼食を買おうとしてたら、

 「よう!ソブル!帰ったぞ!」

 ちょっとした疲れを見せながらも、爽やかに片手を上げるリックがいた。
 タバサも無事の様で何よりだ。

 だが、リック家主が帰ったならば、キナコとのウハウハ2人暮らしが終了という事。
 もしかしたら、猫が難しいって理由で家も出なければならない。
 色々、終了のお知らせなのだ。

 「無事でなによりだ……」

 「何故に残念そうか、聞きたい所だ」

 タバサが頷きながら話し出す。

 「綺麗な家も今日までだったってことだろ?」

 「半分な……」

 「……半分以上を占めているようだが」
 
 「これ以上の発言は控えさせていただこう」

 タバサに嘘は通じないからな。
 その他の事で残念なのを見抜かれちゃ困るんだ。

 「リック達が来たなら、今日は戻るか……確認したい事があるし、な」

 「うん?何だ?」

 「いや……そのな?家主に断らず、だな……」

 「おいおい。何だ?まさか、女でも家に上げたのかよ?」

 まぁ、確かに女子です。
 女の子。

 「いや……まぁ……」

 「なっ、なんだとっ?! 見損なったぞソブル!! 」

 タバサがキレた。
 嫁入り前に、そんなんあったらキレるよな。
 タバサに嘘は通じない。
 が。
 真実を誤魔化しながら話すのも難しい。

 「まっ、待ってくれっ!違うんだ!人間じゃなくてだなっ……猫を拾っちまってな?可愛くて、な」

 抱っこ紐から、前世猫のキナコをソッと出す。

 「なっ?! えっ?! 女って?! 」

 「女の子、なんだ……」

 「はぁ~……紛らわしい……」

 タバサの怒りが霧散して、呆れた顔で見て来た。

 「もう離したくないんだ。もし、リック達が苦手で暮らすのが無理ってんなら、すぐ出て行こうって思ってたんだよ……」

 リックとタバサが顔を見合わせ、呆れた顔になったかと思ったら、急に吹き出して笑い始めた。

 「ったく、深刻な顔して、猫ってよぉ?」

 「まったくだ!もっと酷い事を想像してたぞ?」

 「だよなぁ……ぶふっ、猫って……」

 「ぶふっ……いや、悪いね。何か、コッソリ飼ってたのがバレた子供みたいだな」

 「ぶはっ!それだっ!俺もそう思った所だっ!」

 散々笑われる俺。
 子供の様なオッサンです。

 「そんなに笑うなよ……俺は真剣だったんだぞ?」

 「「ぶはっ?! 」」

 駄目だ。
 完全に笑いのツボを押してしまった。
 リックなんか膝をついて笑い続けてるぞ?
 俺、今回かなり真剣だったんだが?
 くそっ。
 もう、存分に笑え!ったく……

 治まってきたか?

 「……飼っても、かまわないか?」

 「ぶふっ……ああ……かまわな、かまわ、ぶはっ!」

 「ひっ……酷いぞっ……ソブル!治まり、かけて、たのにぃ!」

 リックとタバサがそれぞれ答えて、それぞれ撃沈していった。
 俺、確認取っただけだぞ?
 何もしてないぞ?
 今回は真剣に、ふざけず確認したんだぞ?
 まさか、普段の行いが悪かったからか?

 『※その認識でOKです』

 ……悪かったかぁ。

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