中島と暮らした10日間

だんご

文字の大きさ
上 下
40 / 53

40 ぼやくでしょ?迷うでしょ?

しおりを挟む
 『たけさんや。大変な事になったのじゃ……』

 「咲さんや、いったいどうしたんじゃ?」

 『それがのぅ……会社が合併してしまってのぅ』

 「ほぅほぅ」

 『わたしゃ、世界に羽ばたく事になってしもぅたんじゃ』

 「ほぅほぅ……ほへ?」

 『転勤族決定となりました!』

 「えっ……えぇ?」

 『ワールドワイドな咲になります』

 「なっ……なんと……」

 『まぁしばらくは国内転勤だけみたいだから……何とでもしようかなと』

 「……了解。お付き合いしますぜ、お嬢」

 『ふむ。苦しゅうない』

 「12月は例年通りに行けそう?」

 『勿論!聖地巡礼とイクラ祭りは大切です!』

 「じゃ、休みと予約取っておくよ」

 『お願いしますぅ』

 
 ……この前の、会社の合併話でしたか。
 ホッとしたけど。
 けど危機感テンコ盛りじゃないかっ?!
 国内なら、今まで通り会うのは可能だが。
 世界規模になると怪しい。
 ちょっと咲ちゃんの所の会社調べないとっ!
 多分、アメリカ・中国はあるだろうな……
 移動するのどうするか調べなきゃ。
 
 ……咲ちゃんは転勤、どう思っているんだろうか?

 もし……もし結婚を切り出してみたら……?

 いやいやいやいや。
 咲ちゃん、仕事がようやく充実し始めたって言ってたじゃないか?
 本人の気持ち確認もしないで言っても『ごめんなさい』されるに決まってる。
 確認して、モロモロの準備をしてからのお話だ。
 出来れば喜ばれての承諾が望ましい。
 でも、もし、咲ちゃんが結婚を望んでいなかったら……?

 …………
 
 自分、ゆくゆくは結婚するよなぁとフワッとしか考えてなかったからな。
 真剣に『いつ』って定めてなかったし……
 なんだか考える事を後回しにしてたんだよな。

 ……多分、咲ちゃんと一緒にいられる今が大事だったから。
 これ以上の重さを求めて、離れられる事が怖かったから。
 自分から望んで、拒否されるのが怖かったから。
 咲ちゃんから嫌われたくない。
 どんなに距離があったって、気持ちだけは離れて欲しくない……

 目茶苦茶を言ってるんだろうか……
 ……
 ……これは、咲ちゃんと話し合うべきなんだろな。
 今度の旅行の時、その時に……いや、う~ん……まぁタイミングを見て……
 ……うん。タイミングを見て。
 まぁ……いや……うん。

 よし。
 予約を入れよう。
 まず、入れとこう。
 そうだ。それが1番だ。
 ヘタレだって何だって言ってくれてもかまわない。
 咲ちゃんとの接点が消える事にくらべたら、こんなもんちっぽけなプライドなんてどうでもいいんだから。

 うん。
 さてさて。
 テンション上向きに修正するか。
 聖地巡礼する訳だし。
 CDかけて、気分を上げようじゃないか。
 勿論、函館の有名グループの曲。
 自分も咲ちゃんも大好きなグループだから。

 そして泊まるのは朝食バイキングでイクラ盛り放題の所。
 ここの温泉は、2人のお気に入りだ。
 雪がビシビシ降るような時でも、ここのお湯につかれば、しばらく身体が温かいまま。
 てゆーか熱い。
 なかなか湯冷めしなくて気に入ってます。
 しかも、湯上がりにアイスが無料で食べられる。

 『『ここ好き』』

 2人の気持ちはシンクロしていた。
 幸せを噛み締めたね。

 観光客価格だけど、居酒屋やラーメン屋もすぐそばにあるのもいいよ。
 イカ刺しは勿論、マグロが旨いの。
 大間のマグロが有名だけど、同じ海に面してるのは函館も同じだからね。
 ほぼ同じマグロ。
 もう同一マグロ。
 美味しいのは当たり前って事。

 よし。よし、よし。
 気分上がって来たよ?
 例年通りに行ける!
 ……あっ、いや、例年通りにいったら、朝食バイキングでハッチャケて、有名ハンバーガーショップで悔し涙を流すか……
 ……今年こそ、朝食は控えめにせねば。

 朝市でも、なんか食して来たいしなぁ。
 ……
 もう1回、咲ちゃんに連絡してみるか。
 宿泊日伸ばさない?って。
 いいよね?


 結果、2泊3日になりました。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

隊員の内部事情

元次三蔵
大衆娯楽
自衛隊の内部の内部。 いわゆる駐屯地の中で暮らしてる隊員たち(営内者)のドタバタヒューマンコメディ?を書いていこうと思います。(`ー´ゞ 一作品500~1000文字前後でサクッと読める感じでいきたいと思います。 めんどくさいからじゃないよ(-。-)y-~ なるべく毎日更新したいけど、たまには1週間くらい空いちゃうよね🎵 あっ、横書きの方が見やすいよ~🎵

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

処理中です...