【本編完結】ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話

ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話

３0 聖夜祭イベントに向けて

　
　幸いにも、クルスの奮闘によって攻略対象が絞られた時点での好感度はエドワードが一番高かったようで、この世界でもエドワードルートが優先して進んでいるようだった。
　エドワードルートでは、聖夜祭でクラス(７年Ｂ組ね)の出し物として、劇をやる事になっている。
　
　なんでも、とある勇者が道端に落ちていた少年を拾うと、そいつがたまたま＂神託の神子＂(二重表現じゃね？神子だけでよくね？)とかいう選ばれし輩で、奴のお告げを元に共闘して魔王を倒したのちに二人は結ばれる……という、まず道端に少年が落ちているという所からツッコみどころ満載な演目を、最終学年のＢ組の連中が代々演やる事になっているらしい。
　
　で、もちろん勇者役はエドワードで、神子役は……


「ハイハイハーイ！
　神子役はクルスさんがいいと思います！ 魔法使えるし‼︎」

　攻略ガイドによると、ゲーム上では主人公が何をやろうかオドオドしている間に神子役に推薦され、そのまま決定してしまうという流れなので、そうなる前に早々にクルスを推薦しておいた。
　
「えっ、神子役はこのハゲの方がいいんじゃない？光魔法の方が映えるでしょ」

　すっかり役を降りたトビーが余計な事を言う。

「俺は小道具がやりたいんですぅー。やらせてくれないとハゲビーム出すからな」

　演じる側は絶対に嫌だったので、周囲を脅しつつ小道具係に立候補した。

　こうして、クルスを神子役に据えることに成功し、俺もハゲビームによる脅迫の甲斐あってか小道具係に落ち着く事ができた。
　エドワードは役割決めの時に王太子教育で不在だったため、欠席裁判で勇者役に決まった。現実の世界なら揉めそうなところだが……まあ元々のシナリオでもエドワードが演じることになってたから問題ないだろう。他に勇者役をやりたいと言い出す奴がいなかった事も幸いだった。

　このエドワードルートのイベントでは、聖夜祭で演じる劇のラストに、勇者が神子にプロポーズした後、神子が身に着けていた『月桂樹の冠』なるアイテムを勇者に戴冠するシーンがあるのだが……本番前に、神子を演じる主人公を妬む何者かの手によって『月桂樹の冠』が隠されてしまうのである。
　
　シナリオ通りなら、本番直前にエドワードが無事に『月桂樹の冠』を見つけ出して、主人公の頭にのっけてやるところでお互い好感度が上昇、からの、後夜祭かなんかで盛り上がって色々……するような設定だったはずだ。
　
　そして……実は、『月桂樹の冠』の隠し場所は、攻略ガイドに載っているのだ。
　本来ならエドワードが必死こいてそれを探すところなのだが、優しい俺は隠してあるところのヒントをそれとなく伝えてやって、演技(とクルスとくっついてもらう事)に集中してもらおうと考えていた。
　

　
　エドワード・ブルジャイン
『みんな、私がいない間に勝手に役を決めてしまうなんてひどいな。
　でも君が一緒で心強いよ、ク・ル・ス・』

　エドワードもいい感じにバグってきて、クルスに質問を投げかける頻度が増えてきた。
　クルスは最近俺がいなくても質問が出るタイミングがわかってきたようで、回答の選択もバッチリ。こっちは至って順調だ。

　問題は……


　
　ヘラルド・ブルジャイン
『コノハ・ゲーこのハゲ、暇だから遊びに来たよ♡
　聖夜祭の準備、ボクも手伝ってあげようか？』
　　→手伝って下さい！
　　　僕がヘラルド様のお手伝いをしたいな♡
　　　間に合ってます
　

　俺が、ヘラルドルートをこなさなければならなくなった事だ。