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ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話

29 頼みの綱はエドワード

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 ヘラルドルートは、どちらも俺にとって最悪のものだった。ハッピーエンドの方が足の腱を切られていないだけましな気がしなくもないが、地獄と大地獄の差、と言ったところだろうか。いずれも同じ、地獄には変わりないのだ。
 これはもしかして、エドワードのバッドエンドの方がマシなんじゃね?と思い、エドワードルートの攻略ページを開いてみた。

 攻略ガイドによると、エドワードルートのバッドエンドは、
 
「……エドワードに愛想を尽かされた主人公が、学園を放校処分となり、元いた修道院に出戻りする……」

 ……とあった。
 あれ、ヘラルドのハッピーエンドより、こっちのバッドエンドの方が良くないか?と思ったが、
 
『そして、修道院の司祭と修道士達の慰み者にされる毎日を送るのだった』
 
 という何とも不穏な一文で締めくくられていた。

 エドワード……あんなに優しげな王子様ヅラしといて、正規のハッピーエンドではクルスを娼館送りにするわ、バッドエンドでは俺を修道院の奴らの慰み者にするわで、見限った奴らに対しては随分と血も涙もない男である。

 トビーとの友情エンドルートに入れる可能性が残っていれば、ここまで思い悩むことはなかったのに。トビーが攻略対象から外れてしまったことで、一番重要な安全パイがなくなってしまった。
 
 こうなったら、何が何でもエドワードの目をクルスに向けさせて、二人にゴールインしてもらうしかない。

「……というわけで、クルスは今まで以上にエドワードへの自己アピールを頑張ってください」
「うん……頑張ってはいるんだけど、毎回お前の名前を呼んで回答されるもんだから、なかなか心がえぐられるよ……」
 
 昼休み、いつものように空き教室で食事を摂りながら今後の立ち回りについてクルスと話し合っていると、突然、教室のドアがガラッと開いた。

「あれ……君達、こんな所で食べていたのかい?」

 ……エドワードと想定外のエンカウントを果たしてしまった。

「あ、ああ。俺が人の多いところ、苦手でさ」

 俺は咄嗟の思いつきで、エドワードに弁明した。
 まあ、人の多いところよりは少ないところの方が好きだから、嘘ではないか。

「そうか。……隣、いいかな?」
 
 こちらに「いやだ」と答えさせる隙もなく、エドワードは俺の隣に座った。
 すると突然、エドワードはキラキラエフェクトを身に纏いながら、俺に出題してきた。
 あれ、もしかして選択肢……出るのか?

 エドワード・ブルジャイン
コノハ・ゲーこのハゲ、明日の生徒会にはいつもと違うネクタイをしていこうと思うんだけど、どれがいいかな?』
 →さくらんぼ柄のがいいと思う
  バナナ柄のがいいと思う
  前方後円墳柄のがいいと思う

 そう言って、どこから出してきたのか、三本のネクタイを見せてきた。

 ……至極どうでもいい質問だった。多分どれを選んでも大丈夫なやつだ。
 俺がふつうに学園指定のネクタイ着けていけよ、と思っていると、クルスがエドワードに向かって優しい笑みを浮かべながら、ネクタイを指差して答えた。
 
「僕は……この、バナナ柄のがいいと思う。
 エドワードの綺麗な髪の色にそっくりだ」

 エドワードは相変わらず無反応なままだ。
 やはり俺がクルスのお気持ち代弁者にならないといけないのかと思って口を開いた瞬間、

『ありがとう。では明日の生徒会にはこれを着けてこう。
 選んでくれて、ありがとう。……

「‼︎」
 
 エドワードが、返事をした。好感度ゲージもしっかり反応している。

「……うん、絶対似合うよ」

 クルスが嬉しそうに頬を紅潮させて、エドワードに微笑んだ。

 
 ついにクルスが、エドワードのプレイヤーとして認識された瞬間だった。
 期待していたバグが、本格的に起こり始めた。

 エドワード、頼むぞ。
 クルスとハッピーエンドを迎えて、一刻も早く、このふざけたゲームを終わらせてくれ。



 そして、攻略対象がエドワード(とヘラルド……)に絞られたところで、聖夜祭というクリスマスイベントに向けた準備が始まった。

 
 
 
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