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ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話
25 バグを起こすんだ
しおりを挟むクルスと一緒に寮へと戻る途中、俺は一瞬見えたハートの好感度ゲージについて、考えていた。
「……どうした?ハゲ」
先を進んでいたクルスが、ぴたりと足を止めた。
どうやら俺は、考え過ぎて立ち止まってしまってたみたいだった。
「ああ……クルス、ごめん。
さっきさ、お前とエドワードが話している時、一瞬、好感度を示すハートのゲージが見えたんだ」
「……それは、本当か?」
クルスが目を見開いた。
「こんな事で嘘ついても仕方ないだろ。
あのゲージがクルスと話している時に出てきた……って事は、クルスにもエドワードを攻略できる可能性があるんじゃないかな、って思って」
「僕が、エドワードを……攻略?」
「うん」
俺は頷いた。
俺の中では、トビーと俺が友情エンドを迎えて、エドワードがあぶれたという設定になったら、それまで散々優しくしてやってたクルスとくっついてもらう算段でいたが、クルスが直接エドワードを攻略できるなら、断然そっちの方がいい。
いずれにせよ、攻略対象が二人に絞られるまで、まだ猶予がある。その間に色々と試してみる価値はありそうだ。
「おそらく、エドワードがダージリンって紅茶を一番好きだっていうのをお前が詳しく知ってて、その理由を伝えた事が奴の好感度に影響を与えたんじゃないかと、俺は思ってる。
あんな感じで、選択問題に答えた後に、その理由とか根拠みたいなのをエドワードに伝えてみるといいんじゃないかな」
「なるほど……」
クルスが顎に手を当てて、考え込んだ。そして、
「わかった。うまくいくかはわからないけれど……出来るだけの事を、やってみる」
クルスも力強く、頷いた。
エドワードの顔の横に見えたハートは、もしかしたらただのバグかもしれない。
でも、俺がこのゲームの中にいる事自体がバグみたいなもんだ。だから俺たちがバグを起こす事も、もしかした出来るかもしれない。
……いや、起こすんだ。俺たちが望む、ハッピーエンドのために。
それからというもの、クルスは回答の度に、エドワードに何故この選択肢を選んだのか、涙ぐましいほど丁寧に説明をしていた。
時にはこじつけが過ぎないか?というものもあったが、まあクルスなりに頑張っての事だろうからスルーした。
クルスが選択問題に回答した直後のエドワードは、相変わらず俺宛てにお返事をしてくれていた。しかし、クルスの説明を聞くと、エドワードはそれに適した受け答えをしており、更にハートのゲージの出現と、それが僅かながら増えていく様子が何度も確認できた。
こうしてクルスが順調に最適解の回答とプラスアルファの努力を積み重ねていく一方、俺はまあまあ適当に攻略対象をあしらっていた。
とは言っても、一応トビールートだけは、最適解を一通り把握してあった。例えば……
トビー・ラトゥラー
『コノハ・ゲー、掃除当番一緒だったやつが欠席で、オレ一人でやる事になっちゃった。
よかったら手伝ってくれない?』
それは大変!手伝うよ
一緒にサボって遊ぼう♪
決定→「忙しいから帰るね♡」
こんな時は、迷わず一番塩対応な選択肢を読み上げる。
当然トビーの好感度は増えず、「このハゲのいけず」とか文句を言ってるが無視だ無視。
今みたいに最適解を選ぶと面倒そうな選択肢ではわざと誤答して、それ以外はなるべく彼が望む答えを与えるようにしていく事で、俺はトビーの好感度を調整していった。
あとは、残りの三人である。
まず、変態保険医はそもそも自分から仮病を使ったり、実際に怪我をしたりして積極的に絡みに行かないと関わりが持てないキャラクターだったため、特に対策を練らなくても好感度の上げようがなかった。要は放置でおk。楽。
次に、ヤンキーは……同級生、しかも隣の席なので困っていたが、選択肢の中で一番塩対応っぽいのを選ぶようにしていたら、あからさまに元気がなくなっていき、話しかけられる頻度も減ってきた。
少し話してみた感じでは、思ってたより悪い奴じゃなさそうなんだけど……ごめんな。俺が選んだのはトビーだから、お前の好感度を上げるわけにはいかないんだ。
そして、一番厄介なのが、
ヘラルド・ブルジャイン
『やっほー、コノハ・ゲー。ヘラルド様が遊びにきたよ♡』
……学年が違うくせに、第二王子の特権濫用でしょっちゅう俺のところに来る、コイツである。
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