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ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話
23 主人公よ、なぜこの選択にした
しおりを挟むBL学園の授業内容は、一般的な高校二年生レベルくらいのものだと思われた。
数学は好きだったから余裕だったし、王国史?はどういうわけか、答えが赤シートで隠したら消えそうな薄い朱色で見えるようになっており、こちらも何とかなった。
ちなみに担任の熊五郎は数学担当だった。勝手に保健体育っぽいと思ってたけど、違った。
授業を聞きながらノートを取ろうとすると、日本語で書いてるつもりなのに、勝手にこちらの世界の文字に変換されて記されていった。読めなくはないけど、ぜんぶカタカナのように見えて少し読みづらい。
思いつきで、『美髪 しげる』と本名を書いてみると……駄目だった。コノハ・ゲーとしてアウトプットされた。マジでふざけんなよ、このハゲ!
必修科目が二コマ続いた後は、選択授業の時間だった。魔法が使える生徒を対象とした魔法実技という教科が選択授業の一つとしてあり、どんな事をするのか楽しみにしていたのだが、
『ラララ~我らの~ベイローレル学園ん~♪』
……俺が選択していたのは、魔法実技ではなく音楽だった。
「このハゲさん、音程もリズムもズレていますよ!
ちゃんと楽譜を見て、音をよく聴いてください」
「すんません」
グランドピアノの前に座る、バッハみたいな髪型…というかヅラの音楽教師に怒られた。
なんでよりによって音楽なんだ。俺、音痴なのに……。
「ハゲ、お前なんで魔法実技を選択しなかったんだ」
隣にいるクルスが耳打ちした。そんなの、こっちが訊きたいくらいだ。
「元々、主人公が選んでたのが音楽だったんだろ。
というかお前こそなんで魔法実技選択じゃないんだ?あれだけ凄い魔法が使えるのに」
「だから選択していないんだ。教師より使いこなせるから、以前わざと散々な評価を付けられた」
「そりゃ、ひどい話だな」
世間……というかこのゲーム、やたらクルスに冷たくないか?悪い奴じゃないのに悪役扱いだし。
「まあ……もう今更、選択は変えられないからな。
昼休み、時間が余ったら教えてやるよ。魔力の使い方」
「……ありがと、」
ほんと、いい奴なのにな。
クルスとヒソヒソ話していると、突然ジャーン!と大きなピアノの音が響いた。
「今度は無駄話ですか⁉︎ このハゲさん!」
「ヒィッ‼︎ すんませんっす」
再び校歌を歌い始めると、後ろの方からめっちゃイケボの美声が聞こえてきた。誰だろうと思って振り返ると……まさかのジェームス(しかも熱唱)だった。
あれ、意外とまじめに取り組んでる……?
音楽では散々注意されたが、なんとか午前中の授業を終え、昼食の時間になった。
ジェームスとトビー、あとどこからかやってきたヘラルドからランチのお誘いを受け、トビーとはどうしようか迷ったが、例の選択肢が出てこなかったのでお断りした。
ヘラルドはゴリr……じゃなくて身体強化魔法の使い手で、断ると子泣きジジィのように引っ付かれて大変だった。しかしクルスが『幻惑』と呟くと、突然俺から離れ、ヘラルドという名前なだけに、まさにヘラヘラと笑いながらどこかに消えてしまった。
クルスさんよ、奴に一体どんな闇魔法を掛けたんだ……?
そして。
「……なるほど、こういう食べ方もありだったんだな」
「でしょでしょ」
食事を持ち帰り容器に入れてもらった俺たちは、空き教室で二人、食事を摂りつつ午後のエドワードとのアフタヌーンティーに備えて選択肢を再確認した。今日はちゃんと、使い捨てのカトラリーを忘れずに貰ってきた。
ランチタイムは誰からの好奇の視線もない、穏やかな時間だった。
あっという間に6限目の授業まで終わり、約束通り、エドワードが俺の机の前までやってきた。
「このハゲ、クルス。迎えに来たよ。行こうか」
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