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ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話
22 このハゲ、クラスメイトに紹介される
しおりを挟むジンギスカンジュースを飲み干し、地獄へとトリップした俺は、クルスに支えられながらトビーと三人で教室に向かった。
「おえっぷ……教室どこ」
「もうちょっとで着くから。
……ハゲ、お前ホームルームで自己紹介する予定になってるから、それまでに状態異常なの何とかしろよ」
教室は本当にすぐそこだった。10メートルほど先の『7年B組』というのが、俺たちの教室らしい。
そういや担任って、ちらっと攻略ガイドで見た気がするけど、どんな奴だったっけ……?
ベアファイヴ先生
『おはよう。
遅くなってしまったが、これから、昨日から入った新しいクラスメイトを紹介する。
ボトムベーコン・キャップ修道院から来た、コノハ・ゲー君だ。
皆、仲良くするように』
……俺は今、ジンギスカンジュースという名の地獄の余韻が残ったまま、『コノハ・ゲー』と名前が書かれたホワイトボードの前に立たされていた。
担任は熊のように毛むくじゃらで、恰幅の良い中年男性だった。そして、どうやらモブにも必要に応じて例の字幕付き付箋が出るらしく、担任の名前がベアファイヴである事が判明した。あだ名は絶対、熊五郎だな。
それはさておき、俺が元々いたという事になっている修道院よ……初耳だったが、某機関車アニメのふとっちょな局長を思いっきり意識したお名前なのがまるわかりである。
「……ども。このハゲです」
もう諦めて皆が呼ぶように言ったら、コノハ・ゲーにすらならなかった。
……いいんだ。どっちにしろ正しく発音したところで、このハゲって呼ばれるんだから……。
「ベアファイヴ先生、転校生に質問、いいっすか?」
手を挙げたのは、昨日俺が"ハゲヒーリング"で治療した赤髪のヤンキー(ごめん名前忘れた)だった。机の上に足を乗っけていて、テンプレのような不良だ。奴の足が当たらないように少し前屈みで座っている、前の席のモブが可哀想である。
「お、ジェームス。珍しいな。
このハゲ、質問受けても大丈夫か?」
そうだ。こいつジェームスだわ。不器用でデカいチンコ(推定)のやつ。
「いやです」
「このハゲ……お前さ、彼氏いんの?」
オイィ、ジェームスよ。人の話、聞いてましたァ?
質問拒否したんですけどお???
前髪で目が隠れているのをいい事にジェームスを睨みつけていると、トビーも手を挙げて、
「はーい、オレも知りたいです!」
なんて言う。……まぁ、トビーとは波風立てたくないから、一応答えとくか。
「……いません」
彼氏なんて作る気もないです。はい。
ジェームスの口から小さく「っしゃ」という声が聞こえたのは、きっと幻聴だ。お前と付き合うのなんて、スーパージャンボ宝くじで二回連続一等を当てるよりも有り得ないからな?
一方のトビーも「そっかあ」と言ってほんのり顔を緩ませている。主人公って、そんなに魅力的か……?
「それじゃあコノハ・ゲーの席は、……確か、ジェームスとトビーの間だったな。そこに座れ」
主人公補正か知らんが、攻略対象二人に左右をサンドイッチされる席になった。一番後ろで寝られそうなのはいいけど、ヤンキーの隣とは、ツイてない……。
意気消沈しながら言われた通りの席に座ると、左斜め前方から飴のようなものが俺の机に投げこまれた。
その方向に目をやると、
「お疲れ。
それ舐めたら、口の中が少しはスッキリすると思う」
左斜め前の席に座っていたクルスが、小声で俺に話しかけてきた。
「クルス、ありがと……」
貰った飴を口に含むと、地獄の残滓が、すうっと消えてなくなっていった。
すごいぜ飴ちゃん、どうせならもっと早い段階で欲しかったよ……。
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