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ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話
18 上級国民の部屋とビジホ
しおりを挟むクルスの部屋に向かう途中、この世界の言語で、『コノハ・ゲー』と表札がある部屋のドアを見つけた。
両隣のドアの間隔を考えると、だいぶ狭そうだ。
「ここが、俺の部屋なのかな……?」
「そうみたいだな、ハゲ」
ハゲって言うなよ(泣)
っていうか鍵、持ってるのか?さっきポケット見た時は、それらしき物がなかったけど。
両手に持っていたカレーを一旦下に置くと、俺はぴょんぴょんと垂直跳びをした。
「……何してるの?」
クルスが訝しげな表情で俺を見た。
「いや、この部屋に入る鍵、どこにあんのかな?と思って」
しかし、俺が期待したような、金属が擦れるような音は聞こえなかった……。
「鍵、なさそう……。部屋に戻れないかも」
「鍵はいつも胸ポケットに入れておくように言われているだろ。入ってないか?」
クルスに言われるがまま、制服の胸ポケットを見ると、青いカードが入っていた。
「多分それだ。よかったな」
試しにドアノブの上にあるセンサーと思われる箇所にカードをかざすと、鍵が開いた。元々いた世界のカードキーと似た仕組みだが、少し違うようではある。
とりあえず寝床にはありつけそうで安心したが、極めて質素な内装で、例えるなら一泊7千円……いや6千円のビジネスホテルみたいだった。
「クルスの部屋もこんな感じなのか?」
「いや、まあ……とりあえず、行こうか」
少し歩いていくと、明らかにドアとドアの感覚が広くなっていった。
そして、最奥のひとつ手前のところに、『クルス・カイリ』の表札があった。
クルスが黒のカードキーを取り出すと、部屋のドアを開けた。
「入って」
「おおおー!」
クルスの部屋は、寮ということで限りはあるが、俺の部屋より断然広く、ひたすら豪華な内装だった。
うまく表現できないが、ヨーロッパの貴族のお部屋といった感じで、天蓋が付いているベッドにまず目がいった。……日本で普通に泊まったら、1泊7万くらいはしそうな雰囲気だ。つまるところ、俺の部屋の少なくとも十倍は、グレードがいい。寮でも上級国民と平民の差があるようだ。
クルスの食事は、食事用と思われる勉強机とは別のテーブルに、既に運ばれていた。テーブルの上に並んでいたのは、品目は多いが質素な和食で、ヨーロッパ調のテーブルとミスマッチだった。
「テーブルの椅子、一つしかないからそっちの勉強机から持ってきて」
「おけ」
俺はクルスの食事が並ぶテーブルにカレーを置かせてもらうと、勉強机の椅子を拝借してクルスの座るテーブルの向かいに置いて、そこに座った。
「ハゲ、その……作戦って、一体どんな」
「まあ食べてから話そうぜ。食事、あったかいうちに食べた方がいいだろ」
「あ、ああ……」
早速食べようとして、スプーンがない事に気付くと、クルスがカトラリーを渡してくれた。
「はい、これ」
「ありがとうございます……」
少し冷めたカレーを口に運ぶ。カレーは野菜が溶け込んだタイプのものに、ほろほろの牛肉が入っていて、期待した以上に美味しかった。
クルスのほうを見ると、サンマの干物だろうか。骨を丁寧に取り除いているところだった。
「……何? 見られてると食べ辛いんだけど」
「あっ、いや、綺麗だなって思って」
箸の使い方、めっちゃ綺麗なんだよな。自分がやると、もっと魚がボロボロになる。
「え……!」
クルスが赤くなると、俺からぱっと目を逸らした。
「ガン見しちゃって悪い、早く食べ終わろう」
「何だよもう……調子狂うな」
俺は早々にカレーを食べ終え、クルスが食べ終わるのを待っていた。
クルスは細身だが、意外とよく食べる方らしく、たくさんあった食事を残さず平らげた。
どうやら後で回収してもらえるらしく、食べ終わった食器類をドアの外に置くと、クルスが部屋に戻って来た。
「夕食も摂り終わった事だし、教えてくれ。お前の言う『作戦』ってやつを」
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