【本編完結】ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話

ういの

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ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話

15 恩人は悪役令息?

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 うわあ……また、名前。
 しかもここ、保健室だったのか。

 目の前の美男子は悪い奴じゃなさそうだが、また『このハゲ』を名乗るのが嫌で黙っていると、

「仕方ないな……あんまり使いたくないんだけど。……『自白』」

 美男子が『自白』という言葉を使った途端、俺の口がパッと開き、自分の意思とは無関係に言葉を紡いだ。
 
美髪 しげるコノハ・ゲー

 
 思わず口を押さえた。
 やばい、本名言っちまったと思ったが、幸か不幸か、本名にももれなくハゲのお名前補正が付いていた。
 
 なんだ、こいつの魔法……凄すぎない?
 そんでもってコイツにも『コノハ・ゲーこのハゲ』という名前を無理矢理褒められるのか……?恥ずかしさで顔がカッと熱くなると、
 
「……コノハ・ゲー?……えっと、この、ハゲ…?
 ………随分と変な名前だな。
 お前の御両親が、そう名付けたのか?」

 おそらく帳簿に『このハゲ』と書き記したであろう美男子は、クリップボードをベッドの脇に置くと、俺の生え際部分をジロジロと見ながら、眉間に皺を寄せて『変な名前』と一蹴した。

「……変な名前だよなぁ!このハゲだなんて‼︎」

 俺は思わず、美男子の両手を取った。
 
「は……? 僕は『変な名前』だって言ったのに、なんでそんなに嬉しそうなんだ?」
「『変な名前』だって言ってくれたからだよ‼︎」

 名前を褒められなかったし、変な字幕付き付箋も出てこなかった。
 それだけの事なのだが、ようやくまともな奴に出会えた! という気持ちで、不思議とめちゃくちゃ嬉しかった。
 もしかしたらこの美男子キャラクターは、ゲームの干渉を受けていないのかも……?

 俺は内ポケットから攻略ガイドを取り出すと、を探した。そして、

「あった。
 悪役令息、『クルス』……。これ、お前だよな?」

 俺は美男子……いや、クルスに、彼の画像が載った攻略ガイドの紹介ページを見せた。

「なんだ、これは……。
 それと、なぜ……お前は俺の名前をっているんだ……?」

 攻略ガイドに視線が釘付けになったクルスが、震えた声で俺に訊ねた。

「信じてもらえないかもしれないけど、俺はこの世界の人間じゃない。
 元々違う世界に居て、の体に、魂だけ入り込んでしまっているみたいなんだ」

 俺は異世界ここに来てから、ちょっと言ってみたかった台詞をそのまま言ってみた。

「何を言ってるんだ……?
 ……そんな事が、あり得るのか?」

 うんうん、そうなりますよね。掴みは上々か?
 こいつになら、見せちゃってもいいかな?いいよね?
 というかもう既に今、見せてたわ。攻略ガイドあんちょこ

「これがその証拠ね。えーっと、なになに……
 『はぁと悪役令息 クルス
 主人公のライバル。王太子の婚約者で、お得意の闇魔法で主人公にしょっちゅう意地悪をしに来るよ!』
 ……だってさ」
「待て、何故僕が闇魔法使いだと」
「だから書いてあるんだって、ここに。
 闇魔法ってなんか、強そうでいいな。でも…しょっちゅう意地悪をしに来られるのは困るかな」
 
 言葉を失い、呆然と攻略ガイドを見つめるクルスを傍目に、俺は次のページを巡った。

「なんだ、これは……」

 そこには複数の男性に囲まれて口内と尻を犯されている、クルスの画像……というか、スチルが小さく載っていた。
 俺はスチルの近くの説明文をかいつまんで、クルスに説明した。
 
「ええと……これは、どうやら俺とエドワード?がくっ付くと、お前が今まで主人公にしてきた嫌がらせがバレた上に、廃嫡されて娼館に売り飛ばされるらしい」

 クルスの顔が、みるみるうちに青くなった。

「俺、お前に嫌がらせなんてしてないぞ……今日会ったばかりだし…それに、」
「だよな。むしろこの世界に来てから一番優しくしてもらってる」
「?? ……何が言いたいんだ?」

 俺は攻略ガイドを指し示すと、クルスに言った。

「これは、この世界の『預言書』のようなモンだ。
 選択次第でお前はこうなる可能性もあるけど、逆を言えば、選択次第でこの未来は回避できるし、なんならエドワード?とお前がくっつく事も可能だと思っている」
「! そんなうまい話が」
「あると思うよ。そのためのこの本攻略ガイドじゃん。
 俺、この世界に出てくるどの男とも、恋愛するつもりはないんだ。もちろん、エドワードとも。
 だから、俺、お前とエドワードが両想いになれるように色々協力するから、その代わりに俺の事をここに出てくる変態……じゃなかった、派手なイケメン達から守ってもらえませんか?」

 先程の魔力供給といい、本名をつい自白させられそうになる魔法といい、クルスは多分、相当強い闇魔法の使い手だ。敵に回したくない。
 敵どころか恋のライバルになるつもりも毛頭ないし、なんならこいつは悪役どころか、むしろいい奴だと思うから……
 
「要するに、俺の『友達』になって下さい‼︎」

 ベッドから飛び起きると、俺はクルスに深々と頭を下げた。



 
 
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