上 下
14 / 63
ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話

14 魔力切れと介抱

しおりを挟む

 胸が、温かく心地良い。
 心臓の鼓動がとくとくと脈打つ音が聞こえる……ような気がする。
 
 ああ……俺、変なゲームをしようとしたせいで悪い夢でも見てたんだな。起きよう。そして、さらさに文句を言おう。
 姉にぶつける罵詈雑言を考えながら目を開けると、


「……やっと起きたか?」

 先程の全身真っ黒な美男子が、こちらを覗き込んでいた。
 ……まだ夢から覚めてないのか?と思い、頬をつねると

「いひゃい……」

 夢オチじゃ、なかった……。

「そりゃ痛いだろ、バカなのか?お前」

 美男子が呆れたようにため息を吐いた。
 そういえば、ここ、どこだ……?ベッドの上に寝かされて、その上で、……奴に、胸を触られている……って、胸⁉︎

「いやん、エッチ!
 変態男と寝れなかったからって……まさか、俺と?」

 慌てて美男子の手を払いのけようとするが、うまく体が動かせない。

「そんな訳ないだろ、誰がお前みたいな地味な奴となんか!
 あと、あまり動くな。お前は今『魔力切れ』を起こしているから、僕の魔力を供給しているところだ」
「魔力切れ……?」
「お前、どういう訳だか魔法を額から出力しているようだが、額からだと魔力効率が悪い上に脳へのダメージもでかいからやめた方がいい」
 
 美男子がぶっきらぼうに言うと、俺は、制服のシャツ越しに彼に触られている胸に視線を落とした。
 心地の良い温かさの理由は、これだったのか。
 
「そうか……お前、俺のこと介抱してくれたのか。ありがとな」

 助けてもらったのは事実のようだし、俺は美男子に礼を言った。
 美男子は一瞬驚いた表情をしたかと思うと、ぷいっと俺から顔を背けた。

「べっ…別に、お前の為じゃないからな!
 あの状況で倒れられたら、僕がお前に何かしたと疑われると思っての事だ‼︎

 それに…先程は、お前の話を十分に聞かずに責め立ててしまって……悪かった」
「あら」

 大分ツンデレさんのようだが、こいつ、悪役っぽい見た目に反して案外悪い奴じゃないのかも………?

 美男子は「そろそろ大丈夫かな」と言って、俺の胸から手を離した。
 気が付くと、頭のクラクラした感覚がすっかりなくなっていた。こいつの『魔力』とやらのお陰なんだろうか?

「起き上がれるか?……ほら、水」

 俺の背中に手を添えると、買ってきてくれたのだろうか、未開封のペットボトルを俺に差し出した。
 あれ、めっちゃいい奴じゃね……?

「ありがとう……」
「ペットボトル、開けられるか?」

 俺がキャップに軽く力を入れると、パキッ、というプラスチック音が小さく響いてペットボトルの蓋が開いた。
 未開封だったから大丈夫だよな?喉が渇いていたし、有り難く頂戴する事にした。
 冷たく、ほんのりとした甘味のある水分が喉に落ちていく感覚が心地良い。
 
「あらためて訊きたいんだが……お前は、エドワードと一体どういう関係なんだ?」
「ぶっ」

 俺は飲んでいた水を吹き出した。なんでこのタイミングで訊くんだ⁉︎ あほ‼︎
 
「……ゲホッ、だから、お前が考えるような関係じゃないって。あのなんたらの瓶は受け取ってないし、今日初めて会って少し話しただけで、いかがわしい関係でもないし、なんなら友人ですらない」
「……そうか」

 少し釈然としない表情をしていたが、美男子は俺を支えていた手を離すと、紙が何枚か挟まったクリップボードを取り出して、俺に訊ねた。

「お前、名は何という。
 保健室のベッドを使用したから、帳簿にお前の名前を書かないといけない」

 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

総長の彼氏が俺にだけ優しい

桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、 関東で最強の暴走族の総長。 みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。 そんな日常を描いた話である。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

処理中です...