【本編完結】ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話

ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話

１１ 状況整理@トイレ

　さっきから走り続けて、というか逃げ続けてきたせいか、頭が少しクラクラしてきた。
　そういやおでこのライト？消すの忘れてたかな。もう消えていいよ。
　

「ここなら大丈夫だろ……」

　少し先にトイレを見つけると、迷わずそこに駆け込んだ。
　途中、手を洗っていたオレンジ髪の爽やかなイケメンに「おっ、転校生じゃん」と声を掛けられたけれど、「うんこするから」と短く言って鍵を掛けた。

　爽やかなイケメンには申し訳ないが、今は誰か……というか、イケメンとは関わり合いたくないのだ。
　この世界のイケメンには、今のところまともな奴が一人もいない。そして俺は今、別にうんこをする予定もない。

　俺はスラックスを履いたまま便器に腰を下ろすと、休憩がてら、この状況をなんとか出来ないか考える事にした。
　

　まず、ここはもう異世界、しかもBLゲームの中なのは確定だよな。イケメンは俺男に迫ってくる残念な奴ばっかりだし、ハゲ魔法……じゃなかった、光魔法使えるし。
　てか、魔法が使えるってことは、もしかして。
　
「ステータスオープン！」

　変態どもがハートやら字幕付きの付箋？やらを出してたから、自分もそれっぽいのを出せるんじゃね？と思って叫んでみたけど……うん、何も出なかった。マイステータス、不明わからん。
　
　次に、何かしらの便利アイテムやお助けアイテムが入っている事を期待してポケットを探ってみる。
　気が付いたら制服を着ていたんだから、その中にチートアイテムの一つでも入っていてほしいものだが……。
　スラックスの方はハンカチすら入ってなかったが、制服の内ポケットの方に、漫画の単行本のようなものが入っている感覚がある事に気付いた。

　ブレザーの内側のボタンを外し、少し緊張しながら取り出してみると、自宅近くの本屋『やおい書店』のブックカバーが付いている本だった。
　
　外観だけだと何の本か不明だが、そういえば、このブックカバーが付いた本がゲーム機の近くに置いてあった気がするから、それと同じものだろうか。こいつも一緒に異世界に転生、いや、生きてないから転移？されてきたって事か？
　まあ暇つぶし程度にでもなればいいかと思い、本の中身をパラパラとめくると、先程声を掛けてきた奴らによく似た、というか同じ男達の画像が何枚も見えた。
　

「これは……」
　
　ブックカバーをめくり表紙を確認すると、そこには

『私立ベイローレルＢＬ学園　完全攻略ガイド
　～美麗スチルをぜんぶ見るための方法を一挙大公開！～』

　と書かれていた。