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日乃本 義に手を出すな
拾参
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ヒツジからの突然の申し出に、柾彦は少し困惑した。
「いや…特に予定はないけど、見ず知らずの奴が突然アポ無しで来たら、親御さんがびっくりするだろ」
「僕の家では、突然の来客は珍しい事ではないから、柾彦は気にしなくて良いよ」
そうは言っても、今日知り合ったばかりの田舎者の、しかも男爵の息子風情が手土産もなしに訪ねて大丈夫なものなのだろうか。
柾彦が逡巡していると、
「ちなみ僕の部屋に、舞の浪関の直筆サインと手形入りの色紙があるけど、良かったら見」
「行きます」
推しのサイン&手形入り色紙の誘惑に即負けした。
柾彦が食い気味に答えると、ヒツジは「じゃあ決まりね」と嬉しそうに笑った。
「柾彦、選定会が終わったら、車の中で一緒にドラエレやろうよ。協力プレイなら消費する体力も半分だから」
「おっ、それいいな。ちなみにリーダー何にしてんの?」
「今はランスロットにしているよ。その所為か、フレンド申請が結構来るんだ。柾彦は?」
「俺は…ヨシツネだったかな。
てか、おまっ…、ランスロットって、全然出ないって噂の最新ガチャのぶっ壊れリーダーじゃん‼︎うわー、よく入手できたな」
「彼を入手するために、十五萬くらい突っ込んだからね」
「じゅうご、…エグっ。金持ちのやる事は違うな…」
暫くの間、二人で選定会後の予定を話り合っていたが、
「ヒツジ、そろそろ会場に戻らないか?
俺、まだビュッフェの料理食べたいし」
腹の具合がすっかり良くなった柾彦は、ソファーから立ち上がると、再びビュッフェに参戦する意思を示した。
「君、さっき結構長いこと籠っていなかったかい?
でも…そうだね、戻ろう。……あ、」
ヒツジもゆっくりとソファーから離れようとしたが、何かを思い出したように、動きを止めた。
「どうした?」
「ウォータークローゼットに忘れ物をしてしまったみたいだ。
柾彦、先に戻ってて」
柾彦は一瞬考えたが、
「いや、待ってるよ。俺、あそこに一人で戻るの怖いし」
ヒツジを待つことにした。
「そうか、ごめんね。すぐ戻るから」
そう言い残して、ヒツジはトイレへと向かっていった。
「お待たせ、柾彦」
一分程度で、ヒツジは戻ってきた。
「全然待たされてないから、気にすんなって。
探し物は見つかったか?」
「………うん、お陰様でね」
ヒツジはそう答えると、微かに口角を上げた。
「いや…特に予定はないけど、見ず知らずの奴が突然アポ無しで来たら、親御さんがびっくりするだろ」
「僕の家では、突然の来客は珍しい事ではないから、柾彦は気にしなくて良いよ」
そうは言っても、今日知り合ったばかりの田舎者の、しかも男爵の息子風情が手土産もなしに訪ねて大丈夫なものなのだろうか。
柾彦が逡巡していると、
「ちなみ僕の部屋に、舞の浪関の直筆サインと手形入りの色紙があるけど、良かったら見」
「行きます」
推しのサイン&手形入り色紙の誘惑に即負けした。
柾彦が食い気味に答えると、ヒツジは「じゃあ決まりね」と嬉しそうに笑った。
「柾彦、選定会が終わったら、車の中で一緒にドラエレやろうよ。協力プレイなら消費する体力も半分だから」
「おっ、それいいな。ちなみにリーダー何にしてんの?」
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てか、おまっ…、ランスロットって、全然出ないって噂の最新ガチャのぶっ壊れリーダーじゃん‼︎うわー、よく入手できたな」
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俺、まだビュッフェの料理食べたいし」
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「君、さっき結構長いこと籠っていなかったかい?
でも…そうだね、戻ろう。……あ、」
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「どうした?」
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柾彦、先に戻ってて」
柾彦は一瞬考えたが、
「いや、待ってるよ。俺、あそこに一人で戻るの怖いし」
ヒツジを待つことにした。
「そうか、ごめんね。すぐ戻るから」
そう言い残して、ヒツジはトイレへと向かっていった。
「お待たせ、柾彦」
一分程度で、ヒツジは戻ってきた。
「全然待たされてないから、気にすんなって。
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「………うん、お陰様でね」
ヒツジはそう答えると、微かに口角を上げた。
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