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第三章
来てくれたんですね!
しおりを挟む一通りの流れを通して、紫苑はシルバーさんの居る、大きな立派なお屋敷の前に立った。
空には、大きすぎて、ぶつかりそうなお月様が、浮いている。
紫苑は、アールグレイのクッキーが入った袋を、ぎゅっと握りしめ、ドアの前にかけてある呼び鈴を鳴らした。
チリーン!
鈴の音色が森の中に響いて、静かに消えていく。
「シルバーさん!いますかぁ?」
紫苑が、呼びかけると、
「いますよぉ」
トンッ
シルバーさんが返事をしながら、上から降ってきた。
彼が着地をするとき、黄土色の衣がふわりとなびく。
「来てくれたんですね!緑の姫君!」
シルバーさんは紫苑のことを見るなり、まるで数年間会えなかった恋人に会った時のように感激していた。
大げさだなぁ
でも、それぐらいに紫苑が遊びに来たことを喜んでくれたのはとてもうれしい。
「はい!約束ですし。」
「ふふふ…覚えていてくれたのですね。」
「もちろん!紫苑、楽しかったことは、なかなか忘れられなくてですね・・・」
「うれしいです!では、また、私の屋敷の中で、お茶にしましょう。お菓子もたくさんありますよ。」
………………………………………………………………………………………………………………
お屋敷の中は、前回蓮花君と一緒に来た時と、雰囲気が少し違っていた。
何だろう、物の配置を変えたとか?
そして、机の上には、前回来た時の二倍ぐらいのお菓子の山が.....
「お茶を持ってくるので、少し待っていてください。」
シルバーさんは、そう言って、どこかへ行ってしまった。
紫苑は、シルバーさんを待っている間、机の上にある、お菓子の山から、キャラメルを取って食べる。
噛むたびに、ミルクと砂糖の甘みが染み出て来る。
おいしい。
「わ、かりんとうもある!」
紫苑はかりんとうも口に含む。
コリコリと音が鳴り、気持ちが良い。
そうしてお菓子を食べながらシルバーさんを待っていると、すぐにシルバーさんは戻ってきた。
「おまたせしました、緑の姫君。」
シルバーさんがティーカップに紅茶を注いでくれる。
ん~、いい香り。
紫苑はお茶を飲みながら、今日の出来事をシルバーさんに話した。
「、、、、それで、探しにいったら、蓮花君は階段で倒れてたんです!もう、ビックリしました!」
「それはそれは。あの黒髪さんは以外にメンタルが弱いのですねぇ。」
「紫苑が蓮花君のこと、『大ッキライ!!』とか言ってしまったから、、、」
「緑の姫君は、悪くないです。階段からつきおとす奴が悪いんです。」
シルバーさんはそう言ってくれるけど、実はアールグレイのクッキーを作りながら紫苑は思っていた。
本当に蓮花君が紫苑のことを階段から突き落とした犯人なのか、と。
確かに紫苑が階段を見上げたときに階段の上にいたのは蓮花君だったよ?
でも、だからといって蓮花君が犯人とは限らなかったんじゃないかな。
だってたまたま、あのとき上から降りてきただけかも知れない、犯人は別の人で、紫苑のことを突き落としたあとに逃げたのかもしれない!
もし、本当にそうであって、突き落としたのが蓮花君でなかったら?
、、、、、紫苑、蓮花君に物凄く酷いことしたんじゃないかな、、、
「確かめなきゃ、、、。」
よく考えたら、蓮花君はそんなことをするような人ではないじゃないか!
ちょっと変なところはあるけど、素直で真面目で鈍感な、いい人だよね。
「どうしたのですか?緑の姫君。」
シルバーさんが紫苑に心配そうな声色で恐る恐る聞いてきた。
「シルバーさん、あとから考えたら、紫苑のことを階段から突き落とした人は、多分、蓮花君ではないと思うんです!紫苑が勘違いしてたかもしれなくて、、、。なので、蓮花君に直接聞いてみようと思います。悩みを聞いてくださり、ありがとうございました。あと、もうすぐ、12時になるので、紫苑は家に帰、、」
『あ~!そういえば、紫苑さんがさっきからずっと持っているその袋は何ですか?』
シルバーさんが突然大きな声を出して紫苑に聞いてきた。
なんだか少し、焦っているようだった。
さっきから紫苑がずっと持っている袋?
あ、
アールグレイのクッキー!
忘れてた!シルバーさんに渡そうと思って、作ってきたんだった!
「これ、お茶の茶葉が入ったクッキーです!シルバーさんに渡そうと思って、、、どうぞ!!」
紫苑は慌ててシルバーさんに、アールグレイのクッキーが入った袋を渡す。
シルバーさんは、笑って受け取ってくれた。
「では、紫苑は、、」
「まだ時間ありますよ!」
「え」
「ギリギリまでお話しましょう?!」
「でも、もうあと3分、、、」
「あと3分もあるじゃないですか!!!」
シルバーさんがものすごい勢いで食いついてくる
よほど、紫苑が行ってしまうのかが嫌なようだ。
嬉しいが、困る。
12時までに帰らないと、、、、、何だっけ?
なんか良くないことが起きるような気がする!!
思い出した!
元の世界に戻れなくなるんだった!
「あと3分しか無いんですよ?!帰ります!」
いや、もしかして[月夜神様はあの手この手を使って元の世界に戻るのを邪魔します]って、このこと?!
ちょっと面倒くさいんだけど!!
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