花恋甘檻物語

緑山紫苑

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第三章

蓮花君の不安

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――――不安――――

 

 屋上についたら、蓮花君がレジャーシートを三枚引いた。

 紫苑と彼女たちはそのレジャーシートの上に靴を脱いで座った。

「ふふーふんふふー」

 蓮花君は、鼻歌を歌いながら重箱を包んでいる風呂敷ほどいていく。

 ぱかっ

 重箱弁当のふたを開けるといつものようにぎっしりと中身が詰まっていた。

 さすが蓮花君。相変わらず、とてもおいしそうだ。

 そして…

「今日のお弁当は、紫苑さんの好きな、春巻きに唐揚げ、それにほうれん草の胡麻和え、大学芋、切り干し大根の煮物、エビチリ、・・・・・・・・その他もろもろです!どうぞ!」

 と、いつものように蓮花君が献立を教えてくれる。

「いただきます!」

 最初は大学芋から…パクパクもぐもぐ、ごっくん!

 ん~美味しい!さすが蓮花君。こんなに料理が上手なんだ、きっとお菓子も作ったらめちゃくちゃ美味しいんだろうな!紫苑が頼んだら、お菓子、作ってくれるかな!あ~~~~楽しみ!♡

「わあ!すっごいねえ!このお弁当。もしかしてだけど黒川君の手作りィ?」

 黒川ファンクラブのリーダー的存在、相沢 麗子さんが蓮花君に話しかけてきた。

 麗子さんはつり目で黒髪で、逆三角形顔の長身の美女だ。

 そして、ツインテールだ。ちょっと紫苑とかぶっている・・・

「そうですよ、相沢さん。このお弁当は俺が作りました。」

「わあ!本当?メチャクチャおいしそうなんだけどっ!私もそのお弁当、食べてもいい?」

「いいですよ」

「本当?チョー嬉しい♥」

 相沢さんと蓮花君が楽しそうに話している。

「麗子だけずるい!うちも食べていい?ね!ね!?」

「私も食べたいなぁ♥」

 村田 リネルさんと、秋田 カイルさんも、蓮花君に言い寄ってきている。

 村田さんは、金髪の陽キャ、秋田さんは、たれ目で茶髪でお姫様キャラ。

 どちらも違ったタイプの美女だ。
 
 ハーレムって、こうやってできていくんだな…

 紫苑は、ふとそう思った。





「そういえばさぁ、緑川さん、今日お弁当持ってきていないようだけど、もしかしていつも黒川君に手作り弁当作ってもらってるの?」

 相沢さんが少し責めるような口調で紫苑にそう言った。

「俺がついつい作りすぎてしまうので、紫苑さんに食べてもらってるんですよ。」

 蓮花君は彼女たちに、にこっと笑ってそう言った。

 「「「きゅううううううううううううううん♥」」」

 黒川ファンクラブは蓮花君の笑みを見るなり、突然一斉に変な声を出して後ろに倒れた。

「え?」

 蓮花君の目が点になった。

 そりゃそううだろう。目の前で三人、急に倒れたのだから。

 蓮花君が気にする必要はない。そういうものだから。

 村田さんが起き上がってきた。

「そういえばさぁ、いつも緑川さん、黒川君にお弁当作ってもらってるみたいやけど・・・・・・緑川さんは黒川君にお弁当作ってあげたことあるのかなぁ?」

 相沢さんが飛び起きてきた

「確かにねぇ。でも、緑川さんって、黒川君の恋人なんでしょお?さすがにあるってぇ!リネル。」

 秋田さんも起き上がってきた。

「麗子の言うとおりだよ、リネル。だってそうじゃなきゃ緑川さんが黒川君の手作り弁当を食べるためだけに、恋人やってるだけみたいじゃない?」

「フフッ。そうだよねー♥」

 何それ

 その、『恋人なら彼女が彼氏に弁当を作ってくるものだ』みたいな思考は!

 確かにそうかもしれないけどっ

 今の日本は男女平等社会でしょ!

 もう古いのよ、その考えは!

 蓮花君は料理をするのが好き、紫苑は食べるのが好き、だからこういう組み合わせになったの!


 

 。。。。。。。。。。。。。。。。。


 
 
 ダンっ!!



 蓮花君は両手を床につけて相沢さんたちを強くにらみつけた。

「別にそれでもいいじゃないですかっ!!」

 蓮花君の怒鳴り声が屋上に響く。

 恐い

 蓮花君はなぜ、そこまで怒るのだろうか

 彼が彼女たちに悪口を言われているわけでもないのに・・・

 

 トットットトト・・・ガチャ


「あっ!紫苑君、ここにいたんだね!も~探したよぉって!何?蓮花君のお顔が怖いよ?紫苑君、いったい何があったのさ!」

 カエアンが腰まである、紫髪のみつあみを揺らしながら屋上にやってきた

 ほっ

 やっと、まとな人が来てくれたよ...
 
「実はね、カエアン,,,,」

「俺と紫苑さんは恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!別にいいじゃないですか!たとえ紫苑さんが俺の手作り弁当を食べるためだけにお付き合いをしていたとしても・・・・・・いいじゃないですか!蓮玲姉上もおっしゃっていましたっ!恋情など、後からついてくるものだとっ!だからいいんです!今はゆっくりと手順を踏んで・・・・・・ハハッ別に愛されていなくても、一応恋人になれたのです!俺と紫苑さんは恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!恋人なんです!うははははは!アハハ!はははははははは・・・・・・」


・・・・・・蓮花君が壊れた

 蓮花君は、『恋人なんです!』と、言いなが笑い転げだした。

 顔は真っ青で、目からは滝のように水が流れ出している。鼻水が垂れている。

 イケメンが台無しだ。

 カエアンはそんな蓮花君を見るなり、いやそうな顔をして

「こいつ、狂ってやがる・・・」

 と、まるでごみを見るような目で蓮花君を見ていた。

「そうだね…蓮花君狂っちゃったみたい・・・。どうしよう?カエアン・・・。」

 紫苑は、カエアンに、そう、聞いてみた。

「う~ん。とりあえずは蓮花君がこうなる前までのことを教えておくれよ、紫苑君。」

「わかったよ、カエアン。実はね、・・・・・・・」






 紫苑はカエアンに蓮花君がこうなる前のことを話した。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――



「・・・・・なるほど・・・。理解した…って、その、相沢さんたちはどこに?」

「ああ、蓮花君が怒鳴り始めてから、怖がってそそくさと逃げて行ったよ。」

「まあ、・・・・・・そうなるよね。」

 カエアンはあー、と、ため息をついて蓮花君のほうに歩いて行った。

 そして



 ゴッ!



 蓮花君の顔面を勢いよくぶん殴った。

 
蓮花君は起き上がってカエアンをにらみつけた。

 鼻血が出ていた
 
 「何をするんですか!カエアンさん!痛いです!」

「ああ、よかった。やっと正気に戻ったね、蓮花君。」

 カエアンは、蓮花君にこにこと笑いながら話しかける。

 ただし、目は笑っていない。

「ねえ、蓮花君。君、今何をしてたかわかってる?」

「・・・・・・・・・・・・・。」

「相沢さんたちにいやなことを指摘されたからって、彼女たちに怒鳴り散らかして?泣いてわめいて?『別に愛されてなくても、一応恋人になれたんです!』?・・・・・・ふっざけるんじゃねぇよ!君は赤ちゃんなのかい?」

「っつ……!」

 カエアンの言葉に蓮花君の表情が大きく歪む。

 カエアンは諭すように立て続けに蓮花君に言った。

「さっきからずっと僕と紫苑君は君の言葉を聞いていたよ...紫苑君は蓮花君の言葉を聞いて君のことを、どう思っただろうね。」

「ううっ・・・」

 カエアンの言葉に、すでに真っ青だった蓮花君の顔がさらに血の気をなくしていく。

 蓮花君は恐る恐る紫苑のほうに目を向けた。

 紫苑は、苦笑いした。

「蓮花君、ごめんね。」

 蓮花君は、真っ青な顔で必死になって叫ぶ

「し、紫苑さん!ち、違うんです!ごめんなさい!俺は……俺は!」

 なぜ、そんなにも必死なのだろう、それにもともと紫苑と蓮花は恋人言う名の友達だ。

「別に恋人じゃなくてもいいじゃん。ただの友達に戻ろうよ。」

 蓮花君の為にも紫苑は、いったん距離をとったほうがいいい。





 今日のお昼休みはこうして終了した。




 
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