花恋甘檻物語

緑山紫苑

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第三章

いじめ

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 ――ファンクラブの質問攻め【蓮花目線】――




「ねぇねぇ!黒川君ってさぁ、緑川さんとお付き合いしちゃってたりする?」

「そーそー。なんか最近二人いつも一緒じゃない?私たち、気になっちゃってぇ~」



 俺は今、何故かクラスの女子、いや、ほかのクラスの子もいる・・・・に、囲まれていた。

 そして、俺と紫苑さんの仲を聞かれている。

 俺は、果たして、この子たちになんて答えたらよいのだろうか?

 正直、紫苑さんとお付き合いをさせていただいている、と、言ってしまいたい。

 この機会を通じて、悪い虫を払っておきたい・・・・

 でも・・・

 勝手なことを言ったら、紫苑さんに嫌われてしまうかもしれない。
 
 それは困る・・・・・


「え~と…紫苑さんに聞いてみたらどうですか?」

 俺が答えを濁して彼女たちにそう言うと、彼女たちは、

「え~。うちらは、黒川君に聞いているんだよぉ?」

「で?実際はどうなの?」

 と、ぐいぐいと詰め寄ってきた。

 どうしよう・・・

 ちょうどそのころ、カエアンが教室へ帰ってきた。

 カエアンは、怪訝な表情をして、俺と彼女たちを見つめていた。

 そして、

「蓮花君と紫苑君が付き合ってる?なにそれ・・・・ありえないんだけど!」

 カエアンは俺のことを見て、鼻で笑った。

 ・・・・・・・むかつくっ




「ありえなくないですよ。だって、今、実際に俺と紫苑さんは恋人ですから。」

「なっ??!!!」

「「「「「ええええええええええ?!!!!!!」」」」」

 

 学校の外まで聞こえるんじゃないかと思うほどの叫び声が俺のクラスから響いた。




 ・・・・・・ガラララ


・・・・紫苑さんが、移動教室から帰ってきた。

「っあ・・・・・・」

「「・・・・・・・・・・・・」」

 俺と紫苑さんはしばらく見つめあった・・・・
 
「な、七限、遅れるから、もう行かなくちゃ!」

「え、あ、頑張ってください……いつものところで待っています。」

 紫苑さんは、パタパタと教室から出ていった。

 紫苑さんは、さっきの話を聞いていたのだろうか?

 だらだらと冷や汗がたれる...。


 

「・・・・・紫苑さん・・・。」

 彼女はさっきの出来事をどう思ったのだろうか。

 ……やっぱり、公にはしたくなかったのだろうか

 俺は紫苑さんの意思を聞かずに皆に恋人だと言ってしまったことを後悔した。









 


 ――ファンのねたみ――





 次の授業も移動である。

 紫苑の通っている高校はちょっと変わった高校で、自由選択制で、七、八限授業がある。
 
 ピアノ、バスケ、お琴、太鼓、朗読、茶道、華道、囲碁、将棋、フランス語、韓国語、中国語・・・・・・などなど、様々な教科を学ぶことができる。

 別に自由選択制なので受けなくてもいいのだが、せっかくタダで学べるのだから、ちょっとした習い事をする気分で、受けれるだけ、受けておこう、と、いうのが紫苑の考えだ。

 囲碁や将棋などのゲームでも、しっかりと授業を受けさえすれば、単位を取ることができるのでちょっぴりお得な気分だ。

 ちなみに紫苑はお琴と囲碁を選択して、授業を受けている。

 次の七限の移動教室はお琴だ。


 蓮花と紫苑が、恋人という名のお友達、を、始めてからは、蓮花の部活が遅くなる時以外は一緒に帰っている。
 
 同じマンションに住んでるし・・・・

 蓮花は七、八限授業を取っていないが、一、二時間くらいなら待てると言って、いつも紫苑の授業が終わるまで、自習室で待ってくれている。

 紫苑の足はいつものように教室へ向かっていたが・・・・・


「ありえなくないですよ。だって、今、実際に俺と紫苑さんは恋人ですから。」

「なっ??!!!」


 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 蓮花君?

 紫苑の教室の中から蓮花のイライラしたような声が聞こえてきた。


 
「「「「「「えええええええええええ?!!!!!!」」」」」


 次の瞬間、叫び声が聞こえてきた。

 もちろん、紫苑のクラスからである。

 ・・・・・どうしよう。

 今、教室に入るのは勇気がいる。うん。

 でも、次の移動授業の時間は迫ってきている。

 荷物も、教室の中にある。

 紫苑は覚悟を決めて教室の戸を開けた。

 ・・・・・ガラララ

「っあ・・・・・・・」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・。」」

 紫苑は教室に足を踏み入れた途端に蓮花と目が合った。

 ・・・・き、気まずい・・・・

「な、七限、遅れるから、もう行かなくちゃ!」

 紫苑は蓮花から目をそらし、荷物を持って、急いでここから飛び出した。

 後ろから蓮花君が何か言っていた気がしたが、紫苑は構わず走った。

 だって、紫苑は今すぐその場から離れたかったんだもの。



 
・・・・・・・ なんだか、悪い予感がする


 





 紫苑は、七限授業が終わっても、蓮花が自分を待ってくれていうだろう自習室に寄ることをせず、一人で家に帰った。







 悪い予感は本当だった。


 次の日、紫苑が学校に行くと、そこは、地獄に変わっていた。





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