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第三章
鈍感な蓮花
しおりを挟む――黒川ファンクラブ――
「あの二人最近、仲良すぎない?」
「確かに・・・・・付き合ってたりして!」
「えー!ナイナイ、だって、黒川君がこの高校に来てからまだひと月もたってないよ。」
「ひと月もあれば、恋愛ぐらいできるよぉ♥」
「そうかなぁ。じゃあ、もし付き合ってたとしたら、どっちからだろ?」
「絶対、緑川さんからだよぉ!きっと、黒川君に必死になって、告白して、OKもらったんだよぉ♥」
「あー。ありえそー!きっと、優しい黒川君は緑川さんに必死になって告白されて、断れなくて仕方がなく付き合っちゃったんだ!」
「そうだね!そうじゃないと緑川さんが黒川君と付き合えるなんてありえないよ!」
「そーそー。緑川さん、たいしてかわいくないのにいつも黒川君と一緒にいるなんて・・・・・・絶対に調子に乗ってるよね!」
「黒川君可哀想・・・・・・あんなぶすと付き合ってるなんて・・・」
「いやいや、まだ付き合ってるって確定したわけじゃないって!」
「そうだねぇ~。本人に直接聞いてみる?」
「ええ~⁈緑川さんに?」
「違うって!黒川君に、だよ!緑川さんだと噓つくかもしれないじゃん!」
「だねぇー。誰が黒川君に聞きに行く?」
「私やだよぉ?だって、恥ずかしい(n*´ω`*n)」
「うちだってそうだよ!・・・・・・そうだ!みんなで聞きに行こうよ!」
「「「「「さんせーい!」」」」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・。黒川君が転校してきて、三日でできた黒川ファンクラブ。
紫苑が黒川ファンクラブの部室の前を通るときに、女の子たちの、このような話声が聞こえてきた。
なにこれ?
完全に紫苑が悪者みたいじゃない?
紫苑はいらいらしながら黒川ファンクラブの部室の前を通り過ぎた。
――紫苑のどこが好きなの?――
紫苑が一階に降りると、蓮花がいた。
「あれ?蓮花君、今日木曜日だから、弓道部じゃなっかったけ?」
「先輩たちが校外学習で、学校にいないので、今日の部活はお休みになったんです。」
「そうなんだ。」
「なので、今日は紫苑さんと一緒に帰れます。」
蓮花はそう言って、ほほを紅色に染めてほほ笑む。
これ、完全に恋する乙女でしょ!
かわいい・・・・。
そういえば、蓮花は紫苑のどこを好きになったのだろう?
彼は紫苑のことを好きだと言ってくれたが、どこが好きなのかは聞いたことがない。
あの、黒川ファンクラブの子が言ってたように紫苑とは仕方がなく付き合っているのだろうか?
いやいや、
そもそも告白をしてきたのは蓮花からだし、紫苑たちは本当の恋人ではなく、恋人という名の友達だ。
では、蓮花はあの子たちに紫苑と付き合っているのかと、聞かれたら、なんて答えるのだろう。
友達、だというのだろうか
恋人、だというのだろうか
紫苑はそんなことを考えながらも蓮花に聞いてみた。
「そういえばさ、蓮花君は、紫苑のどこが好きなの?」
「全てです。」
蓮花はそれが当たり前だというように即答した。
「ぜ、ぜんぶ?」
「はい。紫苑さんの全てが愛おしいです。」
「・・・・・・・・・。ありがとう。」
恥ずかしい。
何で、簡単にそんなことを言えるのだろう。
「これはモテるにきまってる・・・・・。」
「え、」
蓮花は不思議そうな顔をして、紫苑のことを見た。
・・・・・・・鈍感
彼は気づいてはいないのだろうか?
自分が本当にイケメンで、たった数日で【黒川ファンクラブ】が、できてしまうほどだということを。
・・・・・・やっぱり紫苑は、蓮花君と釣り合わないよ・・・・・・。
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