嫌われものと爽やか君

黒猫鈴

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「……」

爽やか君、こと菅原道万から貰った軟膏。
行為により痛かったお尻は、不覚ながら軟膏を塗っていたら綺麗に治った。
だから…もう必要無くなった軟膏を返しに…と、あと…

「…」

軟膏を持つ反対の手には湿布が大量に入った袋。
何故湿布を持っているかと言えば、御礼…である。
本当はスポーツしているしリストバンド…みたいなものがいいかなぁとは思ったのだが好みが分からないし、何より僕が贈ったものなど身に着けてはくれないだろう。
そう思ったところで、必然と贈る物は決まってくる。

「…でも湿布って変、かな」

消耗品だからきっと何時かは使ってくれるだろうかな、とは思っているんだけど…。
でも贈り物にしては変な気がする…が。

「まぁいいか」

どうせ好かれようとしてやっていることではない。
ただの御礼、だ。
嫌われ者からの贈り物などなんだっていいだろう…。



「ここ、だよね…」

2-A。
菅原道万のクラス。
ちなみに転入生高宮優雅のクラスでもある。
騒がしいクラスを覗いてみると、高宮優雅がいた。
菅原は探すがいない様子である。

あいつ何処へ行った!?

折角来たのに!と
湿布の入った袋を握り締めた際に、

「おい、何故此処にいる?」

不意に後ろから声を掛けられ振り返ると待ち望んでいた人物、菅原道万がいた。

高宮を虐めていたのを思い出したのか目つきが鋭い。

「また、優雅に何かするつもりか!?」

あーあ、そんな目で見ちゃって…

「…べつに、何もするつもりもないんだけど。まぁ敢えて言うなら、道万君に、かな?」

ふふ、とわざとらしく笑えば眉を顰められた。

「おれ、に?」
「うん、この前の軟膏、と御礼」
「は?」

ポンポンと唖然としている菅原の手にそれらを乗せる。

「軟膏ありがとう、すごくよく効いた。御礼は、まぁー…使いたければ使って。僕、別に菅原君のこと好きじゃないし、そんなに重く考えなくて良いから。」

次々と僕の口から出てくる言葉に焦っている菅原をみるのは楽しい。
しかし、やはり好かれていない人と一緒にいるのは精神的にキツい。
それに…

「それじゃ、ありがと?」
「おい、」
「あと、もう僕に構わないでね。正直高宮の取り巻きは嫌いだから」
「っ、お前」
「じゃあね」
「…っ」

言いたいことだけ言って、すぐに踵を返す。
それに、高宮のクラスが近いからか、僕の悪口が飛び交う廊下に居たくなかった。

要件のみを言い帰る僕を菅原は睨むだけで…

ただ僕は悪口に耳を塞ぎたいのを我慢しながら、足早に自分の教室に戻るのだった。
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