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2人のその後

カエルの王子様と少女

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「…変じゃない?…コレ…」

まるで今まで見てきた…綺麗なお姫様達が着ているような、派手で煌びやかなドレス。
私みたいな平凡には似合わないドレスに裾を持ち上げ広げて見せた

「そんなことないよ、君にはよく似合っている」
「そう、かな?」

フワリと一回転。
柔らかく舞うドレスにやはり似合わないんじゃ?と疑問が浮かぶ

面前の私の王子様はニコニコ笑んで椅子に座っていた。

「似合っているに決まっている、君の前ではドレスが霞んでみえるよ」
「…そんなことない」

でも嬉しくて顔が赤くなる
それに王子様は笑みを深くして、椅子から立ち上がり私の元に来た

「君は綺麗だと以前から言っているよ、少し自信を持ってみたらどうかな?」
「…だって、」
「んー…どうして君は、こうもネガティブなのか…あ、そういえば理由聞いていなかったね」

何故だい?と顔を覗き込んできた彼。
格好いい彼の顔に未だに見慣れない私は恥ずかしくて下を向く。

「それは、あの」
「以前言っていた裏切られた、期待したくない、という君の言葉の真実は?」
「っ」

裏切り…期待…
その言葉と共に思い出した辛い記憶に私は唇を噛んだ

「そんなことをしては君の可愛い唇が傷ついてしまう」

王子様は私の唇に触れ優しく撫でてくれた。
少し傷付いた唇に眉を下げる

「ああ…傷付いてしまったね…駄目だよ、自分で自分を傷つけるのは…痛いだろう?」
「…はい、」
「じゃあ消毒」

不意に近付いてくる顔。
間近にあった顔に驚き目を見開く。
そして私の唇を塞いだ王子様。

「ん…」

それは魔法のようなキス…
だって、そのキスで辛い全てを忘れてしまってもいいと思ってしまったんだ。

啄むようなキス。
軽く唇にもう一度キスして離れていった顔に私はぼんやりみていた

「真っ赤にしたまま呆けた顔なんて…誘ってるとしか思えないよ?」
「っ違?!」
「ふふ、冗談さ」

クスクス笑う彼に頬を膨らませれば、いきなり笑みを消した

「辛いことを思い出した?ごめん、話したくないのなら話さなくていい」
「…」

心配そうな顔
私はその顔に手を添えて首を振った

「ううん、話します…」

それから私が色々な国の人物に成り代わっていたことを話した。
成り代わり裏切られたこと、信じて愛していたのに殺されたこと…だから諦めていたこと期待したくないと思ったこと。

それを話している間、彼の顔を見れなかった
もしかしたら失望されてしまうかもしれない。
彼に捨てられるかもしれない…

そう考えると私は…
きっともう誰一人信じられなくなってしまうかもしれない。

そして話終われば、途端に抱き締められる

「辛かったね…そうか…だから君はあんなに傷付いていたんだ」
「…」

吃驚した…だって、

「絶望していないの?」
「何故だい?」

平然と聞いてきた彼に私が慌てる

「私は沢山裏切られてきた…それほど醜い人間なんだよ…」
「いいや、君は何一つ悪いことしている様には思えなかったけれど。寧ろもっと好きになったよ。」

頑張ったんだね、と優しく頭を撫でられ不意に涙が零れた。

「…辛いことの繰り返しだったのに…よくここまで頑張ったね。…そして俺の世界に来てくれてありがとう。」
「っ…うん、」

どうしよう、嬉しい。
ありがとう、なんて…こっちの台詞なのに。



暫くして泣き止んで、赤い目も引いてきた時…

「それにしても、君が生きてきた世界の住人達は見る目がなかったね」
「?」

首を傾げる私に、王子様は意地悪な…だけど優しく笑って

「とりあえず、君の魅力に気付けたのが俺でよかったって話さ」
「なに、それ」

はは、と私たちは笑いあった。
その時、何処からかシャッター音が鳴ったことなんて気付かない私…

チラッと窓の方に目を向けた彼は素早くカーテンを閉めた。
まだ夜じゃないのに?と怪訝に彼を見つめていた私は、すぐに戻ってきた彼に持ち上げられた

「え?え?」

いきなりのことに驚く暇もなく、着いたのは寝室で。
大きなキングサイズのベッドに優しく降ろされた。

真っ暗な寝室。
不意に私の上に乗ってきた王子様の瞳は不適に笑っていた
酷く妖艶で…胸が高鳴る

これからする行為をわかっていた。
一応17歳ともなれば自然に行為の名前くらい覚えてしまう。

それでも…嫌じゃない
寧ろ愛おしささえ感じてしまうのは、

「…好き、」

彼が好きで私の初めてを捧げでもいいと思っているから。

乗ってきた王子様の肩に手を回し口にキスした

暗闇の中、王子様が唇を舌で舐める。
官能的な光景にドキドキした

「君は…俺を煽って…。どうかしてしましそうだよ」
「っどうかなって」
「ふふ、手加減できそうにない…」
「しないで…」
「っ…」
唾を飲む音の後、ドレスの中に入る彼の手を感じ私は全てに身を任せた。

「…ん、」
「愛してるよ」
「うん、…信じてる、」

だから…ずっと…ずっと、側にいて、愛して…
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