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第三十三話 冬の友

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 時間は過ぎ季節は春と言いたいところだが、王国の冬は長い。探知魔法の完成後少しずつ範囲を広げ、紙が耐えられる範囲を探す。結果として俺の魔力量と紙の耐久性を考慮した範囲として十六メートルが限界だとわかった。それでもまったく分からないよりはマシである。

 さて刻印魔法の研究が一段落過ぎて今俺が切実に思っていることは「暖房が欲しい」ということである。
 この世界当たり前だが電気はない。その代わり様々なものを魔力で補っている。火をつけるのも水をくみ上げるのもすべてが魔力に依存している。
ここで疑問なんだが一端の高校生が異世界に電気を普及することはできるか。答えは不可能である。そもそも電気の作り方を知らない。

 というわけで俺は結局魔力に頼った防寒具を作ることにした。
 この世界の防寒具と言えば暖炉、風呂、厚着をするの以上である。そのため何かできないかと考える。ブツブツ独り言を言っていると俺は男風呂の前に立っていた。
 そういえばここの風呂はどうやってお湯を沸かしているんだ?
 俺はその辺のメイドに聞いてみると地下にボイラー室的なものがあるらしくそこで常にお湯を沸かしているらしい。行ってみたいと言ってみるとあっさり連れて行ったくれた。
 そこには大きな窯があり、常に窯じいみたいな人が黒い塊を操って石炭を入れているなんてことはなく、ケイル鉱石という火山地帯に存在する鉱石によりお湯を沸かしていた。この鉱石は常に熱を放出しており、その温度は百℃と言われている。
 これが買えないかと聞いてみたが、その鉱石は希少らしく発見されてもまず運び出すのに貴族の屋敷が立つ程度金が要るらしい。
 俺は諦めて地下から出る。メイドに礼を言いまた考える。取り敢えず今ある素材で何か作れないかとアイテムボックスの中に手を入れる。

魔石(中)×3 魔石(小)×12 エレメンタルヒルの外骨格(赤)×2 外骨格(黄)×1 外骨格(橙)×1 オオムカデの外骨格×3 ニードルラビットの角×5 フレアボアの皮×10 刻印魔法用の紙×3 インク×1 蜈毒牙×2 伸縮する剣×1 涅鉄の剣×1 鉄の片手剣×2 小盾×2 鉄の短剣×1 回復薬×3 解毒薬×3 閃光玉×2 催涙スライムゼリー改×4

 の以上だった。何もできないやないかい。俺はしばらく考える。俺は一度諦めた実験に再度挑戦することにした。
 あれは雅人との決闘の後、俺はある程度鍛冶が出来、錬金壺にも慣れてきた頃のこと、どうしても炎出す剣つまりは魔剣を作りたくてエレメンタルヒルの外骨格を剣に混ぜたり、熱した木炭を加えたこともある。だがすべてがことごとく失敗。炎を出さなかった。

 今回はグレード下げ、熱を発する石を作成することにした。
 まずは『適当』と『調合Ⅱ』と使い、熱を発する石をイメージ。前回同様、燃えた木炭と今回は魔石を入れる。錬金終了。結果はやはり失敗。魔石に熱は籠っていない。俺は一つ実験を行った。火のついた紙を入れて同様に錬金。結果やはり混ざらない。ここで両者を見比べてみる。木炭も紙も火が消えている。
 俺はここであることに思い出す。この錬金壺はそのもの特性を移すことが出来る。それは伸縮する剣(シュリンクソード)と涅鉄(スラメタ)の剣で分かっていることだ。俺は紙と混ぜたものに火をつける。すると発火するはずがない魔石が発火し塵となった。
 漸く炎を出す剣が出来なかったが分かった。あの剣が移した特性は全て炎そのものではなくそれを出す前段階の特性を移していた。
 今回の場合は発火している紙ではなく、紙本来の発火点を魔石に移したことになる。エレメンタルヒルの外骨格が成功しなかったのはそもそも素材として弱かった可能性がある。それは後の課題として残しておく。

 これが分かれば後は計画を進めるだけである。俺はガテンさんのところに行き、作ってほしいものを伝える。と同時に城下町の服屋に行き、フレアボアの皮を渡し大きな布を作ってもらうようの予約をした。それから一週間、ガテンさんの店に向かうと、仕事が早く正方形の机が完成していた。中央には金属で作られた金網そして被せ蓋。
 さっき作った木炭魔石をすでに暖炉としか使われいない炉の中に入れ一分ほど待つ。もちろん魔石は熱々に熱されていた。
 それを机のくぼみに入れ蓋をし、フレアボアの布を被せる。最後に平たい板を乗せれば・・・・日本人の冬の友こたつの完成である。
 まずこのアイデアは古いこたつからである。古いこたつは机の中に炭など入れて温まっていた。だがそれには問題があり、まず炭は燃やす際に一酸化炭素を出す、次に布に燃え移ることがある。だがこのこたつはそれらすべてを解決させる。魔石自体は熱を発するだけで火は出ていない。さらに一酸化炭素を出さない。そしてフレアボアの布は保温性が高く熱を逃がしにくい。

 俺は我慢できず、こたつの中に入る。
 温いーーーーーー。
 それ見てガテンさんも入る。いつもの職人面はどこへやらへにゃへにゃに溶けていた。
 その後俺たちはこたつの中でこのこたつについて話し合った。魔石の価格やフレアボアの布を作る際の費用諸々を話し合う。それは二人とも悪い顔していた。
 その後こたつは飛ぶように売れる売れる。閑古鳥が鳴いていたガテンさんの店は大盛況。城の中でもいたるところでこたつを見るようになった。
 その威力はあのアリアさんを骨抜きにするほどである。
 俺の部屋にももちろんこたつを用意した。毎日のようにこたつに入りごろごろしている。
 こたつと言えばこの世界にはミカンはあるのだろうかなどと考える。
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