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しおりを挟むヨセフさんとの話が終わった後、報酬を受け取って宿に戻った。いつも通り7時に夕食を頼み、ウォルターと風呂に入る。
うーん、ここの生活に慣れちゃったらポルカ村に帰るのが惜しくなるな。後で一泊いくらなのか聞いてみるか。
たとえ一泊金貨10枚と言われても、今の稼ぎなら余裕で払える。何なら家を買ってしまっても良いかもな。そんな事を考える。
ポルカ村に帰ったら狩猟の方もかなり制限しないと肉が値崩れを起こす事は間違いない。そうなるとウォルターがストレスを覚える可能性もあるからね。
そう言う意味でも大きな街での暮らしは良いのかもしれない。
風呂から上がってのんびり寛いでいるとベルが鳴る。いつも通りボーイたちを通して夕食のセッティングをしてもらい、洗濯物を頼み、朝食の時間を伝える。
森に入るようになってからは毎晩エールの小樽を頼んでいる。エールの小樽と火酒を1本と言うのが晩酌のスタイルになった。
食事後に残ったパンとフルーツを収納し、テーブルを片付けてから弾込めをするのも日課だ。
ウォルターと床で寝るのも変わらない。もう少し安い宿なら硬めのベッドになるのかな?モンスターテイマー関連の仕事が終わって、ここの宿を出たら探してみよう。
翌朝もいつも通り5時頃目覚め、歯磨き洗顔用足しを済ませてポーションを作成し、朝食を待つ。
ベルが鳴り、朝食と一緒に届いた洗濯物を受け取る。服、少し買い足そうかな。
いつも通り朝食を終えてどんどん増える在庫に悩みながらジャムとバター、パンとフルーツを収納する。
軽く食休みをしてから装備を整え、いつも通り部屋を出て鍵をかける。
フロントに鍵を預けて冒険者ギルド本部へと向かう。もうすっかりウォルターの姿を見慣れたようで、驚く人もほぼいなくなった。
ギルドで単発依頼を確認する。先日のように時々ハーブや薬草、魔獣の単発依頼が入るのだ。森で入手可能な依頼は極力受けるように心がけていた。
今日は単発依頼が無かったのでそのまま森に入る。ウォルターに今日は昼で終了、昼飯はギルドに納品が終わった後に食べることを伝え、狩りに行かせる。
俺はアイに頼んでARを展開し、採取しながら近くの獲物を狩るいつものスタイルだ。昼までに一角ウサギが3羽、一角ギツネが2頭獲れた。
昼になりウォルターが呼びに来る。集められた獲物はちょうど10頭ずつ。昼までというのを意識して頑張って切りの良い所まで狩ったのだろう。可愛い奴め。
いつも通り収納で地面に穴を掘り、収納した獲物の血抜き、弾抜き、汚れ落としを終わらせて地面を元に戻す。
一通りの仕事を終えたので、ウォルターに跨り街へと戻る。
納品場で納品を済ませ、ギルド本部に着いたのは午後2時といった所だった。ちょうど良い時間だな。
報酬を受け取ってフードコート状の食堂に向かう。人数は少ないが3~4パーティーの冒険者たちが食事していた。依頼を早々と達成して早上がりなのか、明日以降の依頼の話し合いなのか。
ああいうパーティーでの行動ってのも悪くなさそうだな、と思いながらウォルターを席で待たせてカウンターへ向かう。
壁に掛けてあるメニューには、肉定食、魚定食、スープセット、麦粥とあった。ポルカ村を思い出して懐かしくなり、麦粥を頼んだ。
大きな木椀に溢れそうなほど盛られた麦粥は、根菜以外にもブロッコリーなど色々な野菜が入っていて色鮮やかだった。肉も結構な量が入っている。実に美味そうだ。
席に戻りウォルターに何を食べたいか聞くと、鹿の内臓を食べたいというので盥に出してやる。それぞれ水も用意して食べ始める。
俺は猫舌なのでのんびり食べ進める。1/3ほど食べてから一味唐辛子を振りかけて食べる。うん、美味いね。
きれいに食べ終わったら出したものを収納して食器を下げ、バーカウンターの方に行き紅茶を頼んだ。マグカップくらいの大きさのカップでドンと出される。
ふむ、ギルド事務員の紅茶は3種類あると言っていたけど、バーの方は1種類なのね。まあこんな言い方はどうかと思うが、冒険者でそこまで気にする奴もいないか(笑)。
席に戻り、フーフーと冷ましながら紅茶を飲む。普通の紅茶だがなかなか美味しい。淹れ方は良いのね。
紅茶を半分ほど飲んだところでカタリナさんがやってきた。お客さんが到着したのかな?
「タカさん、新たにモンスターテイマーになった冒険者が到着しました。ギルドマスターの部屋にお願いします。」
カタリナさんがそう言う。
「分かりました。一緒に行きます。」
俺はそう返事をして、残っていた紅茶を一息で飲み干してカップを返却し、カタリナさんの後に続いた。
ギルドマスターの部屋に入ると、15~16くらいの女の子がソファーに座っていた。金髪に近い明るい茶髪を高い位置でツインテールにしている。背筋をピンと伸ばして座っている。緊張しているのだろう。
おおう、後ろ姿が『あんた馬鹿ぁ⁉︎』が口癖のツンデレキャラにそっくりじゃないか。きっと顔も可愛いんだろうな。
「タカ、よく来てくれた。こちらが新たにモンスターテイマーになったエレナだ。
エレナ、あちらが君の先輩にあたるモンスターテイマーのタカだ。」
エレナと呼ばれた女の子は俺の方を振り返る。顔立ちもあのキャラとソックリだ。やばい、めちゃくちゃ好みだわ。
エレナは俺とウォルターを見て慌てて立ち上がった。スタイルが良い。お胸とお尻は例のキャラよりはるかに大きい。それこそボンキュッボンだ。
「あ、あの、私、エレナって言います。もともとテイマー目指してたんですけど、怪我をした一角ウサギの赤ちゃんを見つけちゃって、殺すのも可哀想で手当てしてあげたら懐かれちゃって、そしたら知らない職業になっちゃって、だからその、よろしくお願いします!」
そう言って手を前で組んでお辞儀する。両腕で挟まれたお胸はさらに盛り上がり、たゆんたゆんと波打っている。
おまけにお辞儀した拍子にシャツがたるんで谷間がバッチリと見えてしまった。
やべ、鼻血出そう。
「はじめまして。私はタカと言います。こちらは家族で相棒のウォルターです。
私たちの場合は生まれた時からウォルターと一緒に育っていて、貴女とは環境が違うのですが、お互い分からないことを補えあえればと思っています。どうぞよろしくお願いします。」
早鐘のように鳴る胸を押さえて礼儀正しくそう言って一礼する。顔が熱い。
頭を上げるとエレナが頬を紅く染めてじっと俺を見つめている。まるで王子様を見るような表情だ。両手を組んで夢見る乙女の表情になってる。
やめてくれ。そんな目で見ないでくれ。中身はアラフィフの汚いオッサンなんだ。今だって君のピーをピーしてピーしてやろうと妄想したりしてるんだ。俺をそんな目で見るな!
「ほう。タカにもそんな可愛い所があるんだな。いくら大人びて見えても、やはり年頃の男の子って事か。」
ギルドマスターはそんな事を言いながらニヤニヤしている。カタリナさんまで慈しむような笑顔で俺を見ている。大人のクセに子供をからかうんじゃねえ!
「ギルドマスター、それ以上私をからかうのであれば、これ以上の協力を拒否しますよ?純情な男子をからかうのはやめてください。
カタリナさんも、面白がって笑ってないで止めてくださいね?傷つきますよ?」
そう声をかけるものの、2人ともどこ吹く風だ。
「だって、せっかくタカ少年の可愛らしい一面を観れたのですもの。便乗しない手は無いじゃない?」
カタリナさんがコロコロと笑う。ちくしょう。覚えとけよ。
「お前さんにそんな少年らしい面があるとは思ってもみなかったんでな。まあ許せ。お前の知られざる一面を観られて、こちらとしても驚いてるんだ。」
勘弁してくれー!
応援ありがとうございます!
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