上 下
62 / 90

062

しおりを挟む

ぐっすりと寝て目が覚めた。朝の5時過ぎくらいだろう。風呂場へ行き歯を磨いて顔を洗う。

ウォルターも起きたので2人で水を飲み、ウォルターに風呂場で大小の用を足させ、トイレで処理するついでに自分も用を足してスッキリとしておく。

今日も元気にポーションを作成して収納する。

6時になり朝食と洗濯物が運ばれてきた。洗濯物を収納し、セッティングが終わった朝食を食べる。

ウォルターは残念ながら今日も肉だけだった。ヴァレンティナに着いたら収納してある内臓を食べさせてやろう。

俺の朝食はジニアルで泊まった時とほぼ変わらない。酢漬けの魚に付け合わせの細かく刻んだ野菜類、何種類ものジャム、蜂蜜、バター、生野菜のサラダ、沢山のフルーツ、ヨーグルト、そして山盛りのパンだ。

生野菜のサラダにネットショップで購入したドレッシングをかけてモリモリ食べる。うん、美味い。たまに食べ慣れた味の物を食べると何だかホッとする。

サラダを食べ終えたので、空いたボウルに魚の酢漬けを入れて軽く崩し、付け合わせの刻んだ野菜を入れてドレッシングをかけてよく混ぜ合わせて、パンに乗せて食べる。これも美味い。日本の調味料恐るべしだね(笑)。

ヨーグルトはハチミツを加えて食べ、ジャムとバターはタッパに入れて収納、余ったパンとフルーツも収納する。

ドレッシングを使ったボウルは風呂場で濯いでおく。香りで興味を持たれて味見されたりしたら騒ぎになりそうだからね。

新しく購入した防具を含めて装備を整える。まだ8時までは大分あるが、早めに動いて間違いはないだろう。鍵を持って部屋を出る。

フロントに鍵を渡し、冒険者ギルドから預かった書類にサインを貰う。金額が書かれていないが事前に打ち合わせ済みなのだろうと気にしないことにする(笑)。大きな買い物もしたしね。

外に出てウォルターの背に乗り、冒険者ギルドへ向かう。




ギルドに着くとまだ7時半にもなっていなかった。フードコートはすでにやっていたので紅茶を頼む。2銅貨にしてはまあまあの味と香りだ。やはり流通量の違いか。ユックリと温かいお茶を楽しむ。


優雅にモーニングティーを楽しんだので、少し早いが新規登録・相談窓口へ向かう。 

シエナさんに宿泊に使用した書類を渡す。サインを確認している最中にギルドマスターがやって来た。

「おはようございますギルドマスター。ちょっと早めに伺いました。」

朝の挨拶をして礼をする。

「おはようタカ、早いな。感心だ。常に時間に余裕を持って行動するのは良い冒険者の嗜みだからな。これからもその気持ちを忘れるな。では街道へ案内しよう。」

ギルマスはそう言うと先に立って歩き出した。

表に出ると馬が用意されていた。ギルマスがひらりと飛び乗る。

「さあ、着いてきてくれ。」

そう言うと速足で歩かせ始めた。俺もウォルターの背に乗り後を追う。

大通りを20分ほど進むと門が見えてきた。こちらが街道側の門か。

門の手前には大きな石造りの建物があった。よく見ると冒険者ギルドの解体場だった。ポルカの解体場の5倍くらいの大きさで、カウンターも幾つも設けられていた。

獲物や採取物を長時間運ばなくても良いように、門の近くに作られたのだろう。換金は小切手でするんだから、わざわざ街の真ん中まで運ぶ必要はないよね。さすが都会は違う。

門の衛兵に冒険者タグを見せて外に出る。畑の間を真っ直ぐに街道が走っていた。

「この街道をひたすら進むだけだ。20km毎に休憩場所が、80km毎に宿場町がある。

宿場町に着いたら必ず衛兵にタグを渡して、写しを取らせて時間を記録させてくれ。

どれくらいでヴァレンティナに着くのか楽しみにしてるよ。まずは出発の記録を取るのでタグを頼む。」

ギルマスの言葉に従い待機していた衛兵にタグを渡し、写しを取ってもらう。

「さあ、出発してくれ。気をつけてな。ヴァレンティナで用事が済んだら帰りにまた顔をだしな。じゃあな。」

ギルマスがそう言って手を振った。

「お世話になりました。行ってきます。」

そう言って頭を下げ、肉体強化10倍をかけてウォルターにしがみつく。

ウォルターに走り出すよう念話を飛ばすと、強烈なスタートダッシュを決めたのだった。



最初の宿場町に着いたのは40分後だった。

思ったより街道上に馬車や人が多かったので、街道を少し外れて畑と森の境目を走り、宿場町が見えてからギリギリまで近づいて街道に戻ったのだ。おかげで随分とスピードを出せた。

詰所に向かい、衛兵に声をかける。

「おはようございます。高い所から失礼します。冒険者ギルドから連絡が来ていると思いますが、私がヴァレンティナに向かっている冒険者のタカです。こちらは相棒の狼ウォルターです。

私の冒険者タグの写しを取って、今の時間を記録してください。」

そう声をかけると若い衛兵が手を伸ばしてきたので、冒険者タグを渡す。衛兵は写しを取り、時間を記録すると戻ってきてタグを返してくれた。

「いくら狼の背に乗ってるからって、夜っぴいて移動するのは危険だぞ。夜は獣や魔獣が出るからな。次の街ではちゃんと泊まるんだぞ。」

ああ、この時間にこの町に着くなんて、夜間移動しないと無理なのか。心配してくれる気持ちは素直に受け取ろう。

「分かりました。なるべく早く到着して、ユックリ休みます。それでは。」

そう返事をして頭を下げ、ウォルターを走らせる。もちろん衛兵も宿場町もあっという間に見えなくなった。





同じ要領で残る2つの宿場町もクリアし、ヴァレンティナの門に辿り着いたのは約3時間後だった。最後の道程は渓谷の上を通ったので、少し時間がかかったのだ。

ヴァレンティナの石門はカールズよりもさらに大きく、門の手前には跳ね橋と水を湛えた堀もあった。さすが王都だ。

跳ね橋を渡り冒険者用と表示された門へ向かう。時間が早いからか空いていた。俺はウォルターから降りて衛兵にタグを渡しながら話しかける。

「お勤めご苦労様です。冒険者ギルドから連絡が来ていると思いますが、私がカールズから来た冒険者のタカです。こちらは相棒の狼ウォルターです。

私の冒険者タグの写しを取って、今の時間を記録してください。」

そう言うと衛兵は驚いた顔をした。

「確かに連絡は来ているが、今日の朝カールズを出発すると聞いているぞ。一体どうやってこの時間に、い、いや、まずは記録だな、すまない、少し待ってくれ。」

慌てて詰所に入るとタグの写しを取り時間を記録する。タグを持ってきて、俺に渡しながら尋ねてくる。

「ギルドからの連絡が正しいのなら、お前は今朝カールズを出たのだろう?一体どうやったらこんな時間に、いや、そもそもどうやったらカールズを出発したその日にこのヴァレンティナまで辿り着けるのだ?俺は悪い夢でも見ているのか?」

衛兵がしきりに首を傾げている。

「早馬と一緒です。ただ、このウォルターは一度も休まずに駆け続けられるだけですよ。入都の手続きもお願いできますか?」

そう声をかけると、自分の仕事を思い出したのだろう。俺たちを窓口に案内する。いつもの水晶玉に手を乗せ、いつもの質問にいつもの答えを返して、入都が認められた。

王都よ、私は帰ってきた!



嘘です初めてです言ってみたかったんですごめんなさい(笑)。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

Lunatic tears(ルナティックティアーズ)

AYA
ミステリー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:5

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,441pt お気に入り:4,823

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:38,064pt お気に入り:12,315

異世界に転移したら、女魔族の将軍と旅をすることになった件。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:296

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:41,080pt お気に入り:29,990

異世界転生~チート魔法でスローライフ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:312pt お気に入り:1,840

銃弾と攻撃魔法・無頼の少女

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:71

処理中です...