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「分かりました。では訓練場に廃棄処分しても構わない板金鎧を2着用意してください。それを的にします。」

銃の破壊力を目の当たりにしてもらうには、板金鎧をぶち抜くのが一番わかりやすいだろう。ウォルターの魔法は板金鎧には通用するかな?

「すぐに用意します。では訓練場の方へお願いします。」

ギルマスの案内で一旦フロアに出て、廊下を通って訓練場へ向かう。

室内に入り、ギルマスがスイッチのようなものに触れると、部屋の中が明るくなった。灯りの魔道具が発動したようだ。

床も壁も天井までも石で埋められ、5mほどの高さに採光兼換気用の窓がある。

「ここは魔法用の訓練場です。万が一魔法が制御できなくなったとしても、周囲に被害を出さないように石で囲んであります。」

なるほど。さすがだね。でも音は響くだろうな。わざとサプレッサー無しで撃ってやろう(笑)。

男性職員が古ぼけた板金鎧をガチャガチャと持ってきた。20mほど先にある標的設置用の台に固定する。まずはウォルターから行こうか。
     
「ウォルター、右の標的に雷、風、土、それぞれ一つずつ魔法を撃ち込んでやって。」

ウォルターに告げる。

「畏まりました主。もうやってよろしいのですか?」

「うん、良いよ。あれ、壊しちゃって構わないからね。」

「畏まりました主。では参ります。」

ウォルターはまずは土魔法で地面から鋭く尖った棘を生やして鎧を貫いた。

その棘を消したと思うと風魔法でカマイタチを作り出して飛ばし、鎧を真っ二つに切り裂いた。

最後の仕上げに雷を身に纏い、稲妻を迸らせた。稲妻を食らった板金鎧は真っ赤に焼けた。

全て無詠唱だ。ウォルター、お前、めっちゃ強いじゃん。

「主、いかがでしたか?私の魔法はお気に召しましたか?」

ウォルターが褒めて褒めて、と言わんばかりにウォフウォフと鳴きながら擦り寄ってくる。愛い奴ぢゃ(笑)。

「もちろんだよウォルター。大満足さ。これからもこの魔法で俺の事を助けてくれな。よろしく頼むよ。」

そう念話で話しかけながらワシャワシャと撫で回す。

ギルマスとロミーさんは、ウォルターの魔法があまりにも強力すぎて固まっていた。茫然自失ってヤツだね。
   
「ん、んんっ!」

咳払いしてやるとようやく動き出した。

「従魔とはこれほど強力な魔法を扱えるのですか・・・・。」

ギルマス、言葉が少なくなってる(笑)。

「高位魔法使いでもないとこれ程の威力は出せませんよ。ウォルターさんだけで一軍に匹敵するかもしれません。」

ロミーさんの方が冷静に分析してるじゃん(笑)。ギルマス、しっかりしてね。

「では次に私の魔道具です。2つお見せします。」

そう言ってまずはM45を抜く。サプレッサーを取り外してポケットに入れ、スライドを引く。ジャキンッ!

「ウォルター、耳伏せといてね。ワザと音を出すから。」

そう言うとウォルターはペタリと耳を伏せる。

「まずは3発撃ち込みます。見ていてください。」

そう言って下腹部の辺りを狙って撃ち込む。

バンカインッ!バンカインッ!バンカインッ!

ギルマスとロミーさんは1発目で音に驚いて飛び上がり、慌てて耳を塞いでいた。

「一度鎧を確認してください。」

そう声をかけると恐る恐る鎧に近づき、小さい丸い穴が3cm程に纏まって3つ空いているのを確認して、後ろに回って背中側を見て見青ざめた。

貫通しているのだろう。銃の怖さをまざまざと思い知ったのだ。

その間にサプレッサーを装着しなおし、2人に声をかける。

「一旦こちらに戻ってください。次は音を抑える魔道具を使います。違いを確認してください。」

2人は慌てて戻ってきた。ビクビクしながら俺の後ろに回る。

「今度は耳を塞がなくても大丈夫です。安心してください。少し上を狙って3発撃ち込みます。」

そう声をかけ、また3発撃ち込む。

ガシュカインッ!ガシュカインッ!ガシュカインッ!

あまりの音の違いに驚いたのだろう、口があんぐりと開いている。ロミーさん、美人が台無しです。

手で鎧を指し示すと急いで向かって行き、鎧の前後を確認してまた青ざめる。

さっき応接室で威圧を飛ばされ時に、俺がM45のグリップに手をかけていたのを思い出したのかもしれない。好奇心は猫をも殺す、ってね。思い知れ。

スライドを引いて弾を抜き、マガジンを交換してホルスターに戻す。

抜いた弾と空になったマガジンを収納し、レミントンM870MCSロングを取り出してサプレッサーを外す。外したサプレッサーはポッケにイン、だ。

「カワシャチを撃退した魔道具を試します。戻ってください。」

慌てて戻って来る。ん?なんか小さく震えてない?

「これは大きな音が出ます。本当は音の違いを確認していただきたいのですが、この訓練場だと音が響いて耳をやられるかもしれませんので、不本意ですが耳を塞いでおいてください。」

そう言ってレミントンM870MCSのフォアエンドを引いて戻す。ジャキンッ!うんうん、ポンプアクションの醍醐味よね(笑)。鎧の左胸に狙いを合わせる。

ドゴガインガコッ!オオオオオン!

一編に色々な音がした。しかも谺も響いて最悪だ。耳痛ぇ。銃の射撃音、鎧をぶち抜いた音、そして後ろの石壁に当たった音か。

「鎧を確認してください。後ろの石壁もお願いします。」

俺が促すと、2人は鎧へ向かった。鎧に空いた大きな穴に愕然とし、後ろの石壁を見て震え上がった。ロミーさんはギルマスにしがみついている。

そんな様子を確認しながらサプレッサーを装着する。

「こちらも音を抑える魔道具を装着しました。試しますので戻ってください。」

そう言うとギルマスがロミーさんを抱きかかえて戻ってきた。あ、ロミーさん涙目になってる。可愛い(笑)。

「では撃ちます。耳は塞がなくて大丈夫です。」

そう声をかけてフォアエンドをスライドして薬莢を排出し、次弾を込める。右胸を狙う。

ドムガインガコッ!ィィィィン

2人の方を振り返るとロミーさんは女の子座りでペタリと座り込み、両手で口元を覆ってポロポロと涙を零しながらフルフルしている。やべ、抱きしめたいくらい可愛い(笑)。

仕方なくギルマスが1人で鎧の確認に行く。鎧と石壁を確認して真っ青な顔で戻ってくる。その間に薬莢を排出し、次弾を抜いて込め直し、スラッグを2発取り出して装填して、安全装置をかけ収納する。

「私の魔道具はいかがでしたか?お気に召しましたか?」
  
わざとそう声をかけてやる。お前らに向けることも出来たんだぞ、と言外にチラつかせておく。ロミーさんは両手で顔を覆ってイヤイヤしながら泣いている。

よっぽど怖かったんだねぇ。可哀想に。誰だ女の子をイヂめたのは(笑)。

「申し訳ありませんでした。」

ギルマスが真っ青な顔のまま深々と頭を下げた。自分がいつ殺されてもおかしくなかった事が分かったのだろう。震えてるよ。可愛いねぇ(笑)。

「頭を上げてください。危害を加えられなければ、人に向けるつもりはありません。まあ、危害を加えられる一歩手前でしたがね。」
         
ワザとそう言ってやる。ギルマスはビクッと大きく震えた。

「その件に関しましては心よりお詫びいたします。どうかお許しください。」

頭を下げ続けている。俺は近づいて肩を叩いてやる。ビクゥッ!と大きく身体を震わせる。

「頭を上げてください。もう済んだことです。これで私たちの実力は確認できたでしょう。今度こそ宿へ案内してください。」

そう声をかけるとようやく顔を上げた。顔色はまだ戻らない。

「フロアへ戻ります。ロミーさんをお願いしますね。ウォルター、行こう。」

ウォルターを引き連れて訓練場を出る。扉を閉める寸前に、ロミーさんの可愛い泣き声が聞こえた。

ウォルターとフロアへ戻り、カウンターへ向かう。先ほど見た顔がカウンターについていた。

「テレサさん、でしたっけ?先ほどディラン船長と一緒に来たタカと申します。こちらで宿を手配してくれている、と聞いているのですが、ご存じないですか?」

テレサさんに聞いてみる。

「タカ様ですね。恐れ入りますが冒険者タグを拝見できますでしょうか?」

タグを襟元から引きずり出してみせる。

「ありがとうございました。ただいま確認してまいります。少々お待ちください。」

経理担当課長みたいな年嵩の男性のところに行き、言葉を交わすと戻ってきた。

「お待たせいたしました。間違いなく承っております。只今職員がご案内いたします。」

そう言うといかにも新人っぽい感じの女性職員が書類を持って事務室から出てきた。お胸はしっかりとヴェテラン級だ(笑)。

「私がご案内いたします。どうぞこちらへ。」

そう言うと先頭に立って歩き出した。はあ、良いケツだなぁ(笑)。

俺はウォルターの背に手をかけながらついていく。道行く人たちは皆驚いた顔で俺たちを見ている。

犬や狼を連れたテイマーらしい人もいたが、連れている犬や狼は揃ってその場でひっくり返って腹を出し、絶対服従のポーズを見せていた。

10分ほどで立派な宿に辿り着いた。日本の高級旅館に匹敵する豪華さだ。こんな所、前世でも泊まったことねえぞ。

案内役の新人さんはズンズンと中へ入っていく。仕方なく後をついて行く。立派なフロントだ。

「冒険者ギルドのアニカと申します。ギルド管轄で一泊お願いしてあるはずです。こちらのお客様をご案内してください。」

フロントマンに書類を渡して告げる。支払い依頼書みたいなもんだろう。

「承っております。お客様のお名前はタカ様で間違いございませんか?」

フロントマンが確認してきたので冒険者タグを襟元から引きずり出してカウンターに乗せて見せる。

「ありがとうございます。それではご案内させていただきます。」

そう言うとベルを鳴らした。ボーイを呼んだのだろう。

「タカさん、私はこれで失礼します。どうぞゆっくりとお休みください。失礼します。」

アニカがぺこりと頭を下げた。お胸がたゆん、と揺れた。ヤヴァい、そろそろ限界かも(笑)。アニカは小走りで帰っていった。誘っても仕事中だからと断られただろうな。残念。

「お食事は直ぐにご用意してよろしいでしょうか?」

フロントマンに尋ねられる。

「はい、お願いします。ウォルター、ああ、この狼の食事もお願いしたいのですが、骨つきの生肉は用意できますか?」

フロントマンに尋ねる。

「もちろんでございます。イノシシを丸で一頭ご用意してあります。お食事と一緒にお届けいたします。」

フロントマンは笑顔で返答した。さすが高級宿だ。手配が行き届いている。

「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

そう言って頭を下げた所でドアマンがやってきた。

「お客様、お部屋へご案内します。お荷物はどちらでしょうか?」

さすが教育が行き届いているな。

「荷物は全て収納の中です。このまま移動できますのでよろしくお願いします。」

「畏まりました。それではご案内させていただきます。こちらへどうぞ。」

そう言うと一礼して歩き出す。俺はウォルターと共に後をついて行った。

階段を登り5階まで上がる。ワンフロアに3部屋しか無いようだ。スイートルームなのだろう。

ドアマンが鍵を開け、中へと案内してくれる。

扉を潜ると待合室のような広い部屋があり、その部屋を通り抜けて次の扉を開くと、豪華な部屋が広がっていた。

待合室を抜けて入るとすぐリビングになっていて、豪華なテーブルとイスが用意されている。設えられた棚には酒瓶とグラスが並んでいる。

「お部屋のご案内をさせていただいてよろしいでしょうか?」

ドアマンが声をかけてきたのでお願いする。

部屋はリビング、寝室、セカンドルーム、トイレ、風呂となっているそうだ。セカンドルームは待合室とリビングの両方と繋がっているらしい。御付きの騎士や従者が控える部屋なのだろう。

俺、1人だからこんな広い部屋要らないのに(笑)。なんならセカンドルームで充分だわ(笑)。

風呂には魔石が組み込んであり、お湯と水が自由に使えるようになっていて、使い方を教わった。驚いたことにシャワーまであった。

トイレも水洗だったが、さすがにウォシュレットは付いていなかった(笑)。

リビングの棚にある酒は自由に飲んで良いそうだ。全部飲み干してやったら驚くだろうな(笑)。いや、収納を利用して持ち出したと思われたら嫌だな。セーブしておこう。

そこまで説明を受けた所でベルが鳴った。訪問者が鳴らすものらしい。ドアマンが出てくれて、食事が運び込まれた。テーブルに並べられていく。

メインはステーキと魚のムニエルの2種類あるようだ。スライスしたジャガイモにチーズを乗せて焼いたものもある。

パンはカゴに山盛りになっており、レタスとキュウリ、トマトを使ったサラダもある。スープは細かく賽の目切りにした色とりどりの野菜が入っている。

この世界でこんなサービスを受けられるとは。驚きでいっぱいだった。

ウォルターの生肉は宴会用であろう大皿に乗せて運んで来てくれた。大きなボウルに水を満たしたものも2つ用意されている。至れり尽くせりだな。

「タカ様、お一人ではご不便でしょう。メイドをお付けしましょうか?」

ドアマンが申し出てくれた。いや、よかんべ。知らん人に世話されるのもあずましくないし(笑)。
        
「食事の準備さえしていただければ、後はお風呂をいただいて寝るだけですので結構です。ありがとうございます。」

丁寧にお断りする。

「畏まりました。ご用がございましたらそちらの紐を引いてお呼びください。鍵はこちらにございます。

内側から鍵をかけるのもこちらをお使いいただきますのでご注意ください。それでは失礼します。」

ドアマンが一礼して出て行った。俺は棚を見て火酒っぽい瓶とグラスを取り出した。

カットこそ入っていないが、ガラス製の綺麗なグラスだ。酒瓶とグラスを持ってテーブルに着く。

「ウォルター、ご馳走になろう。いただきます。」

ウォルターと一緒に食べ始める。料理はどれも美味かった。香辛料はあまり効いていなかったので、収納からペッパーミルを取り出してパパッとかけて食べる。うう、美味い。

特に生野菜のサラダは、塩と酢が用意されていたので自分で味を調整しながら食べられるのだ。目分量で塩と酢と胡椒をかけ、ざっと和える。

久しぶりの生野菜は涙が出るほど美味かった。

火酒もポルカ村で飲んだ物より澄んだ味で実に美味かった。

酒を飲みながら食べているとオカズだけで腹がいっぱいになったので、パンは全て収納に入れた。食べ終えた食器はワゴンに乗せて廊下に出しておく。

ウォルターも腹一杯になったようで、水で顔を綺麗にして毛繕いをしている。うん、満足満足。

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