EDC(Every Day Carry:常時携帯)マニアの元ガンオタが異世界に飛ばされたら

タカ61(ローンレンジャー)

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竃の中の薪は炎が落ち着き熾火になった。

丁度良い火加減になったので、串に刺したニジマスを収納から取り出して、地面に刺した二股の枝にかける。

見る見るうちに脂が浮いてきてジュウジュウと音を立て始める。浮いた脂が竃に滴り落ちるとパッと小さな炎が上がり、香ばしい香りが漂う。

腹がぐう、と音を立てた。ふと空を見上げると真っ赤に染まっていた。もうじき陽が暮れる。晩飯に丁度良い頃合いだな。

串を回しながら満遍なく火を通していく。皮に程良い焦げ目がつき、裂いた腹から見える身もしっかりと色づいている。頃合いだろう。

カップのワインを飲み干して新たに注ぐ。串の両端を両手で持ち、火から下ろすとそのままかぶりついた。

パリっという音とともに皮が破れ、齧りとった身が口の中でホロリとほぐれ、噛みしめるとジュワリと肉汁が溢れ出す。

美味い。塩だけのシンプルな味付けだが塩加減が良かったのか、我ながら実に良く美味さが引き出されている。

夢中で何度もかぶりつき、息継ぎをするようにワインを飲む。30分ほどで食べ尽くし、頭と尻尾を残すだけとなった。

満腹になった腹をさすっていると、生き物の気配がした。

レミントンM870MCSブリーチャーを持ち気配を探ると、藪の中をこちらへ向かってくるようだ。

だが敵意はなさそうだ。

ガサガサと草を揺らしながら一匹の大きな狼が現れた。

体長2mを超えるだろうか、頭にはユニコーンのように大きな一本角がある。

大きな身体の何箇所かに傷があるようで体毛が赤く染まっている。

怪我をして弱っているせいなのか、こちらを威嚇しようともせずに寄ってくる。

パネルが浮かび上がって情報が表示される。

「一角狼。単体ならCクラス、群れるとAクラスの討伐対象となる低級魔獣。元は森林狼だが、魔素を取り込んで魔獣になった。攻撃的な性格をしているが頭が良く、家族や群れの仲間を大事にする。」

襲いかかって来ればブリーチャーで返り討ちにするところなのだが、あまりにも痛々しいその姿に撃つ気が起きなかった。とりあえず話しかけてみる。

「おい、傷を洗ってやるから一緒に川に行こう。悪いようにはしないから。」

狼に向かってそう言うと、俺は先に立って川に向かって歩き出す。

狼はまるで言葉が分かるかのように大人しく付いてくる。

月明かりで足元が見えるので、靴を濡らさないように気をつけながら石の上を歩き、大きめの石に腰掛けて狼に声をかける。

「来いよ。傷を洗って状態を見てやるから。」

声をかけると、狼はひょいひょいと石の上を飛び跳ねながら近づいてきた。

俺の目の前に立つと、じっと俺の目を見つめる。俺は収納から大きなカップを取り出して狼に話しかける。

「これから水をかけて傷を洗う。痛むし染みるだろうが我慢してくれ。」

そう言うとカップに水を汲み、傷にかけて洗い流す。狼は鳴き声一つあげずにじっとしていた。

熊の爪にでもやられたのか、10cmほどの長さで4本並んだ創傷が二箇所にあった。深い傷は1cmを超えるようだが、致命傷には至らなかったようだ。ただ、出血が止まっていない。

綺麗に洗い流し、異世界EDCギアフォルダーから圧縮タオル(小)を、日用品フォルダーからワインの水筒を取り出して、空になったコップにワインを注ぎ、圧縮タオルを入れてワインを染み込ませてから軽く絞って傷口を拭き、傷を消毒してやる。

さらに異世界EDCギアフォルダーにある自作救急キットを取り出し、ドルマイシン軟膏を手にする。

「今から傷口に薬を塗る。痛むかもしれんが我慢してくれ。これが終わったら食い物をやるからな。」

声をかけて傷に軟膏を塗っていく。指を動かすたびにビクリと体を震わし、

「ヒャウン」

と弱々しい声をあげるが逃げようとはしない。

化膿止めの軟膏だが傷に塗り付ければ蓋をするような感じになり出血も抑えられる。

全ての傷に薬を塗り終えるとあらためて声をかけてやる。

「良く頑張ったな。さっきの所に戻ろう。飯を食わせてやるぞ。」

「ウォン」

と返事をされた。ふふっ、めんこいなこいつ。

出した道具を収納し、竃に戻ってニジマスの頭と尻尾を狼に与えると、バリバリと音を立てながら食らいついた。

これだけじゃ足りないだろうな、と思った俺は、日用品フォルダーから食料品袋に入った食べかけの干し肉の塊と大きなカップ、水筒を取り出す。

SPYDERCO POLICEの刃を突き刺して、肉の繊維に沿って3枚ほど分厚く切り出し、大きなカップに入れて水を注ぎ熾火に乗せる。

沸騰してもしばらくそのままにして塩抜きする。一度お湯を捨て再度水を注いで水の中で肉を揉み、しっかりと塩抜きする。

取り出した肉を指で摘んでぶら下げながら見せると、狼は自ら寄ってきて肉を咥えた。指を離すとガフガフと咀嚼する。

ある程度咀嚼して飲み込んだので、次の肉を見せると頭を上げパクリと咥える。ガフガフと咀嚼して飲み込むと俺の顔をじっと見つめる。

「これで最後だぞー。」

と話しかけながら肉を摘むと嬉しそうに頭を上げパクリと肉を咥える。ガフガフと咀嚼して飲み込むと、川に行き水を飲み始めた。

一頻り水を飲むと俺の隣に来て体を擦り付けながら、大きな岩の下に隠れるように丸くなった。

頭を撫でてやると「クーン、クーン」と甘えた声を出す。一晩限りとはいえ、可愛い相棒ができた。

俺は使用した全ての持ち物を収納し、ブリーチャーを胸元に吊るして岩に背を預け狼に寄りかかるようにして、狼の体温を感じながら目を閉じる。

川のせせらぎの音と心地良い暖かさにあっという間に眠りに落ちる。

「富丘さん、その狼を助けてくれてありがとう。貴方の心優しき行動に報いて、特別な祝福を授けましょう。貴方の旅路に幸いあれ。」

夢の中で、ルーテミス様が微笑んでいた。 
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