君のとなりにいる僕

結紀

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第二十話

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 びゅーっと一陣の風が吹く。

 雲ひとつ無い青空を桃色の花びらがひらひらと舞染めていく。

 「見てください貴一さん!桜吹雪っすよー」

 桜の木の下で僕と貴一さんは缶ビール片手に花見に興じていた。

 「おおー、綺麗だなー」

 僕の隣で貴一さんは嬉しそうに桜の木を見上げる。

 「くっはー!っぱ花見にはビールっすよね」

 ゴクゴクと喉を鳴らしながら缶ビールを飲み進める。
 昼間から飲むビールはうめー。

 「つまみも美味いな」

 僕の作った花見弁当はどうやら貴一さんに好評のようだ。
 よっしゃ。

 「お、ビール切れた」

 結構持ってきたと思ったけど二人だとあっという間に飲み干してしまった。

 「僕買ってきますよ」

 「大丈夫か?すまんな」

 よっこいせと立ち上がり、ほろ酔い状態のふわふわとした気分で足取り軽くコンビニへと向かう。

 コンビニの入口に見覚えのある長身の男性を見た。
 それは。

 一瞬息が止まった。

 見覚えのあるその人はこちらを見やると穏やかに微笑みかけた。

 そして、何かを呟いた後満足そうな顔をして去っていった。

 『良かった』

 そう聞こえた気がする。

 「どうした?みつるん」

 後ろから声を掛けられはっとする。
 
 どうやら貴一さんが追いかけてきてくれたようだ。

 「俺も一緒に買いに行こうと思ってな」

 どちらからともなく手を繋ぐ。

 「花見の後ラーメン食いに行きません?それから…」

 

 満開の桜は桃色の花弁を纏い舞い上げる。
 やがて雪は溶けて春が来る。

 君と居るから暖かいんだ。

 叶わないと思ってた。
 諦めようとした。
 自分を想ってくれた人のことも傷つけた。

 それでも、諦めたくなかったんだ。

 

 この先もずっと、ずっと。

 『君のとなりにいるのが僕でありますように』
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