黒い野望と光の方へ

そら

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もうすぐできるからあとはやるよ、という母に任せ、紬は自室へ向かった。

ご飯が炊けるまでのわずかな時間に、少しでも国家試験対策の勉強をしておこうと思った。

廊下のオレンジ灯が六畳ほどの洋室を薄く照らす。部屋の明かりをつけ、勉強机に向かう。

机の上には、教科書、栄養士国家試験過去問題集、一問一答問題集、過去問用のノートと筆記用具などが散見している。

その中の、『作詞』と書かれた表紙のノートを手に取る。

ピンクのA4サイズのノートは、時の流れを感じるほどによれていた。

一ページずつ丁寧にページをめくっていく。

―懐かしいなあ。

紬が中学生のころから書き始めた自作の歌詞ノートは、もうすぐ終わりを迎える。

初々しい思いを綴ったページを過ぎると、今度は感傷的な歌詞が見受けられる。

これは失恋したときのだろうか。過ごしてきた日々を辿り、思いを馳せていた紬はあるページで手を止めた。

―まただ。

先ほどの身体の重みを、再び感じる。

いや、今度は前のものよりも重いかもしれない。

ため息をつきながらノートから顔を上げる。

閉め忘れたカーテンの向こうの窓には、白い街灯が灯り、夜の闇を所々でかき消している。

大きなビルもマンションもないその景色に、紬は今の自分を重ねた。

―わたしには何もない。

虚しさを覚え、ゆっくりと瞳を閉じる。

手元のノートの『知らねえよ』という文字が、静かに紬を見つめていた。
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