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  「ちょ、ちょ、ちょっと待てって」

何故こんなことになっているんだ。俺は鷹木にプリントを渡したかっただけなのに。突如として現れた鷹木は、先輩を引き剥がすと、俺の手を掴んで強く引いた。俺はされるがままだ。

「鷹木じゃーん。もう体調は良くなったの?」
「お陰様で。吉岡、入って」
「え、でもいいのか…?」

チラリと先輩を見ると、変わらず飄々と笑っている。この状況を楽しんでいるようにすら見えた。対する鷹木は、片手間でドアの鍵を開けている。

「入って」
「でも…先輩が…」
「いいから」

ピシャリと言い切られて、驚く。鷹木のこんな切羽詰まった声を聞くのは初めてだ。その声のトーンに、言いなりになるしかない。俺は先輩の方をチラチラ気にしながら、開いたドアの隙間に体を滑らせる。直ぐに、その後に鷹木が続いた。ドアが閉まる前に見えた先輩は、やはり楽しそうに笑っていた。



××××××


「いった、なん、何なんだよっ?」

強引に手を引かれて踏み入れた室内の広さに、俺は愕然とした。俺の部屋の3倍はある。悠々と手足を伸ばして寝れるサイズのベッドと、豪奢で高級感溢れる家具。おまけに、テレビまである。同じ生徒なのに、こうも違うのかと驚かずにいられない。

その広く大きなベッドに、投げ捨てるように手を離された。大柄な体格通り、あまりに力が強い。

「どうしてここに…?」

目の前には鷹木の白い顔。押し倒されている。気がついたときには、もう鷹木の腕の中から抜け出せなくなっていた。

「………先生に頼まれて……プリント…渡したら帰るから…」
「帰らないでくれ」
「へ?」
「しばらく、ここにいてくれないか…?」

切実な声だった。顔色も悪くて、隈もある。キチンと眠れているのだろうか。朝飯も食べているのだろうか。心做しか、痩せたように見える。
 その時、初めて、自分の性根の悪さを恥じた。突然遠い人になってしまった鷹木に嫉妬して、現状を恨んで、俺の中から鷹木をシャットアウトしようとした。鷹木は、こんなにボロボロになりながらも、やるべきことをこなしているのに。俺の捻じ曲がった性格が恥ずかしかった。

「……大丈夫か?」

頬に手を添えて尋ねる。青白い肌は、少し乾燥していた。

「吉岡…頼みがある」
「なんだ…?何でも言ってみろよ」


「抱かせてほしい」


ん?
聞き間違いか?抱かせて?ほしい?この状況で?

「はい?」
「いや…やっぱり一週間オナ禁は辛くてな…飯もロクに食べれない」

鷹木の顔はたちまち赤くなっていく。こいつはいつもそうだ。性的な話をするのが苦手なのだろう。

「いやいやいや生徒会は?入る準備をしてたんじゃないのか?」
「断ることにした。生徒会には入らない」
「え、えええええ!?いいのかよ、お前!?こんなチャンス滅多にないぞ!」

いいんだ、と静かに言い切る鷹木の声は、決意に満ちていた。

「この一週間、生徒会の業務の手伝いをしたり、会議の見学などをさせてもらった。充実した毎日だったが、俺には合わない。だから、生徒会には入らない」
「…………」
「とても忙しかった………疲れたし、寝る暇もなかった。だから………」

入れさせてくれ。

耳元で囁かれて、鳥肌が立った。……こいつ、何言ってるの?脈絡が無さすぎて怖い。固まる俺を無視して、鷹木の手は早速、俺を脱がせにかかっていた。大きな手が俺の体をまさぐる。

「ちょ、やめろって……まっ」
「頼む…気持ちよくするから…」
「そういう問題じゃ……ひっ」

手が股間にさしかかる。狡い。そこは急所だぞ。握られると、力が抜けていく。

「あっ……やめ、」

手際よく履いているものが脱がされていく。パンツの上から触られると、腰が浮いた。

「んっ…………はあっ」

チンコを優しく揉まれると、段々と勃ちあがってくるのが、自分でも分かる。押し問答はどこへやら、室内にはすでに濃密な空気が漂い始めていた。俺の声で興奮したのか、鷹木も手荒にガチャガチャとベルトを外すと、自身の性器を露出させた。すでに勃ちあがったチンポは、何回見ても慣れない大きさだ。以前、インターネットで男同士のやり方を検索したときのことを思い出して、俺は震えた。無理だ。流されそうになったけど、絶対絶対、入らない!

「む、ムリムリ!そんなの入らない!」
「大丈夫だ……ちゃんと用意する」
「な、なんだよそれ…!?ちょ、……ひあっ!?」

鷹木の手には、ピンクの液体が入った小瓶があった。いかにも怪しい液体だ。何なんだよそれ!?

「ちょ、ちょ、大丈夫な液体なんだよな…?」
「これは我々の一族に代々伝わる潤滑油だ。安全面でも何の問題もない」

いやいやいやいや、抵抗も虚しく、ヌメリを纏った手が俺の尻を割開いていく。液体で濡れた指が、俺の尻の穴をつつく。

「いやっ………あっ………あんっ……こわい…」
「大丈夫だ…」
「やっ…………あ、あ、あ、入って……くる」

暫く経ったあと、ゆっくりゆっくり、指が入ってきた。体を開かれる感覚に、体の芯が震える。なし崩しに、指まで入れさせてしまった。息があがる。こわい。こわい。

ナカを確かめるように、指が動いていく。

「はあっ………や、やめ………あ」
「吉岡…かわいい…」
「や……はあっ…………あっ?」

ナカでクネクネと動く指が、どんどん奥へと侵入していく。指がある一点を叩いたとき、俺の喉からは甲高い悲鳴が漏れていた。

「ひあっ!……はあっ、なにっ?あ…」
「怖くないよ……ただ、気持ちよくなれる所だ……」

トントントントン、と気持ちのいいところを、鷹木が叩く度に、俺は鳴いた。脳内が麻痺していく快感だった。

「ああっ……あっ、あっ、あぁあっ」

圧迫感が増したと思ったら、ナカで動く指が2本になっていた。ゆっくりとした指の動きが、俺を身も心も、蕩かしていった。俺はただ、与えられる快感に身を委ねて、はしたなく喘ぐことしかできなかった。
 何分経っただろう。指に翻弄されて、全身から力が抜けていく。頭の奥が、痺れる。息も絶え絶えになった俺の尻に、ピトリとなにか当たるものがあった。

「吉岡…………入れるぞ」
「ハアッ……はあっ…う、うそ……」
「力、抜けっ………………」

うそ。うそうそうそうそ。入ってくる。太くて大きい肉の棹が、ナカを割開いて、進んでくる。ゆっくりとした挿入は、確かに俺に快感を一秒一秒刻みこんでゆく。あまりの圧迫感に、俺はシーツを握りしめて縋るしかない。

「ハア…ハア…………ぁ」
「くっ…………」
「ああっあ、あっ、あああっ」

何の宣言もなく、鷹木は動き始めた。激しい。ベッドが軋む。快感が強すぎる。

パンッパンッパンッ
「吉岡っ……………吉岡っ……」
「ああっ、ああっ」
「くそっ………はあっ……出るっ」

ビュルルルと音がして、腹のナカで何かが弾けた。それはじんわりと、広がっていく。連動して、俺もイッた。派手に白濁をぶちまける。気持ちよさで、頭がおかしくなりそうだった。

「ハア…ッハア」

二人の荒い吐息だけが、室内に落ちる。こんなに、こんなに気持ちいいなんて。俺は放心状態で、天井をぼんやりと見つめた。眠くて、瞼が落ちそうになる。

「寝ていいよ……おやすみ」

優しい声で囁かれて、俺は意識を手放した。
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